レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

Capecitabine+Bevacizumab

Cunningham D, et al.: Lancet Oncol. 14(11): 1077-1085, 2013

Capecitabineは経口のフッ化ピリミジン系薬剤であり、消化管から未変化体のまま吸収され、肝臓内と腫瘍内で初めて5-FUに変換され、治療効果を発揮する。そのため、経口フッ化ピリミジン系薬剤であるS-1と比較して、消化管毒性は軽い。切除不能進行・再発大腸癌における1st-lineとして、Capecitabine単独と5-FU/LV(Mayo regimen)の有効性と安全性が検証され、縮小割合、time to disease progressionならびにOSには有意な差を認めなかった1)。また、Capecitabine単独にBevacizumab(BV)を上乗せする効果を検証した第III相試験が報告され、PFSの上乗せ効果を示した2)。大腸癌診療ガイドラインでは、高齢者や臓器機能障害を有し、強力な治療が適応とならない患者に対して、Capecitabine+BVレジメンが推奨されている。

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◆AVEX試験

70歳以上の切除不能進行・再発大腸癌患者を対象として、1st-lineにおけるCapecitabine単独に対するCapecitabine+BVの有効性と安全性を検証した第III相試験である2)。適格症例280例が、Capecitabine単独群とCapecitabine+BV群に1:1の割合で無作為化割り付けされた。本試験の登録患者のうち、約2/3の患者が75歳以上の高齢者で、約半数がPS 1もしくは2であり、本試験は強力な治療が適応とならない患者に対して行われた試験である。また、他の試験ではCapecitabine単独の投与量は2,500mg/m2であるのに対して、本試験では2,000mg/m2で行われた。

■有効性

主要評価項目であるPFS中央値は、Capecitabine単独群5.1ヵ月、Capecitabine+BV群9.1ヵ月であり、Capecitabine+BV群で有意な延長を認めた(p<0.0001)。年齢別(70〜74、75〜80、80以上)に区切った追加解析においても、Capecitabine+BV群でPFSの延長効果を示した。また、副次評価項目であるOS中央値は、Capecitabine単独群16.8ヵ月、Capecitabine+BV群20.7ヵ月であり、有意差は認めないもののCapecitabine+BV群においてOSが延長する傾向であった。奏効割合においてもCapecitabine単独群10%、Capecitabine+BV群19%であり、Capecitabine+BV群で良好であった(p=0.04)。

  Capecitabine
(n=140)
Capecitabine+BV
(n=140)
HR
(95% CI)
P値
奏効割合 10% 19% 0.04
PFS中央値 5.1ヵ月 9.1ヵ月 0.53
(0.41-0.69)
<0.0001
OS中央値 16.8ヵ月 20.7ヵ月 0.79
(0.57-1.09)
0.18

■安全性

両群で有害事象の発現頻度に有意な差を認めなかったが、CTCAE grade(以下grade)3以上の治療関連有害事象は、Capecitabine単独群で22%、Capecitabine+BV群で40%であり、Capecitabine+BV群に多く認める傾向にあった。特にCapecitabine+BV群で手足症候群の頻度が高いことに注意すべきである(16% vs. 7%)。また、5%以上のgrade 3以上の有害事象として、静脈血栓症(8% vs. 4%)、下痢(7% vs. 6%)を認めた。血管新生阻害薬であるBVに特徴的な高血圧、タンパク尿などに関しては、両群ともに同程度であった。
本試験は、70歳以上の高齢者、特にPS 1-2と全身状態不良な高齢者を対象とした試験であったことから、治療関連死亡がCapecitabine単独群で3%、Capecitabine+BV群で4%の患者に認めたことは注目すべき点である。死亡の理由としては、心筋梗塞などの心疾患や感染症、出血、血栓症であり、Capecitabine+BV群だけでなく、Capecitabine単独でも全身状態に注意していく必要がある。
切除不能進行・再発大腸癌の高齢患者におけるCapecitabine+BVの有効性が確認されたが、安全性には十分注意し、全身状態を勘案しつつ治療の適応を決定すべきであると考える。

レジメン解説執筆:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 伊澤 直樹 先生

References

  • 1)Van Cutsem E, et al.: J Clin Oncol. 19(21): 4097-4106, 2001 [PubMed
  • 2)Cunningham D, et al.: Lancet Oncol. 14(11): 1077-1085, 2013 [PubMed
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