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3月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長 加藤 健

胃癌 食道胃接合部癌

切除不能進行・再発胃および食道胃接合部癌の1次治療におけるNivolumab+化学療法と化学療法を比較した多施設共同無作為化比較第III相試験(ATTRACTION-4試験)


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Kang YK, et al.: Lancet Oncol. 23(2): 234-247, 2022

 HER2陰性切除不能進行・再発胃および食道胃接合部癌における1次治療の標準治療はフッ化ピリミジン系およびプラチナ系化学療法の併用療法である(無増悪生存期間[PFS]中央値:4.9~6.0ヵ月、全生存期間[OS]中央値:10.5〜14.1ヵ月)1-3)。過去10年間分子標的薬も含めた第III相試験が複数行われたが、OSの延長を示すことができず、新規の治療開発が喫緊の課題であった。

 ATTRACTION-2試験4)において、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の1つであるNivolumabは3次治療以降の治療法としてプラセボ群と比較してOSを有意に延長し、標準治療となった(5.3ヵ月vs. 4.1ヵ月、ハザード比[HR]=0.63、95% CI: 0.51-0.78、p<0.0001)。また殺細胞性抗癌剤には腫瘍細胞への細胞毒性作用に加え、免疫系を調節する効果も示唆され5)、特にOxaliplatin(L-OHP)はimmunogenic cell deathを誘導する報告もある6)。そのため、ICIとL-OHPベースの化学療法を併用することで抗腫瘍効果の増強と持続が期待される。

 今回Nivolumabと化学療法(SOX[S-1+L-OHP]またはCAPOX[Capecitabine+L-OHP])の併用療法の有効性と安全性を検証する第II/III相試験(ATTRACTION-4試験)が行われた。第II相試験部分の報告では、Nivolumabと標準化学療法(SOXまたはCAPOX)の併用は、HER2陰性切除不能進行・再発胃および食道胃接合部癌に対して忍容性に優れ、Nivolumab併用化学療法の有望な効果が示された7)。今回、同試験の第III相部分の主要評価項目の解析結果が報告された。

 本試験は、切除不能進行・再発胃および食道胃接合部癌の1次治療における標準化学療法に対するNivolumab+化学療法の優越性の検証を目的とした日本、韓国、台湾の130施設で実施された国際共同プラセボ対照二重盲検無作為化第II/III相試験である。

 本試験の主な適格規準は、①20歳以上、②ECOG PS 0-1、③前治療歴を有さない(術前もしくは術後化学療法終了後180日以降の再発を除く)、④臓器機能が保たれている、⑤組織学的に胃または食道胃接合部腺癌と診断されている、⑥RECIST v1.1に定義される測定可能病変を有する、⑦腫瘍組織検体の入手が可能であることであった。主な除外規準は、HER2陽性または判定不能、顕著な栄養不良がある、重複癌がある、間質性肺疾患または肺線維症、同時期の憩室炎または症候性消化管潰瘍、自己免疫疾患歴を有する、ICIによる治療歴があるなどであった。

 患者は、Nivolumab+化学療法群(Nivolumab併用群:Nivolumab 360mg[day 1]、Oxaliplatin 130mg/m2[day 1]+S-1 40mg/m2 1日2回[day 1-14]もしくはCapecitabine 1,000mg/m2 1日2回[day 1-14]、3週毎)とプラセボ+化学療法群(プラセボ併用群:プラセボ[day 1]、SOXまたはCAPOX)の2群に1:1で無作為に割り付けられた。試験治療は病勢進行、許容できない毒性、参加者の同意撤回による中止まで施行された。層別化因子はPD-L1発現(tumor proportion score[TPS]≧1% vs. <1%または不明)、ECOG PS(0 vs. 1)、状態(切除不能進行vs.再発)、地域(日本vs.韓国または台湾)であった。PD-L1免疫染色は、PD-L1 IHC 28-8 pharmDx(Dako)を用いて行った。効果判定は6週毎にCTやMRIを用いてRECIST v1.1に基づき評価された。有害事象は初回投与から最終投与28日以内の事象をCTCAE v4.0とMedDRA v22.1に基づき報告された。

