WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE1 胃癌 2004年7月開催

ディスカッション 2

dose downはどのくらいを目安に

佐藤:dose downという言葉が出ましたけれども、どれ位がdose downの目安なのでしょう。dose downには、はっきりとした基準のようなものがあるわけではないですから。ガイドライン上も適宜という形でしか表現できないのが実状です。いわゆる経験論的なところで全部行われているわけです。それに対して先生方のご意見はいかがでしょうか。

大村:この患者さんは肝不全の二〜三歩手前であることに注目すべきです。通常の投与量では肝毒性が軽微な薬剤であっても、大半の薬剤は肝で解毒されるため、肝障害を認める症例では肝毒性が強く出る可能性があります。CPT-11がその代表でしょう。肝障害を勘案したCPT-11のdose downについては、2002年のJCOに論文が掲載されています。血清総ビリルビン値が正常上限の1.5〜3.0倍の症例は、tri weeklyで使用するCPT-11を200mg/m2にするべきとのことでした。ただし、根拠は特に示されていなかったと思います。この症例にもしCPT-11を使うとしたら、では半量程度にdose downするのが適当ということになります。

坂本:GOT、GPTが正常値の5倍以上ですからgrade 3です。薬剤のtoxic effectが出てくる場合、それに準じて1レベルあるいは2レベルのdose downをしますが、急に減量するのではなく、臨床試験の領域でgrade 3が出たときに、どれだけのdoseでやるか、CPTでも5-FUでもだいたい基準があります。私でしたら、例えば5-FU 400〜500mg/m2+LV 250mg/m2を、とにかく大急ぎでやってみてその反応性を見たいと思います。CPT-11については、瀧内先生がおっしゃったように、単剤の方がいいかもしれません。併用投与を行うにはこの症例についていえば相当恐ろしい状況だと思います。ずいぶん昔のことですが、併用療法ではないのですが、こういったfar advancedの症例治療の話があります。同じように治療開始以前から肝臓に広範な転移がみられていたのですが、5-FU の持続静注が著効して、胃の原発巣の腫瘍がどんどん小さくなってきました。これはいけるかなと思われたとたんに、腫瘍が劇的に縮小した胃の癌部から出血がおこり、すぐに気づいて、輸血をしてカバーされたのですが、その影響のためか、肝転移巣の憎悪のためかはわかりませんが、その後肝不全となり、結果的にTRDになってしまったケースがあります。このように進行癌に対する強力な化学療法は薄氷を踏むような治療になる可能性もありますから、まず少量のdoseで治療を開始するか、もしくは教科書的に通常用量で投与を開始する場合にはかなり慎重に経過を観察するとともに、いつでも投与量を減量できるよう準備しておく必要があります。

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