WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE1 胃癌 2004年7月開催

私が考える治療方針

坂本先生

患者の希望があり、PSの著しい低下がなければ、CPT-11併用のLV/5-FUの肝動注(HAI)

LV(全身投与)を併用した5-FU(肝動注)の持続投与にCPT-11を加えられれば加えます。この進行の速さでは、思い切って治療しない限り難しい。逆に言えば、強いtoxicityやtreatment related death(TRD)が起こるほどの治療はやっていけないのではないかと思っています。例えばCPT-11を使う前にUGT1A1(JCO vol.22(8):1439-1446,2004)などを測定して、安全に使えるかどうかを検討してみることも必要です。約1ヵ月ぐらい使って効かないようなら、すぐにtaxane、それもdoseを下げたweekly taxaneに替えるというのが私の見解です。

坂本先生 写真

久保田先生

化学療法は行わない

半年以内で再発と、期間が短いですね。α-FPが高く、α-FP産生腫瘍の特徴である中分化型腺癌で、肝の腫瘍が12cmで触診可能、さらに貧血があり、PSが2、要するに、閉塞以外の肝機能障害がすべて検査値として出ている、極めて予後不良という例です。今回は化学療法のディスカッションをしなければいけないところですが、私は、化学療法なしでbest supportive care(BSC)という選択をします。

久保田先生 写真

大村先生

LV/5-FUあるいはtaxane、または化学療法なし

ご本人とご家族が希望されるのでしたら、まずLV/5-FUを使います。増殖が極めて早い腫瘍では、腫瘍組織内の葉酸は減少すると考えられます。S-1のようなDIFが効かなかったのは、そのためと推測されます。したがってLV/5-FUという選択肢は残っていると思います。肝転移による肝障害が進行していますので、肝動注を併用する勇気はありません。もうひとつの選択肢はtaxaneです。CPT-11は肝障害を認める症例には控えたいです。CPT-11の毒性は、肝障害のある人では発現頻度が高くなる可能性があると2002年にレポート(Raymond E. et al.JCO vol.20(21):4303-4312,2002)されました。また、ご本人か最も近い親族のどちらかが少しでも化学療法に消極的であったらBSCにします。どれが正解なのかは私には分かりません。

大村先生 写真

瀧内先生

化学療法は行わない

僕の結論は、久保田先生と同じBSCです。S-1、CDDPと、一応この症例で使うべき薬剤は使われ、どちらも無効との結果が出ています。残る薬剤としてCPT-11を考えましたが、JCOのレポート(vol.22(8):1439-1446,2004)にもありましたが、肝機能が非常に悪化している状態では、毒性が強く出る可能性が高いと思います。従って良い治療オプションがないというのが現状ですね。私自身はBSCがベストチョイスだと思います。しかし、患者さんの希望が強いことを考慮すれば、患者家族の同意のもとであればCPT-11を単剤で量を減らした治療を試すかもしれない。そういったレベルの症例だと僕は思います。

瀧内先生 写真
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