瀧内: 例えば、肝転移巣がCRとなり、胃の原発巣も画像上は切除可能となる症例があります。この場合、手術を行いますか、それともimatinibによる薬物療法を継続しますか。
坂本:GISTに関しては、切除が可能となったからといって手術を行っても、薬物療法を中止すれば再発するとの印象があります。したがって、手術は行わず、患者さんが了解する限り薬物療法を継続することをお勧めしたいと思います。
大村:肝転移巣が消失して、胃の原発巣が良性の潰瘍のようになって残っているのであれば、切除したいと考えます。この症例の場合、問題は心臓でしょう。心臓が十分に手術に耐えられるようであれば、インフォームドコンセントをとって手術を行いたいと思います。
瀧内: 久保田先生は、術前補助化学療法に奏効した症例、肝転移巣がCRとなった症例にどう対処されますか。
久保田:術前補助化学療法としてのimatinibの臨床試験が進行中ですので、その結果を待つというのがガイドラインの立場ですが、実地臨床としてはCRの場合は同じ治療法を継続し、PRの場合は手術を検討します。
佐藤:現状では、おそらくCRは得られないので、私は手術を考慮します。切除したのち、再度imatinibの投与を続けるという治療戦略です。
久保田:私はPET判定の完全奏効(metabolic CR)も検討に加えたいと思います。CTでは腫瘍が残存しているが、PETではmetabolismが消失するという考え方です。しかし、日本ではmetabolic CRは承認されていません。そこで、今回策定したガイドラインには、「日本の保険では承認されていない」と記載したのですが、CRとなった場合はどうするかという疑問が残っています。
瀧内: 壊死した腫瘍はCT画像上で残存する場合がよくあるのですが、そのlow density areaはactiveなのかinactiveなのかがわかりにくい。現状ではCTでフォローアップする施設が多いと思いますが、PETがある施設ではPETによるフォローアップも行うべきでしょう。
坂本:GISTは全身性の疾患ですし、この症例の場合は切除が有効な手段かは疑問ですが……。
瀧内: いろいろなご意見をありがとうございました。本日の結論としては、imatinibしかない現状ではimatinibを大切に使っていくしかなく、またimatinibに抵抗性となった場合には、sunitinibをはじめとした新規薬剤の早期の承認が待たれるということですね。