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9月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長 加藤 健

胃癌

PRODIGY:切除可能進行胃癌に対する術前DOS(Docetaxel+Oxaliplatin+S-1)療法+手術+S-1術後補助化学療法vs.手術+S-1術後補助化学療法の第III相試験


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Kang YK, et al.: J Clin Oncol. 39(26): 2903-2913, 2021

 局所進行胃癌(LAGC)の標準的な補助療法は地域によって異なっており、従来、北米ではUS intergroup study1)に基づいて術後化学放射線療法が、欧州ではMAGIC試験2)に基づいて周術期ECF(Epirubicin+Cisplatin+Fluorouracil)療法が、東アジアではACTS-GC試験3)とCLASSIC試験4)に基づいて術後S-1療法またはCAPOX療法が標準治療として行われてきた。近年、各地域で周術期の化学療法をより強化することで生存の改善を試みる努力がなされており、ドイツで行われたFLOT4試験5)では周術期FLOT(Docetaxel+Oxaliplatin+Fluorouracil)療法がECF療法よりも生存において優れていることを示し、欧米では新たな標準治療と位置付けられている。また、本邦で行われたJACCRO GC-07試験6)および韓国で行われたARTIST 2試験7)は、強化された術後補助化学療法レジメンであるDS療法およびSOX療法がそれぞれ標準レジメンであるS-1療法よりも生存において優れていることを示し、それらのレジメンも各国で新たな標準治療として認識されている。

 現在韓国では、術前化学療法はLAGCに対する標準治療ではないものの、切除可能なLAGCに対する術前DOS(Docetaxel+Oxaliplatin+S-1)療法の第II相試験では、術前DOS療法が安全性と有効性の点で可能性があることが示唆されている。その後継試験が今回報告されたPRODIGY試験であり、本試験は同対象に対する標準治療である手術+術後S-1療法を行うSC群と比較して、術前DOS療法を加えたCSC群が、生存を改善するか否かが検証された試験である。

 PRODIGY試験は、切除可能進行胃癌患者を対象として、手術+術後S-1療法に対して、術前DOS療法の生存に対する上乗せ効果を検証する、非盲検無作為化第III相試験として実施された。20~75歳、PS 0-1、治癒切除可能な局所進行胃腺癌/食道胃接合部腺癌(AJCC第7版でcT2-3N+またはcT4Nany)である患者が適格となった。適格患者はCSC群とSC群に1:1に無作為に割り付けられた。

 CSC群は術前化学療法として、day 1にDocetaxel(50mg/m2)およびOxaliplatin(100mg/m2)を静脈内投与し、day 1からday 14にS-1(40mg/m2)を1日2回連日経口投与し、3週間毎に3サイクル行った。手術は、CSC群で術前化学療法の1~3週間後、SC群で無作為化割付から2週間以内に、D2リンパ節郭清を伴う胃切除術を行った。両群共通で、術後S-1(40~60mg/m2)を1~28日に1日2回連日経口投与し、6週間毎に8サイクル行った。

 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目は、全生存期間(OS)、術後の病理学的病期、R0切除割合、および安全性であった。

 PFSはPDまたは死亡とし、(1)CSC群における術前化学療法中のRECIST PD、(2)両群におけるpStage Ⅳ(R0にかかわらず)、R1もしくはR2切除、あるいはR0切除後のフォロー中の再発、がPDと定義された。有害事象(AEs)の評価はNCI-CTCAE ver4.03が使用された。

 α=0.05、1-β=0.8(検出力80%)、CSC群の3年PFS割合を70%、SC群で60%と仮定すると(HR=0.698)、244例のイベントおよび各群238例以上の症例数が必要であった。推定10%の脱落を考えると、530例が必要であった。135のイベントがみられた時点で中間解析が計画され、追跡期間中央値が3年超、PFSで244のイベントがみられた時点で最終解析が計画された。

 また、ITT解析と、ランドマーク時間(無作為化割付から6ヵ月後)より前の死亡と病勢進行がイベントとして定義されたランドマークPFS解析の2つの感度解析が計画された。

 2012年1月18日から2017年1月2日までの間に合計693例が韓国の18の病院からリクルートされ、そのうち163例がスクリーニングの段階で脱落し、ITT集団は530例であった。このうち266例がCSC群に、264例がSC群に無作為に割り付けられた。46例がFASから除外され、その内訳は、33例(CSC群24例、SC群9例)が無作為化後の同意撤回、13例(CSC群4例、SC群9例)が不適格で、その理由は主に化学療法に不十分な臓器機能であった。FASは484例(CSC群238例、SC群246例)で構成されていた。

 患者背景は、CSC群とSC群において概ね比較可能であった。食道胃接合部を主座とする腫瘍は少なく、臨床病期はcT4が最も多くcN0はほとんどいなかった。ほとんどの患者はcStage IIIでありcStage IIは比較的少数であった。

 CSC群238例のうち214例(89.9%)が3サイクルの術前DOS療法を受けた。Relative Dose Intensity(RDI)中央値はDocetaxelで95.1%、Oxaliplatinで95.2%、S-1で89.6%であった。術前療法を完遂できなかった理由として、AEs(5.5%)、PD(0.8%)、患者の要求(1.3%)、その他の理由(2.5%)であった。238例のうち5例(2.1%)が術前療法完遂時にPDであった。

