坂本 大腸癌の術後補助化学療法では、2004年にAdjuvant Colon Cancer Clinical Trials(ACCCT)において、5-FUベースの治療を受けた患者を対象に、5年OSと3年disease free survival(DFS)の相関が検証され、これによって大腸癌の臨床試験が実施しやすくなりました(#3502, 2004)。しかしその後、新しい治療法の登場により、再発からの生存期間が2倍に延長しています。そこで今回、ACCENT groupのデータベースを用いて、近年のACCCTのエンドポイントの改善が検証されました(#4007)。佐瀬先生、解説をお願いします。
佐瀬 再発後の長期生存の影響を評価するために、「ACCENTで再発を来した症例の再発後の生存期間が約2倍になり、その他のすべての因子は同等であった」という仮説を立て、分析では「新治療は再発率に影響するが、再発のタイムパターンには影響しない」と仮定しました。
その結果、5-FUベースの術後補助化学療法を受けた stageII/IIIの結腸癌症例の35%に再発を認め、再発後のMSTはACCENTのデータで12ヵ月、仮説として使用したMOSAIC試験のデータセットでは24ヵ月でした。また、仮説のデータセットでは3年DFSと5年OSの相関性は以前の報告に比べて低下していましたが(R2=0.55)、3年DFSと6年OS(R2=0.68)、7年OS(R2=0.75)には強い相関が認められました。
このことから、彼らは「再発後の生存期間の延長により、3年DFSと5年OSの相関性は低下する。また、3年DFSをOSの代用的指標とするためには、6〜7年の観察期間が必要である」と結論づけています。
寺島 今回は、あくまで以前の5-FUベースの術後補助化学療法のデータをもとに、再発後の生存期間が2倍になったという仮定で検証しているのですね。問題は、L-OHPが術後に使われた症例は、5-FU/LV群より再発後の生存期間が短いことです。ということは、逆転する可能性が出てくるので、OSは何年 follow-upしても将来的には相関しなくなってくる可能性があります。
ただ、術後補助化学療法の効果をみるためには、再発をエンドポイントとした臨床試験を組むほうがよいのではないかと考えます。ただし、DFSは変動しやすい指標なので、follow-upの方法と間隔を明確に規定しなければならないと、演者のde
Gramont先生も指摘されていました。
坂本 Mayo ClinicのDaniel J. Sargent先生は、早く再発した人は早く死亡する、遅く再発した人はその後も長く生存できるなど、いろいろな要素がある。そうしたさまざまなサブ解析によって、関数の方程式や係数を変えてOSを予測する作業を始めていると話していました。
寺島 厚生労働省は、新薬承認のエンドポイントをDFSにするというスタンスなのでしょうか。
大津 厚労省についてはわかりません。ただ、米国のFDAでは、これまで大腸癌の新薬承認は一次治療のPFSで通ってきたのですが、最近はまたOSをエンドポイントとする傾向があるようです。
このサイトは医療関係者の方々を対象に作成しています。必ずご利用規約に同意の上、ご利用ください。記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。