大村:Best supportive careを勧める先生はおられず、化学療法への反応をみて手術を行うか判断する、またはまず手術を行いその後に化学療法を行うかの2つに意見が分かれました。久保田先生は原発巣から検体を得て、抗癌剤感受性試験の結果をみて選択するというご意見ですが、佐藤先生はどのregimenを選択されますか。
佐藤:FOLFOXやFOLFIRIに代表される、LV/5-FUベースにL-OHPあるいはCPT-11を加えたregimenを選択します。全身状態がよければどちらでもよいのですが、全身状態が悪ければ忍容性の高いFOLFOXを選びます。FOLFIRIは、毒性による減量でCPT-11を十分量投与できていないケースも多々あるのではないかと思います。最近は経口剤と併用する試験も報告されていますので、CPT-11を必要量投与することができるのであれば、FOLFIRIにこだわる必要はないと考えています。
大村:多くの患者さんが外来治療を強く望まれますが、そのような患者さんにはポートの留置なども考慮されますか。
佐藤:はい。それでmFOLFOX 6という選択肢もあります。ただ、外来治療だと何日も通院することになり、入院とはまた別の煩わしさが生じてしまいます。現在は包括医療評価制度(DPC)のため入院治療は難しいのですが、2泊の入院で済むのであれば、そのほうが患者さんにとっては楽な場合もあるようです。
大村:確かにDPCを導入している場合、入院でmFOLFOX 6を行うと費用は持ち出しになってしまいます。2日後の注射針の抜去を近医に依頼する方法もあると思います。
坂本:私も、FOLFOXあるいはFOLFIRIのどちらでもよいと思います。最近開催されたASCO GI Cancer Symposium 2006では、FOLFOXIRIという3剤併用投与試験が報告され、FOLFIRIよりも有意に優れる結果が示されています(ASCO GI Cancer Symposium 2006、#227)
大村:LV/5-FU、L-OHP、CPT-11の3剤を一度に投与するわけですね。
坂本:そうです。大腸癌は肝転移の頻度が高いので、Dr. Tournigandが言うようにFOLFOXをfirst lineに、FOLFIRIをsecond lineに、と連続して実施する時間があるかどうかはわかりません。それであれば、一度に併用投与するのも1つの方法ではないかと考えます。
久保田: しかし、保険診療ということを考えると、日本にはまだそれ以外の選択肢がありませんから、3剤を使いきってしまうと後のカードがなくなってしまいます。経済的に余裕があれば、自由診療でbevacizumabやcetuximabも選択肢として考えられますが。
佐藤:私はCPT-11の投与量が問題になると思います。CPT-11は、十分な量を投与しないと抗腫瘍効果が得られません。
坂本:確かに、CPT-11は十分量を投与しないと治療の意味がありませんね。
佐藤:副作用発現による減量を回避してCPT-11の効果を十分に発揮させるためには、L-OHP等他剤を併用して副作用がいろいろと重なってしまうのはよくないと思います。
大村:久保田先生は、抗癌剤の感受性試験の結果をみてから選択するというご意見でしたが、いかがですか。
久保田: 感受性試験を行わないのであれば、first lineはFOLFOXです。FOLFOXはthird、fourth lineではほとんど効果がありませんから、早い段階で使いたいですね。
大村:FOLFOX 6ですか。
久保田: 大学では外来でmFOLFOX 6を、出張病院では2泊入院してもらい、FOLFOX 4を行っています。患者さんにとっては入院すればFOLFOX 4でも、それほど負担にはならないと思います。
佐藤:2泊であれば、入院でもそれほど大変ではなさそうですね。
大村:入院だと急変時に対応しやすいというメリットもあります。それを考えると、DPCが導入されている病院では経営上mFOLFOX 6を入院で施行しにくいということは、1つの問題だと思います。