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9月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長 加藤 健

食道癌

フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤併用療法に不応な食道扁平上皮癌に対するDocetaxel vs. Paclitaxelの無作為化第II相試験:OGSG1201


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Yamamoto S, et al.: Eur J Cancer. 154: 307-315, 2021

 食道癌は世界の癌関連死亡者数において6番目に高い癌である1)。食道癌は欧州や北米では腺癌の発生率が増加している一方、日本を含め世界全体では扁平上皮癌が依然として多い2-6)。組織型にかかわらず、食道癌の全生存率は低い。

 これまで食道扁平上皮癌でフッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤を用いた化学療法不応後の患者を対象にsingle armでの国内第II相試験を行っており、Docetaxel(DTX:70mg/m2、3週間毎)は奏効率(RR)16%、生存期間中央値(MST)8.1ヵ月であった7)。Paclitaxel(PTX:100mg/m2、毎週6投1休、7週間毎)はRR 44.2%、MST 10.4ヵ月であった8)

 しかし、これまでこの2剤を比較した無作為化前向き比較試験はなかったため今回第II相試験を行った。

 適格基準は20~80歳の切除不能進行・転移再発食道癌で、病理学的に扁平上皮癌、腺扁平上皮癌であること、PS 0-1であること、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤の併用療法不応であること、術前補助化学療法を受けた患者の手術日/根治的切除に伴う術後化学療法の最終投与日から24週間未満であること、血液、腎、肝機能が十分であること、書面によるICを得ていることなどを条件とした。除外基準は、間質性肺疾患または肺炎、タキサン(DTXまたはPTX)治療歴、重複癌、grade 2-4の神経障害などとした。

 本試験は第III相試験へ向けてPTXとDTX単独療法を比較したselection designとして考案した。これまでの試験結果から予想されるMSTを6ヵ月とし、それよりも2ヵ月長いMST(8ヵ月)を有するレジメンを80%の確率で選択するように必要症例数を計算し、その結果1群あたり38例が必要であり、多少の偏差逸脱を想定して登録予定症例数を各群40例とした。

 2012年5月1日~2019年4月30日に、OGSG(大阪消化管がん化学療法研究会)の17施設から計80例の患者が登録され、DTX群(41例)とPTX群(39例)に無作為に1:1で割り付けられた。

 しかし、DTX群で、1例は重複癌、1例は術前補助化学療法(DTX+Cisplatin+5-FU療法)としてDTXを受けた既往があったため2例が不適格とされ、78例(DTX群39例、PTX群39例)が適格となった。

 主要評価項目は、全生存期間(OS)とした。副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)、RR、および有害事象とした。

 患者背景は両群間で差はなかった。測定可能病変を有する患者数は、DTX群33例、PTX群29例であった。前治療でのプラチナ製剤はCisplatinが多く(DTX群35例、PTX群34例)、Nedaplatinは11例(DTX群6例、PTX群5例)に使用された。80例中78例(97.5%)では、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤の化学療法を延命目的で受けていたが、2例(DTX群1例、PTX群1例)は周術期に受けていた。78例のうち、28例は食道切除後再発であった(DTX群13例、PTX群15例)。

 解析は募集登録終了から1年後に行い、その時点(2020年4月)で全ての患者が治療を中止していた。治療中止は主に病状進行であった[75%、両群60例(DTX群33例、PTX群27例)]。DTXとPTXのdose intensityは同様であった(平均±SEM:DTX群85.6±12.4%、PTX群83.2±14.3%)。

 全gradeで多い有害事象は血液毒性であった。非血液毒性で多く認められた有害事象は食欲不振、倦怠感、低アルブミン血症であった。

 全grade中最も多い血液毒性は貧血であり[DTX群36例(88%)、PTX群34例(87%)]、次に好中球減少症であった[DTX群34例(83%)、PTX群25例(64%)]。Grade 3/4の好中球減少症はDTX群で高かった[DTX群33例(81%)、PTX群11例(29%)]。なお、DTX群で治療関連死が1例認められた。

 48例登録時点で安全性モニタリングが行われ、DTX群では発熱性好中球減少症の発現率が高いことからG-CSFの予防的使用を推奨するようプロトコルが改訂された(2015年3月)。それでも、発熱性好中球減少症の発現率はPTX群よりDTX群のほうが有意に高かった(DTX群46%、PTX群0%、p<0.0001)。

 Grade 3以上を含めた食欲不振、倦怠感、低アルブミン血症の発現率に関しては、DTX群のほうがPTX群よりも高かった。一方、末梢神経障害の発現率はPTX群のほうがDTX群よりも高かった[DTX群5例(12%)、PTX群28例(72%)]。そのほか重篤な有害事象には、間質性肺炎(DTX群3例、PTX群1例)があり、各群1例がgrade 3/4に進行した。間質性肺炎と放射線治療歴との因果関係は明らかではなかった(p=0.293)。

