免疫チェックポイント阻害剤による治療は悪性黒色腫・肺癌などさまざまな癌種に対して有効性が認められており、消化器領域においては胃癌に対するNivolumabの保険適応を始めとして、現在食道癌・大腸癌でも臨床試験が進行している。免疫チェックポイント阻害剤による副作用は従来の殺細胞性抗癌剤や分子標的薬とは大きく異なり、皮膚を始め消化器、呼吸器、甲状腺、下垂体などさまざまな臓器に及ぶ。これらは過剰な自己免疫反応による副作用と考えられており、このような有害事象の総称を免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAE)と呼ぶ。irAEの頻度は比較的少なく、通常軽度であれば、慎重な管理のもと免疫チェックポイント阻害剤の治療を継続できる。しかしながら、中等度から高度のirAEについては臓器機能およびQOLの著しい低下と関連し、致命的な結果が報告されていることから、われわれ医療者はirAEを早期発見および適切な治療を行うことが重要である。
irAEの管理は、出現した副作用によって対応は異なるが、American Society of Clinical Oncology(ASCO)のガイドライン1)に記載されている共通した管理のポイントの概要は以下のとおりである。
(1)免疫チェックポイント阻害剤の治療開始前に患者や家族に対して、起こりうるirAEとその自覚症状を十分に説明する。
(2)治療中に新たな症状を認めた場合はirAEを疑う。
(3)一部の神経毒性・血液毒性・心毒性・呼吸器毒性を除いてGrade 1のirAEについては慎重にモニタリングのうえ、治療を継続することができる。
(4)多くのGrade 2のirAEについては治療を休止し、症状がGrade 1に改善した場合は投与の再開を考慮する。また、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン0.5〜1mg/kg/日または同力価のステロイド)による治療を検討する。
(5)Grade 3のirAEについては治療を休止し、高用量の副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン1〜2mg/kg/日またはメチルプレドニゾロン静注1〜2mg/kg/日)を開始する。症状が改善したら、副腎皮質ステロイドは少なくとも4〜6週かけて漸減する。高用量コルチコステロイドによっても48〜72時間で症状の改善が認められない場合は、インフリキシマブなどの免疫抑制剤の使用を考慮する。
(6)症状や検査値がGrade 1以下に回復後に投与の再開を検討する。しかしながら早期にirAEを発症した患者についての治療再開には特に注意が必要である。また免疫チェックポイント阻害剤の用量調整は推奨されない。
(7)Grade 4のirAEはホルモン補充によってコントロール可能な内分泌障害のirAEを除いて、免疫チェックポイント阻害剤の投与は中止する。
免疫チェックポイント阻害剤は免疫応答を制御するT細胞に作用して、腫瘍細胞に対する免疫応答を再活性化することで抗腫瘍効果を示すが、irAEは正常細胞の活性化に関連した過剰な自己免疫作用によるものと考えられている。
irAEは治療開始後2ヵ月以内に発現することが多いが、好発現時期は明らかになっておらず、治療期間中はもちろん治療終了後も半年程度はモニタリングが必要である2)。
Nivolumab 240mg 2週間ごと(胃癌)
※Nivolumabの使用に当たっては、Reference 2)を参照すること。
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