瀧内:今回は胃GISTの症例を想定しました。Imatinibが原発巣、肝転移巣ともに奏効しているが、副作用もみられる胃GISTです。このような症例に遭遇した場合、この時点での治療をどう判断するか、ご意見をお聞きかせください。
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佐藤:本症例の場合、imatinibが奏効しているので、副作用にいかに対処しながらこの薬剤を継続投与するかという問題になります。グレード3の白血球減少と貧血がみられますが、貧血がimatinibによるものなのか、それとも腫瘍から出血があるのかで対応の仕方が変わります。腫瘍出血と推測されるときは、必要に応じて輸血や腸管安静などの処置をします。原則的にはimatinibによる白血球、血小板減少はグレード3以上であれば原則休薬2週間以内で、グレード2以下に回復した場合、400r/日から投与を再開し、2週間以内に未回復であれば、300r/日で再開します。
やはり眼瞼と下腿のグレード2の浮腫および体幹のグレード2の皮疹は大きな問題となります。通常、imatinibによるグレード 2の皮疹は局所的な紅斑であり、経口抗ヒスタミン薬か外用ステロイド剤で対処できると思います。浮腫についても、グレード2であれば治療は継続可能と考えます。本症例では、血液毒性が規定値まで回復し、浮腫、皮疹は消失するかグレード1になるまで待ってから400mg/日で治療を再開します。再開後、同様の副作用が早期に発現するようであれば再休薬し、次回は300mg/日に減量します。ただし、その後は状況に応じて、300r/日から400r/日への増量もあり得ます。
久保田:私も副作用が生じた場合は休薬します。再開の基準も、佐藤先生とほぼ同様です。現在、GISTの治療に対して日本で承認されている薬剤はimatinibだけですので、実地臨床ではやはり休薬という選択になると思います。しかし、imatinibを300mg/日に減量した場合の効果に関するエビデンスはないので、この時点で減量という選択肢は考慮しません。
副作用から回復したら、もう一度同じスケジュールで治療を再開しますが、同じような副作用が再び起こるようであれば、次の治療に移行することを考え、臨床試験への登録を考慮します。このような症例の場合、現時点ではimatinibのほかに有効な薬剤がないので、新規薬剤の臨床試験への参加を勧めるのが妥当と考えます。
大村:原発巣および肝転移巣ともに30%以上の縮小ということは、imatinibがかなり奏効しているわけです。したがって、imatinibの減量も、中止も選択肢としては考えません。問題は副作用です。Hb 9.0g/dLで輸血はしておらず、出血も持続していことから、このグレード3の貧血は腫瘍からの出血によるものと解釈してよいと思います。グレード2の浮腫と皮疹も減量、中止の理由になるものではありません。結局、問題はグレード3の白血球減少ですが、発熱は伴っていませんので、G-CSF併用下に支持療法を行って回復を待ち、imatinib 400mg/日で治療を再開します。
坂本:このような症例では医師の間でも比較的意見が一致しており、異なる見解はあまりないと思います。私は奏効期間の延長を重視したいと考えますが、大村先生がおっしゃるように、休薬してG-CSF併用下に支持療法を行い、輸血も行います。その間は、佐藤先生がおっしゃるようにガイドラインに則ってimatinibは休薬するしかありません。そして、副作用から回復したら即座に治療を再開します。
瀧内:だいたい先生方のご意見は一致しているようですね。副作用の回復を待って、再度imatinib 400mg/日で治療を再開するということですね。