 主要評価項目は、PFS(中央判定)とOSであった。副次評価項目はPFS(担当医判定)、中央評価および治験担当医師による客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、最良効果判定、奏効期間(DoR)、標的病変の径和の最大変化率などが含まれた。

 本試験の統計設定を下記に示す。2つの主要評価項目に対して、両側検定の有意水準はPFSにて4%、OSにて1%と設定された。PFSの解析に必要なイベント数は430例と算出され、中間解析に関しては約75%(323イベント)が発生した時点と算出した。OSに関しては、必要イベント数は464と算出された。登録期間を12ヵ月、最低追跡期間を24ヵ月と仮定し、目標サンプルサイズは650例と設定された。

 2017年3月から2018年5月までに1,126例のスクリーニングが行われ、うち724例が無作為化された(Nivolumab併用群362例、プラセボ併用群362例)。患者背景はNivolumab併用群、プラセボ併用群においてそれぞれ、年齢中央値(範囲)64歳(25-86)vs. 65歳(27-89)、男性70% vs. 75%、日本人55% vs. 54%、PS 0 54% vs. 54%、切除不能進行77% vs. 77%およびPD-L1 TPS≧1%が16% vs. 15%であり、患者背景は均等に割り付けられていた。

 2018年10月31日にPFSの中間解析が実施され、その時点の観察期間中央値が11.6ヵ月、イベント数は325例(Nivolumab併用群141例、プラセボ併用群184例)であった。また2020年1月31日にOSの一次解析が実施され、その時点の観察期間中央値は26.6ヵ月、イベント数は475例であった。Nivolumab併用群359例中314例(87%)およびプラセボ併用群358例中334例(93%)が病勢増悪のため試験治療が中止されていた。

 PFSの中間解析時点でのPFS中央値は、Nivolumab併用群で10.45ヵ月(95% CI: 8.44-14.75)、プラセボ併用群で8.34ヵ月(95% CI: 6.97-9.40)であり、統計学的に有意な改善を認め、主要評価項目が達成された(HR=0.68[98.51% CI: 0.51-0.90、p=0.0007])。OSの初回解析時点でのPFS中央値は、Nivolumab併用群で10.94ヵ月(95% CI: 8.44-14.03)、プラセボ併用群で8.41ヵ月(95% CI: 7.03-9.69)という結果であった(HR=0.70[95% CI: 0.57-0.86])。

 OSの最終解析時には475例のイベント(Nivolumab併用群230例、プラセボ併用群245例)があり、OS中央値は、Nivolumab併用群17.45ヵ月(95% CI: 15.67-20.83)、プラセボ併用群17.15ヵ月(95% CI: 15.18-19.65)であり、有意な改善は認められなかった(HR=0.90[95% CI: 0.75-1.08]、p=0.26)。

 主なサブグループ解析に関しては下記の通りであった。日本人症例の解析では、プラセボ併用群に対するNivolumab併用群におけるPFS、OSのHRは0.83(95% CI: 0.62-1.13)、1.04(95% CI: 0.81-1.32)であった。また、PD-L1 TPS≧1の解析では、PFS、OSのHRは0.80(95% CI: 0.48-1.33)、1.06(95% CI: 0.67-1.68)であった。一方で、PD-L1 TPS<1または不明の解析では、PFS、OSのHRは0.67(95% CI: 0.53-0.86)、0.87(95% CI: 0.72-1.06)であった。

 ORRはNivolumab併用群で57.5%(95% CI: 52.2-62.6)、プラセボ併用群で47.8%(95% CI: 42.5-53.1)であった(p<0.0088)。同様に、DCRはNivolumab併用群で71.8%(95% CI: 66.9-76.4)、プラセボ併用群で68.5%(95% CI: 63.4-73.3)であった。またDoR中央値は、Nivolumab併用群12.91ヵ月(95% CI: 9.89-16.56)、プラセボ併用群8.67ヵ月(95% CI: 7.20-11.37)であった。

 また、何らかの後治療を受けた割合はNivolumab併用群で71.5%、プラセボ併用群で73.2%であり、中でも後治療としてICIが投与された割合はNivolumab併用群で12.2%、プラセボ併用群で27.1%であった。

