無理をせずにL-OHPを中断し、神経毒性が軽減したら再導入
奏効が認められているため、基本的には治療を継続します。機能障害については、十分な問診を行い、「ボタンがかけにくくなった」など日常生活への影響が認められた時点でL-OHPを中断し、sLV5FU2 regimenで治療を継続します。あまり無理な状況を続けてしまうと、患者さんが治療すべてを拒否してしまうことがあります。抗腫瘍効果と神経毒性の双方を勘案してL-OHP再導入の時期を見計らいます。
sLV5FU2 regimenに変更し、L-OHP再導入のために定期的なフォローを
早期に肝転移、肺転移を来している悪性度の高い症例であり、LDHも高いですから、完全休薬期間を設けるには少しリスクが高いと考えます。L-OHPについては、定期的に画像診断あるいは血液検査でフォローし、神経毒性が軽減していれば再導入を考えてもよいと思います。
L-OHPのstop and go methodだけでなく、副作用予防薬の併用を考慮
L-OHPによる機能障害に対してはstop and go methodが最もプライオリティが高いと考えますが、それだけに頼るのではなく、神経毒性を抑制する、いわゆるprophylaxisの併用が必要です。カルシウム/マグネシウム、グルタミン酸、N -アセチルシステインなどが有意にL-OHPの神経毒性を抑制すると報告されています。
L-OHPのstop and go methodとしてOPTIMOX 1および2の成績を参照
術後早期に肝・肺転移をきたしており、悪性度の高い疾患と考えられます。mFOLOFOX6で高度な神経毒性をきたしているものの、PRが得られていますので、mFOLFOX6を一時中止し(1)sLV5FU2で維持するか(OPTIMOX 1)、(2)完全休薬にするか(OPTIMOX 2)を検討したいと思います。幸いsLV5FU2による毒性は低いようですので、OSが良好であった(1)OPTIMOX 1を選択し、sLV5FU2を継続してmFOLFOX6再導入の時期を待機したいと思います。現在、l-OHP休薬期間中に従来型の抗がん剤投与を中止しbevacizumabによる維持療法が検討されているとのことですが、本邦でもbevacizumabが承認されたので、今後はそのような検討も必要と思います。
sLV5FU2のみを継続し機能障害が消失しなければFOLFIRIへ変更
L-OHPによる機能障害が出現していたことが判明しましたので、sLV5FU2のみを継続してL-OHPを休薬します。OPTIMOX 2の成績から、完全休薬とはしません。再発巣の増大は時間の問題です。また、sLV5FU2の腫瘍制御効果はmFOLFOX6に劣ると考えられますので、L-OHP休薬後は2ヵ月に1回の腹部CT検査でサーベイランスを行います。RECISTでPDと判定された時点で機能障害が消失していれば、L-OHPを再導入します。しかし、その時に機能障害が残存していれば、L-OHPの再使用を断念してFOLFIRIへ変更します。この症例では、機能障害の察知が遅れました。そのため、L-OHP休薬中に機能障害の回復をみない可能性がより高いと思います。