WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE 15 大腸癌におけるFOLFOX regimenの神経毒性 2007年4月開催

ディスカッション 1

神経毒性に対しては、L-OHPのstop and go methodが基本

大村:今回のメインテーマは、神経毒性です。L-OHPが登場するまで、化学療法施行時にこれほど神経毒性が問題になったことはありませんでした。神経毒性には、冷たいものに触れると口の周りや手指に電撃感を感じる冷感などの感覚異常と、投薬サイクルを重ねるにつれて出てくる蓄積性の機能障害があります。患者さんの不快感は、どちらかというと感覚異常のほうが大きいようです。またこの症例では、感覚異常の持続時間が延長してきています。なお、本人には治療を中断する気はなく、効果が現れていることを喜んでいます。しかしPS、ADLは低下してきているという設定です。

佐藤:奏効しているということなので、治療方針としては継続の方向でよいと思います。神経毒性については、OPTIMOX 1 trialの報告がありますので、ある程度のところでL-OHPを中断し、ベースとなるsLV5FU2レジメで治療を継続します。問題はL-OHP中断のタイミングですが、サイクルが重なるほど回復が遅くなるというデータがあります。ある程度の回復が見込めるタイミングのポイントとして、癌研有明病院の水沼信之先生は「自分のボタンがかけにくくなってきた」時点を挙げています。「ボタンがかけにくくなっていませんか」という質問は、痺れが日常生活に影響を及ぼしているか否かを測るのにとてもよい質問だと思います。そして、患者さんはときに「問題ない」と表現して、ぎりぎりまで我慢してしまいますので、こうした質問を医療者側から積極的にして、患者さんの状況を把握する必要があります。私は日常臨床では、ボタンがかけにくくなってきた時点でL-OHPの中断を検討します。ですから、この症例も4サイクル目でL-OHPを中断し、しばらくsLV5FU2で経過をみると思います。

久保田: OPTIMOX 1の報告を最初に聞いた時には「実地臨床でよく行われていることだな」との感想を持ちました。日本ではIFL(irinotecan、5-FU、LV)が使用されているなかでのFOLFOX 4としてのoxaliplatinの承認でしたので、欧米に比べてFOLFIRIよりもFOLFOXが多用されている傾向があります。その結果、これまで経験の少なかった神経毒性が臨床上大きな問題を占めるようになってきました。FOLFOXで始まりFOLFIRIに移行するのは時期尚早、しかし神経毒性が……という時に、evidenceのあるOPTIMOX 1に従ってsLV2FU5でつなぐのは現実的かつ臨床上もメリットのあることと思います。 

大村:この症例は、後の問診で4サイクル付近から機能障害が出現していたことが判明したという設定です。その時点で詳しい問診をすれば、ボタンをかけにくいことを聴取することができたと考えられます。本来ならばそこでL-OHPを中断するべきであったと考えられます。

佐藤:できれば、6〜8サイクル続けたいところなのですが、実臨床の現場では、あまり無理な状況が長く続いてしまうと、治療をすべて拒否されてしまうことがあります。ですから、あまり無理をせずに適度に休薬期間を長くする、あるいはL-OHPを中断し、sLV5FU2は継続して神経毒性が改善したらL-OHPを再導入する、もしくはPRが継続されるのであれば、そのままsLV5FU2で経過をみるなど、状況に応じて判断します。

瀧内:私もほとんど同じ意見です。実臨床では、基本的に機能障害が出始めた時点でL-OHPを中断しています。機能障害は蓄積毒性であり個人差はあると思いますが、ある程度L-OHPの投与を継続すれば必発する毒性ですので、その点に留意して十分な問診を行うことがきわめて重要となります。もし4サイクル目で症状が出てきたのであれば、5サイクル目からsLV5FU2 regimenに変更するのが妥当であると考えます。L-OHPについては、幸いこの症例は早期にPR入りしているということですから、腫瘍マーカーは残念ながら正常値ですが、定期的に画像診断あるいは血液検査でフォローし、神経毒性が軽減していれば再導入を考えてもよいと思います。

大村:神経毒性としては感覚異常が目立ちますが、L-OHPをオフにする理由としては機能障害のほうが重要だということで一致しましたね。

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ディスカッション 2
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