WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE 10 食道癌 2005年11月開催

CASE10 写真

ディスカッション 1

まずは放射線化学療法を

大村:胸部下部食道(Lt)から腹部食道(Ae)にかけての胸部食道癌で、Barrett食道から発生したと考えられます。しかも、Virchowリンパ節転移があるということはN4ですので、私はまず放射線化学療法を行います。扁平上皮癌の場合にはCDDP/5-FUがゴールデンスタンダードですが、本症例はadenocarcinomaですので、組織学的に考えて、LV/5-FUに放射線療法を併用するのが効果的だと思います。Mayo regimenに放射線療法を併用した補助療法のデータが報告されていますし、直腸の腺癌に対するLV/5-FUと放射線療法の併用効果も報告されています。放射線療法では50〜60Gyを照射し、その反応をみながら手術に踏み切ります。

瀧内:この症例はstage IVaになると思いますが、LV/5-FUと放射線療法により IVa から III あるいは II にstageが下がれば、手術を施行するということですね。CDDPを使わないのは、75歳ということで、ご高齢である点を考慮されたのでしょうか。

大村:年齢よりも、放射線療法とCDDP/5-FUの併用効果が広く認められているのは食道の扁平上皮癌であって、腺癌についてはevidenceがないと考えたからです。

瀧内:佐藤先生、内科医としては、どのような治療法を選択されますか。

佐藤:ご高齢であることと、進行食道癌の腺癌であることの2つがポイントです。T3N4M0で腹腔動脈周囲のリンパ節転移がありますからstage IVaです。日本では食道癌の90%以上が扁平上皮癌で、腺癌は1〜2%と少なく、日本での治療データはほとんどありません。ただ、海外では腺癌は多く、化学療法としてpaclitaxel(TXL)やdocetaxel(TXT)などのtaxane系薬剤の効果が報告されています。しかし、高齢で、食事が通りにくいという状況から、やはり私も放射線化学療法を考えます。ある程度regimenが完成され、認知されているCDDP/5-FUを放射線療法と併用します。JCOG9516 studyで用いられたregimenでよいと思います。CRを目標としますが、場合によっては手術も考慮します。反応がなければ、second line治療に移ることを考えます

瀧内:この場合、化学療法単独という選択肢はありませんか。

佐藤:狭窄症状の改善を第一義に考えると、原発巣に直接効くのは放射線療法です。Nedaplatinなど原発巣に奏効率の高い薬剤もあるのですが、放射線療法ほどの抗腫瘍効果はなかなか実感できません。これは自らの経験ですので、対象のほとんどは扁平上皮癌ではありますが、この点を考えると、放射線療法は外せません。

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ディスカッション 2
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