ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜

監修中島 貴子 先生聖マリアンナ医科大学
臨床腫瘍学

日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。

CASE2

2017年6月開催

肝多発転移・肺転移を有する
直腸癌に対する治療戦略

  • 設樂 紘平 先生設樂 紘平 先生
    国立がん研究センター
    東病院
    消化管内科
  • 沖 英次 先生沖 英次 先生
    九州大学大学院
    消化器・総合外科
  • 山ア 健太郎 先生山ア 健太郎 先生
    静岡県立
    静岡がんセンター
    消化器内科
  • 結城 敏志 先生結城 敏志 先生
    北海道大学大学院
    医学研究科内科学講座
    消化器内科学分野

ディスカッション 2 切除後の後治療の選択肢Discussion 2

病変を全て切除した後に化学療法を行うのか?

設樂本症例は術後の経過は順調で、最後の手術から1ヵ月程度で内科に戻ってきました。この症例には術後補助化学療法を行うべきでしょうか。行うとしたらどのようなレジメンがよいでしょうか。

山ア先生

山アFOLFOX+Panitumumab療法を8サイクル行った後ですからね。FOLFOX療法を4サイクル追加すると思います。

設樂抗EGFR抗体は併用しないのですか。

山アおそらく併用しないと思います。

結城この症例は、切除術を行う間、6ヵ月間も化学療法を行わずに来ていますから、そのまま経過観察するのがよいと思います。

私も結城先生の意見に賛成です。半年間、ケモフリーで腫瘍がコントロールできていたわけですから。もしも化学療法を行うとしたらFOLFOX療法です。

結城私も化学療法を行うとしたらFOLFOX療法で、抗EGFR抗体薬は併用しません。

設樂この症例は、実は術前の化学療法でgrade 2相当の痺れが出て、ケモフリーで半年が経過しても同程度で残存しており、皮膚毒性も出現していたため、抗EGFR抗体薬だけでなく、Oxaliplatinも使用せずに、FL療法を行いました。強いエビデンスはありませんが、EPOC試験10)において手術前後で半年を目安に治療が行われていることを念頭においてそのようにご相談しました。

山アFL療法は何サイクル行ったのでしょうか。

設樂4サイクルです。合計で12サイクル(術前後の治療期間が計半年)までは行うことを予定しました。

FL療法は選択肢としてあり得ると思います。

結城同感です。私も同じ選択をするかもしれません。

再発の肝転移例:化学療法後に肝切除を行った場合、さらに術後化学療法は行うのか

山ア例えば、再発の肝転移例に対して化学療法を行い肝切除した場合、術後の補助化学療法は行っていますでしょうか。EPOC試験10)のデータから、術前術後の化学療法が無意味と判断するのであれば無治療だと思いますし、術前化学療法が有効であったため手術できたと考えれば術後は計6ヵ月施行することを原則とするとも考えられます。

肝転移が1個だけだったらそもそも化学療法はしませんよね。再発に化学療法を行ったということは複数個の肝転移があるという想定になりますので、私は術後も化学療法(FOLFOX療法)を行います。

結城私もFOLFOX療法を、合計で12サイクルくらいは実施します。

設樂ケースバイケースではないでしょうか。例えば、初回診断時に治癒切除かつstage 2でadjuvantが入っていない場合で肝転移が再発し、今回と同じような肝転移であれば化学療法後に切除して、adjuvantをいれます。

賛成です。仮に肝転移が1個なら化学療法なしで切除してadjuvantをいれると思います。ただし、明確なエビデンスがないため、行わない施設や担当医もいると思います。ちなみにJCOGでadjuvant FOLFOXの意義を検討する試験が進行中です。

設樂先生方、活発な討論をありがとうございました。肝臓や肺に遠隔転移を有する直腸癌患者の治療の考え方や留意点が明らかになったと思います。

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