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3月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科 医長 加藤 健

胃癌

進行胃癌患者を対象とした二次治療としてのNivolumab+Paclitaxel+Ramucirumab併用療法の多施設共同第I/II相試験


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Takako Eguchi Nakajima, et al.: Clin Cancer Res. 27(4): 1029-1036, 2021

 胃癌は主な癌種の中で5番目に高い体細胞変異率を有し、PD-L1およびPD-1の発現も高いことが報告されている1-4)。しかしながら、進行胃癌に対する抗PD-1およびPD-L1抗体の有効性は限られており、ATTRACTION-2試験ではNivolumabの奏効割合(ORR)は11%に留まっている5)。また、KEYNOTE-061試験ではPembrolizumabはPaclitaxelに対して全生存期間(OS)において優越性を証明できなかった6)。現時点での進行胃癌の二次治療の標準治療はPaclitaxel+Ramucirumab併用療法であり、RAINBOW試験においてPaclitaxelに対して無増悪生存期間(PFS)およびOSにおいて優れていることが示されている7)

 進行胃癌の一次治療においては、KEYNOTE-062試験で、PD-L1のcombined positive score(CPS)≧1を対象にPembrolizumab群は化学療法群に対して非劣性を示すことができたものの、治療開始初期はPembrolizumab群の生存曲線が化学療法群を下回っていた。一方で、Pembrolizumabと化学療法の併用群は、初期は化学療法群の生存曲線とほぼ重なっており、後期では化学療法群を上回っていた8)。Nivolumabと化学療法の併用療法を化学療法と比較したCheckMate 649試験では、CPS≧5において、PFSとOSは化学療法よりも優れていることが示されたが、一方で日本、韓国および台湾で実施された同様の試験であるATTRACTION-4試験ではOSにおいて優位性を示すことはできなった9,10)。これらのことから、化学療法の併用は免疫チェックポイント阻害薬に対する早期の抵抗性を克服する可能性を示唆している。

 PaclitaxelはToll-like receptor 4依存性の樹状細胞の成熟を促進し、IFNγ分泌CD8+ T細胞を増強するため、PD-1阻害との相乗的な抗腫瘍効果が報告されている11)。また、PD-1とVEGFR-2の同時阻害は、T細胞の集合を促進させ、局所免疫状態を活性化し、相乗的な抗腫瘍効果を誘導することが報告されている12)。そこで、進行胃癌患者を対象に、二次治療としてNivolumab+Paclitaxel+Ramucirumab併用療法の多施設共同第I/II相試験が実施された(UMIN000025947)。

 対象患者は、前治療としてプラチナ製剤およびFluoropyrimidineの併用療法を受けた再発あるいはstage IVの患者であり、PS 0あるいは1、病理学的に胃腺癌/印環細胞癌/粘液癌/肝様腺癌が適格とされた(術後補助療法としてプラチナ製剤およびFluoropyrimidineの併用療法を受けて6ヵ月以内に再発した患者も適格とされた)。免疫チェックポイント阻害薬あるいはその他のT細胞抑制療法を受けたことのある患者や登録前14日以内に10mg/日を超えるPrednisoloneあるいは免疫抑制剤を投与していた患者は除外された。

 試験デザインは、多施設共同、非盲検、非無作為化第I/II相試験であった。第I相パートでは、用量制限毒性(DLT)を評価し、modified 3+3デザインを用いた用量漸減デザインを用いてNivolumab+Paclitaxel+Ramucirumab併用療法の推奨用量を決定した。主なDLTの項目には、8日間にわたるgrade 4の好中球減少症、発熱性好中球減少症、grade 4の血小板減少症、grade 2以上の肺臓炎などが含まれた。第II相パートでは、推奨用量におけるNivolumab+Paclitaxel+Ramucirumab併用療法の臨床的有効性を評価した。第II相パートの主要評価項目は、6ヵ月PFS割合(両側80%信頼区間)であった。RAINBOW試験の結果(36%)より帰無仮説を35%として、適切な検定統計値を用いてp値を算出した。副次評価項目は、PFS、OS、病勢制御割合(DCR)、ORR、有害事象(AE)であった。

