久保田:もし術前検査でCT、USで、N0であっても、α-FP産生だったら、術前補助化学療法の方が良かったかもしれませんね。中分化型腺癌でα-FP産生の腫瘍は病理学的に特徴的な像があるといいます。病理医が標本を見てα-FP産生腫瘍だと判断してくれることがあります。α-FP産生はもともと非常に予後が悪いですし、特に手術を契機に悪性化したという可能性もあります。α-FP産生で画像でN0であればその時点で、術前補助化学療法を適用する考え方もあったと考えますね。
佐藤:術前にはα-FPは必ず測った方がよいだろうということですね。
久保田:保険で認められていますし、特に治療上非常に重要な情報だと思いますね。熟練した病理医が見れば、「これはα-FP産生である」というのが予想できます。組織を染めて判断し、すぐ血清を測るという方針が出ます。もともと血清は必ずルーチンで測るようにしています。
坂本:私がここで一言言いたいのは、治癒切除が行われた症例で、S-1が当然のように補助化学療法としてそこらじゅうで使われているということ自体が、非常に不思議だと思っていることです。
久保田:S-1は、9割方の例で術後補助化学療法として投与されているのが実情です。ガイドラインでは臨床研究なのですが。
坂本:なぜ皆さんS-1を術後補助化学療法に平気で使われるのでしょうか。例えば、大腸癌に対するIFL(LV/5-FU+CPT-11)は、進行再発症例には効果が認められましたが、術後補助化学療法では効果がないというEBMによる結果が出ています(ASCO2004 #3500)。S-1が進行再発で高い奏効率が報告されたという報告だけで、現時点ではevidenceのない術後補助化学療法にまで全く無批判に平気に使われるのはいかがと思っています。evidenceが全くないのにS-1を多くの医師がfirst lineで使っている、これはどうしてなんでしょうね。
佐藤:先生は何を使っておられるのですか。
坂本:術後補助化学療法でしたらコンプライアンスが良いUFTです。
大村:僕も術後補助化学療法にはUFTを使います。S-1は再発した時に使うために取っておきたいと思うのです。UFT投与期間は、1年ないし2年です。
佐藤:胃癌においては、まだ術後補助化学療法のevidenceが大腸癌のようにはでていません。その辺は、次のcaseカンファレンスでまた話をいただけると、僕らは大変勉強になります。