 次に、grade 3または4の有害事象(Nivolumab併用群vs.プラセボ併用群)は、57% vs. 49%で認められ、主なgrade 3以上の有害事象は好中球数減少(20% vs. 16%)、血小板数減少(9% vs. 9%)、食欲低下(8% vs. 6%)であった。治療中止を要する有害事象は、Nivolumab併用群では6%、プラセボ併用群では5%に認められ、間質性肺疾患が最も多く両群ともに3例認められた(1%未満vs. 1%未満)。免疫関連有害事象が疑われる毒性の多くはgrade 2以下であったが、grade 3以上はNivolumab併用群において18%の頻度で認められ、消化管毒性が最多であった(5.8%)。

 Nivolumab併用化学療法は化学療法と比較し有意なPFSの延長を示した。CheckMate 649試験8)においては、PD-L1 CPS≧5およびCPS≧1の集団でNivolumab+化学療法群が化学療法群と比較してOSの有意な改善を認めたが、本試験ではOSの有意な改善を認めなかった。両試験結果の違いは、医療状況の相違に起因している可能性がある。後治療を受けた症例の割合が大幅に異なることがOSの改善効果へ寄与した可能性が示唆された(本試験66%、CheckMate 649試験39%)。本試験では多くの症例が後治療を受けており、特に日本人において顕著に後治療を施行されていた。

 またPembrolizumab併用化学療法を化学療法と比較した第III相試験であるKEYNOTE-062試験9)においては、PD-L1 CPS≧10およびCPS≧1の集団でPembrolizumab+化学療法群が化学療法群と比較して優越性を示すことができなかった。本試験やCheckMate 649試験と同試験の相違点としては併用化学療法の白金製剤がCisplatinかOxaliplatinかの違いが関与している可能性がある。しかし他癌種のCisplatin併用レジメンでも免疫チェックポイント阻害剤は有効性を示しており、CisplatinとOxaliplatinの違いが効果に影響するのかはさらなる検討が必要である。

 本試験における重大なlimitationとして、PD-L1に関してTPSでの評価が採用され、CPSに関して層別化なされていないことが挙げられる。ICI+化学療法のOSの有効性がCPS発現率の高い集団において有意であったと他の試験結果では示されている。バイオマーカー解明に関しては今後もさらなる検討が望まれる。


日本語要約原稿作成:関西医科大学 がんセンター 生駒 龍興



監訳者コメント:
化学療法+NivolumabはHER2陰性切除不能進行再発胃癌における1次治療の標準治療

 本研究は日本、韓国、台湾で行われた免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の有効性を検証した第III相試験である。主要評価項目であるPFSは有意な改善を認め、全世界で行われたCheckMate 649試験の結果と合わせ、化学療法+NivolumabがHER2陰性切除不能進行再発胃癌における1次治療の標準治療となった。本研究ではOSにおいては有意な改善を認めなかったが、本研究におけるOSは両群とも17ヵ月を超えており、地域性により後治療への移行率がアジアで高いこと、特に日本ではNivolumabの3次治療における投与を含めた後治療への移行率が高いことが影響していると考えられた。

 本研究はCheckMate 649試験と異なりPD-L1発現の評価がTPSによって行われ、治療効果との相関は認められなかった。CheckMate 649試験ではCPSによるPD-L1発現の評価が行われ、CPSが低下すると奏効率は変わらないもののOSとPFSにおけるNivolumabの上乗せ効果が低下する傾向が示されている。Nivolumab併用のための確固たるバイオマーカーはいまだないのが現状で、今後の解析が待たれる。

 胃癌においては1次治療において新たなバイオマーカーの研究も進んでいる。高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する胃癌に対してはNivolumabとIpilimumabの併用療法の有効性を探索する第II相試験が本邦で進行中である10)。またClaudin 18.2陽性例に対するZolbetuximab併用化学療法やFGFR2b過剰発現例に対するBemarituzumab併用化学療法の有用性を検証する第III相試験も現在進行中である11)。両第III相試験ではreference armとなる治療は化学療法単独であり、これらの試験で両薬剤が有効性を認めた場合も含め、今後切除不能進行再発胃癌ではバイオマーカーごとにNivolumabを含めた分子標的薬の使い分けができる時代の到来が期待される。

監訳・コメント:関西医科大学 がんセンター 松本 俊彦

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