 バイオマーカー解析として、治療開始前の腫瘍組織を用いたHER2、MSH6/PMS2のミスマッチ修復(MMR)蛋白とPD-L1のIHC染色、およびEB virus encoded small RNA(EBER)のISHを評価した。PD-L1は、Dako PD-L1 IHC 22C3 pharmDxを用いて、CPSとtumor proportion score(TPS)を評価した。

 2017年2月〜2018年7月までの間に43例(第I相6例、第II相37例)が登録され、全例が解析対象となった。患者の大半は男性(83.7%)で、年齢は38~78歳、PS 0が22例(51.2%)であった。TPS陽性が6例(14.0%)であり、CPS≧1が26例(60.5%)、CPS≧10が7例(16.3%)であった。MMR蛋白の消失は0例で、EBER陽性は4例(9.3%)であった。治療期間の中央値は4.6ヵ月(95% CI: 2.8-6.2)であった。5例の患者(11.6%)がAEを理由にプロトコール治療を中止した。最終データカットオフ時点(2019年1月)では、追跡期間中央値は16.8ヵ月であった。後治療は31例(72.1%)の患者で実施され、26例(60.5%)がIrinotecanを含むレジメンであった。

 第I相パートの6例のうちDLTは2例の患者に観察され(発熱性好中球減少症および8日間にわたる好中球減少症)、推奨用量はNivolumab 3mg/kg、Paclitaxel 80mg/m2、Ramucirumab 8mg/kgに決定された。第II相パートではすべての患者が推奨用量で治療され、6ヵ月PFS割合は46.5%(80% CI: 36.4-55.8、p=0.067)であり(追跡期間中央値8.2ヵ月)、事前に設定していた主要評価項目を達成した。

 PFS中央値は5.1ヵ月(95% CI: 4.5-6.5)であった。CPSスコア別のサブ解析においては、CPS≧1は6.4ヵ月(95% CI: 4.2-7.9)、CPS<1は5.1ヵ月(95% CI: 2.6-6.7)、CPS≧5は6.4ヵ月(95% CI: 1.0-6.9)、CPS<5は5.9ヵ月(95% CI: 4.6-6.9)、CPS≧10は6.7ヵ月(95% CI: 1.0-8.8)、CPS<10は5.5ヵ月(95% CI: 4.2-6.7)であった。

 OS中央値は、13.1ヵ月(95% CI: 8.0-16.6)であり、12ヵ月のOS割合は55.8%(95% CI: 39.8-69.1)、18ヵ月のOS割合は32.1%(95% CI: 18.2-46.8)であった(追跡期間中央値23.2ヵ月)。CPSスコア別のサブ解析においては、CPS≧1は13.8ヵ月(95% CI: 8.0-19.5)、CPS<1は8.0ヵ月(95% CI: 4.8-24.1)、CPS≧5は13.1ヵ月(95% CI: 5.1-NA)、CPS<5は14.9ヵ月(95% CI: 7.4-19.5)、CPS≧10は13.8ヵ月(95% CI: 8.0-NA)、CPS<10は13.0ヵ月(95% CI: 7.1-18.6)であった。

 また、DCRは83.7%(95% CI: 69.3-93.2)であり、ORRは37.2%(95% CI: 23.0-53.5)であった。ORRのCPS score別のサブ解析では、CPS≧1は46.2%(95% CI: 26.6-66.6)、CPS<1は30.8%(95% CI: 9.1-61.4)であった。PS別のサブ解析においてPS 0は45.5%(95% CI: 24.4-67.8)、PS 1は28.6%(95% CI: 11.3-52.5)であった。

 AEについては、39例(90.7%)にgrade 3以上の治療関連AEがみられた。最も一般的なgrade 3以上の治療関連AEは好中球数減少(33例、76.7%)であり、発熱性好中球減少症は7例(16.3%)に認められた。Grade 3以上の何らかの免疫関連AE(irAE)を認めた患者は14例(32.6%)であったが、各AEの頻度は5%以下であった。治療に関連した血小板減少症による死亡は1例であった。