 術前DOS療法によるgrade 3以上のAEsには好中球減少症(12.6%)、発熱性好中球減少症(9.2%)、下痢(5.0%)が含まれていた。Grade 5のAEs(発熱性好中球減少症と呼吸困難)がそれぞれ1例ずつみられた。

 CSC群238例のうち16例は、同意撤回(6例)、死亡(4例)、術前化学療法中のPD(3例)、追跡不能(2例)、または手術前のAE(1例)の理由で手術は実施されなかった。手術を受けた中でR0切除割合はCSC群で95%に対し、SC群では84%と10%程度CSC群が高かったが、FASではR0切除割合はCSC群で89%であり、SC群と大きな差はなかった。D2リンパ節郭清割合は両群で近似していた。Grade 3以上の手術関連合併症は稀であり、合併症と入院期間において2群に違いはなかった。CSC群において、手術関連死亡(肺塞栓症)1例と手術に関連のない死亡1例がみられた。

 手術を受けた468例において、CSC群の病理学的完全奏効割合(pCR)は10.4%であり、SC群と比較してダウンステージングの割合も有意に高かった(p<0.0001)。

 R0切除術を受けた418例のうち391例(CSC群212例、SC群206例)が術後補助化学療法を受けた。CSC群で術後補助化学療法を開始しなかった理由は、AE(肺塞栓症:手術との関連性不明0.5%)、患者の要求(2.3%)、およびその他の理由(0.9%)で、SC群では、AE(手術関連消化管吻合部縫合不全0.5%)、PD(0.5%)、患者の要求(5.3%)、およびその他の理由(2.9%)であった。

 術後補助化学療法を開始したCSC群の83.3%、SC群のうち84.0%が全8サイクル完遂した。術後補助化学療法を完遂できなかった理由は、CSC群/SC群で、PDまたは死亡が8.8%/7.0%、AEsが5.4%/6.4%、患者の要求が1.5%/1.6%、およびその他の理由が1.0%/1.1%であった。術後S-1療法におけるRDI中央値は、CSC群で84.0%、SC群で86.0%とほぼ同等であった。

 最も一般的なgrade 3以上のAEは好中球減少症でありCSC群6.4%、SC群5.3%でみられた。発熱性好中球減少症は、SC群のみ0.5%でみられた。術後補助化学療法に関連した死亡はみられなかった。

 中間解析では、両群の差は事前に指定された統計学的有意な閾値に到達せず、試験は続行された。しかし、予想よりも少ないPFSイベント数であったため、追跡期間中央値3年に達した段階で最終解析を可能にするために、プロトコルの改訂が行われた。

 追跡期間中央値38.6ヵ月(23.5-62.1)、PFSイベント数183の段階でPFSは、CSC群で有意に優れていた(HR=0.70、95% CI: 0.52-0.95、p=0.023)。3年PFS割合はCSC群で66.3%(95% CI: 59.6-72.1)、SC群で60.2%(95% CI: 53.6-66.3)であった。感度解析では、ITT解析(HR=0.69、95% CI: 0.51-0.93、p=0.016)および6ヵ月のランドマークPFS解析(HR=0.74、95% CI: 0.54-1.00、p=0.043)においても同様の結果が観察された。OSはCSC群とSC群で統計学的な有意差はなかった(HR=0.84、95% CI: 0.60-1.19、p=0.338)。3年OS割合はCSC群で74.2%(95% CI: 67.7-79.6)、SC群で73.4%(95% CI: 67.0-78.7)であった。

 以上のように、切除可能進行胃癌患者に対して、標準治療であるD2リンパ節郭清を伴う胃切除術および術後S-1療法に術前DOS療法を追加することで、安全性を担保した上で、ダウンステージングおよびPFSの改善をもたらすことが可能であることが示された。


日本語要約原稿作成:千葉県がんセンター 消化器内科 箕輪 真寿美



監訳者コメント:
胃癌に対する術前化学療法の開発への期待

 本試験は、OSで有意な差はつかなかったもののprimary endpointであるPFSの改善を認めたため、結果としてはpositiveな試験と言える。本試験の術前DOS療法はgrade 3以上の好中球減少が12.6%とかなり少ない部分に疑問は残るものの、約90%と高い完遂率で、約10%でpCRが得られPDがわずか2%であることを考えると、DOS療法はpromisingなレジメンであると考えられる。本邦でも大阪大学を中心に術前DOS療法の開発が進められており、2つの第II相試験(UMIN000017652、JCOG1704)の結果が待たれるところである。

 本邦においては、JCOG0501試験8)が残念ながらnegativeな結果であり、術前化学療法の開発に対する意欲が削がれていたが、同じアジア圏でpositiveな結果が出たことで、開発への期待が高まっているように感じる。中国から報告されたRESOLVE試験9)のpositiveな結果も後押しし、欧米で標準治療として行われている周術期FLOT療法も含め、今後、術前化学療法は各国での標準治療となっていく可能性がある。一方で、結果の外挿性には常に注意を払わねばならず、本邦での術前化学療法のデータは不足しているため、この結果を以って標準治療として受け入れることは難しい。現在本邦では、切除可能胃癌を対象としてJCOG1509試験やMATTERHORN試験などの第III相試験が行われている。それらの試験の結果次第で、長らく本邦の標準治療であった手術+術後補助化学療法という治療方針が大きく転換する可能性があり、引き続きその動向に注目していきたい。

監訳・コメント:千葉県がんセンター 消化器内科 今関 洋

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