 観察期間中央値は8.0ヵ月(範囲:1.3-54.4ヵ月)であった。

 OSはPTX群8.8ヵ月(95% CI: 7.9-17.9ヵ月)、DTX群7.3ヵ月(95% CI: 5.3-11.0ヵ月)であり、有意にPTX群で延長した[HR=0.62(95% CI: 0.38-0.99)、p=0.047]。

 PFSはPTX群4.4ヵ月(95% CI: 3.8-5.6ヵ月)、DTX群2.1ヵ月(95% CI: 2.1-2.9ヵ月)であり、有意にPTX群で延長した[HR=0.49(95% CI: 0.30-0.78)、p=0.002]。

 TTFはPTX群3.8ヵ月(95% CI: 3.5-4.4ヵ月)、DTX群2.1ヵ月(95% CI: 2.0-2.4ヵ月)であり、有意にPTX群で延長された[HR=0.45(95% CI: 0.28-0.73)、p<0.001]。

 RRは、PTX群25.6%(95% CI: 13.0-42.1%)、DTX群7.7%(95% CI: 1.6-20.9%)であったが、有意差はみられなかった(p=0.065)。

 病勢コントロール率(DCR)は、PTX群74.4%、DTX群35.9%で有意にPTX群が高かった(p=0.0013)。

 78例中44例が後続治療を受けた。その中で24例(DTX群14例、PTX群10例)がクロスオーバー治療(DTX治療後にPTX、PTX治療後にDTX)を受けた。この治療を受けた症例は、OSが有意に延長した[HR=0.40(95% CI: 0.23-0.71)、p=0.002]。クロスオーバー治療での生存期間の延長は、PTX群[HR=0.58(95% CI: 0.26-1.28)、p=0.171]よりも、DTX群[HR=0.30(95% CI: 0.14-0.65)、p=0.002]で有意であった。

 本試験でPTXはDTXに比べてOS、PFS、TTFの有意な延長を認め、RRの改善傾向を認めた。また有害事象では血液毒性が高く、特に発熱性好中球減少症の発現率はDTX群が有意に高かった(46% vs. 0%、p<0.0001)。他癌種を含めたDCFレジメンでは発熱性好中球減少症発現率が12〜30%であったのに比べ9-13)、本試験では発熱性好中球減少症の発現率が高く、この要因の1つには食道癌の2次治療での患者状態が悪い可能性があった。

 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)であるNivolumabまたはPembrolizumab単剤療法は、ATTRACTION-314)およびKEYNOTE-18115)の第III相試験により、化学療法群と比較して、有意に生存期間の延長が示された。これらの試験の結果から、ICI単剤療法はフッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤併用療法の化学療法不応食道扁平上皮癌の2次治療になっている。

 最近の第III相試験では、食道癌患者に対する5-FU+Cisplatin+Pembrolizumabによる生存期間の延長が示されている16)。また、Ipilimumab+Nivolumab、5-FU+Cisplatin+Nivolumab、5-FU+Cisplatinの3群を比較したCheckMate 648試験でもICIを含めた治療の有効性が示されている17)。今後は化学療法+ICI併用治療が食道扁平上皮癌での1次治療の標準となりつつある。

 今回2次治療でのDTX vs. PTXにおいてPTXの有効性と安全性が上回った。今後の第III相試験では、ICIを含むレジメンによる1次治療後にPTXが対照群となる可能性が示唆された。


日本語要約原稿作成:埼玉県立がんセンター 消化器内科 村山 梢



監訳者コメント:
フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤との併用療法に不応となった進行・再発食道癌においてDTXとPTXが比較検討された初めての試験である

 本試験が計画された2012年はPTXが進行・再発食道癌に承認された直後で、PTXはDTXと並び、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤との併用療法に不応不耐後の2次治療の位置付けであった。この2剤を比較する多施設共同無作為化比較第II相試験が2012年5月に開始され、登録期間は7年と長期におよんだが目標症例数の80例が登録された。プライマリーエンドポイントである全生存期間中央値において、DTX群よりもPTX群のほうが有意に長かっただけでなく、そのほかの有効性のエンドポイントである無増悪生存期間および治療成功期間の中央値でもDTX群よりもPTX群のほうが有意に長かった。Grade 3以上の有害事象では好中球数減少の頻度が最も高く、発熱性好中球減少症は有意にDTX群で多かった。

 本試験の登録期間中に、2次治療として免疫チェックポイント阻害剤(ICI)とタキサン系を比較した治験が行われ、ICIがタキサン系よりも有意に生存期間が良好であったことから14,15)、ガイドラインでICIが2次治療として推奨された。また、本試験の結果が出るのと時期を同じくして、1次治療としてICI+FP療法およびICI 2剤併用療法がFP療法に対して有効性で上回り16,17)、今後ICIは進行・再発食道癌における1次治療として承認される見込みとなった。これを受けてICIに依らない2次治療の本試験の結果は、意義があると考えられる。

監訳・コメント:大阪国際がんセンター 消化管内科 山本 幸子

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