 低アルブミン、高LDHおよび腹膜転移は、予後不良に関するバイオマーカーである可能性が示唆された。一方で、CPSおよびTPSによるPD-L1発現は予後および効果予測との関連性は統計学的に示されなかった。

 これまでVEGF-AおよびPD-1の同時阻害による相乗的な抗腫瘍効果が多数研究されており、非小細胞癌や腎細胞癌では、すでに血管新生阻害とPD-1/PD-L1阻害の併用療法は標準治療となっている13-16)。胃癌においては、前治療歴のある胃癌患者を対象に、Ramucirumab+Pembrolizumab併用療法や、Regorafenib+Nivolumab併用療法が有望な抗腫瘍効果を示したことが報告されている17,18)

 KEYNOTE-062試験では、化学療法とPembrolizumabの併用群においてOS中央値より後半でのOS割合の上昇がみられた。試験間での比較は慎重になる必要があるが、本試験のOS中央値は13.1ヵ月であり、RAINBOW試験のPaclitaxel+Ramucirumab群の日本人患者の11.4ヵ月に匹敵する結果であった。一方で、12ヵ月OS割合および18ヵ月OS割合はそれぞれ、55.8%(95% CI: 39.8-69.1)および32.1%(95% CI: 18.2-46.8)であり、RAINBOW試験のPaclitaxel+Ramucirumab群の日本人患者のデータよりも良好であった19)

 安全性に関しては、最も一般的なAEは血液毒性であり、irAEは許容できるものであった。また、好中球数減少や発熱性好中球減少症の発生頻度が RAINBOW試験と比較して高かったのは、本試験では PS 1、stage IV、転移部位≧3の割合が高く、患者の状態が悪かったことが考えられる。

 本研究のlimitationとして、サンプルサイズが小さいこと、単群デザインであることが挙げられ、このレジメンについてはさらなる評価が必要である。

まとめ
 結論として、Nivolumab+Paclitaxel+Ramucirumab併用療法は、進行胃癌患者の二次治療において高い有効性を示し、副作用は許容できるものであった。今後、さらなるバイオマーカー解析の結果が発表される予定である。


日本語要約原稿作成:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 武田 弘幸



監訳者コメント:
進行胃癌に対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬併用による新たな治療法の開発

 本研究における登録患者の背景因子に特別な偏りは認められず、過去の臨床試験(RAINBOW試験)と同等であった7)。また、マイクロサテライト不安定性(MSI)陽性やEBウイルス陽性など免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単独で治療効果の高い患者の登録は少数であった。そのため、本試験はPaclitaxelとRamucirumabにICIであるNivolumabを上乗せすることの効果をみた試験といえる。

 3剤併用の毒性は許容範囲内であり、主要評価項目(PE)である6ヵ月時点でのPFS割合は46.5%と統計学的に規定されたPEを達成した。また、ORR(37.2%)、DCR(83.7%)、12ヵ月OS割合(55.8%)、18ヵ月OS割合(32.1%)はいずれも良好な結果であり、奏効や長期間の生存が期待できる患者が存在することを示唆した。CPSの解析がなされ、CPSが高いほうがPFSやOSの延長を認めたが、明確なバイオマーカーとは示されず、さらなる効果予測因子の解析が必要である。

 本試験と同様の患者を対象とし、RamucirumabとNivolumabの併用における有用性を検討した臨床試験(NivoRam study)においても、PEである6ヵ月時点のPFS割合はRamucirumab単剤と比較して良好な結果であった(37.4%)20)。さらに切除不能胃癌に対してPembrolizumabにVEGFRを含んだマルチターゲットキナーゼ阻害薬であるLenvatinibを併用した試験において、二次治療におけるORRが67%と非常に良好な成績を示した21)

 本試験を含めたこれらの結果より、切除不能胃癌に対するICIと血管新生阻害薬の併用は優れた治療戦略であろうと考えられる。一方で、ICIと併用する血管新生阻害薬ならびに殺細胞性抗癌剤においてはさらなる検討が必要である。

監訳・コメント:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 伊澤 直樹

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