大村:FOLFOXからFOLFIRIへの移行は考えられませんか。
佐藤:それも選択肢の1つではあります。ただ、FOLFOXの神経毒性は、FOLFIRIに移行しても残ることが実際には多いと思います。FOLFIRIからFOLFOXか、あるいはFOLFOXからFOLFIRIかの議論でもやはり神経毒性の持続時間が問題になっていましたが、実際にはFOLFOXからFOLFIRIのほうが神経毒性の持続期間が長くなるように思います。ですから、神経毒性の持続時間が問題なのであれば、FOLFIRIに移行したからといって状況がすぐに改善するとは考えづらいと思います。PRに入って安定しているのであれば、L-OHPをオフしてsLV5FU2にするだけでいいと思います。
瀧内:この症例は悪性度が高いがゆえに奏効した可能性もあるとは思いますが、抗腫瘍効果の点からいえば、L-OHPはmodulatorであり、effecterは5-FUですので、sLV5FU2 regimenが一定の効果を示すものと予測します。ただし、ある程度の機能障害を現すまでに蓄積した神経毒性は、sLV5FU2に変更してもなかなか症状が消失しません。これは、ある程度のサイクル数を重ねた症例にその傾向が強く、そうした症例では当然手足症候群を合併していることが多くあります。グレード1程度の軽度の手足症候群ですが、その手足症候群による障害と末梢神経障害がかみ合わさってしまい、レジメを変更しても症状が消失しないのではないかと考えています。むしろ悪化したと感じられる患者さんもいるくらいです。
坂本:Dr. Tournigandは、FOLFIRI→FOLFOXのほうが患者さんの苦痛やトラブルが少なく、完遂率が高いといっています。現在、われわれはFOLFIRI→FOLFOX、FOLFOX→FOLFIRIなどのレジメンについてのphaseIII試験を行っていますが、同様の感触を得ています。私が行うとすればFOLFIRI→FOLFOXがメインのレジメンであり、その逆は考えないと思います。
瀧内:L-OHPは、当初は扱いやすい薬剤という印象でした。現在、実臨床では大腸癌に対する治療の7割方がFOLFOXで行われているというアンケート結果もありますが、マイナス面が浮き彫りになってきたことで、今後またFOLFIRIに戻っていく可能性は十分にあると思います。
大村:昨年(2006年)、海外のドクターに、日本の腫瘍医の8割が切除不能転移再発大腸癌に対してFOLFOXをfirst lineに選ぶということに対して、なぜFOLFIRIでないのか、これほどFOLFOXに傾く理由が我々には理解できないと言われました。
坂本:日本でFOLFOXが実臨床で使われ始めたのが2005年4月ですから、そろそろ日本でもかなりの使用経験が蓄積されてきたものと思いますが、残念ながら、欧米より何年か以上遅れているのが実情です。