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CASE 15 大腸癌におけるFOLFOX regimenの神経毒性 2007年4月開催

ディスカッション 2

PSが良好で多臓器転移がなければ、完全休薬も考慮

瀧内:OPTIMOX 2 trialでは、完全休薬期間(chemotherapy free interval:CFI)が設定され、PSが良好でLDHが低く、多臓器転移がない症例でベネフィットが認められたと報告されています。この症例は、PSは良好ですが、術後早期に肝転移、肺転移を来していることから悪性度が高いと推察され、またLDHも少し高いことなどから、CFIを設けるには少しリスクがあると考えます。しかし、もう少し悪性度が低ければ、CFIの導入を検討したと思います。これまでの何例かの経験から、例えば肝転移だけの症例で、PSも良好でありLDH等の値も高くないということであれば、完全なCFIを設けることで良好な結果を得た場合もあります。ただし、十分なインフォームド・コンセントが必要ですし、いつ再導入するかという判断がきわめて重要になります。

大村:確かに、CFIではQOLがきわめて良好になりますが、OPTIMOX 2の成績をみますと、OPTIMOX 1と比べてOSが短縮しています。

瀧内:そうですね。実際有意な差は認められなかったものの、CFIの概念は実臨床では受け入れられないと思います。一方でOPTIMOX 1 trialで最も問題視されたのは、再導入率に大きな施設間格差があったことです。再導入できていない施設ではOSが短縮しており、再導入率が明らかにOSに影響を及ぼしているということで、腫瘍内科医の力量が問われた結果になっています。

大村:つまり、再導入を適切に行えるのであれば、CFIを設定することも容認される可能性があるということですね。

瀧内:ただし、それはあくまでOPTIMOX 2のサブ解析から得られた一定の症例に対してですから、実際の臨床で採り入れることは難しいでしょうね。

久保田:OPTIMOX 2のOSがOPTIMOX 1よりも短いということは、大村先生がご指摘のとおりです。しかし実際の臨床現場、特に外来化学療法で状態不良な症例では、白血球3,000、血小板10万程度で化学療法をオフにすることが多いと思います。そのほうが患者さんのQOLが向上することも事実です。瀧内先生のご指摘のごとくFOLFOX再導入の時期の選択が重要ですが、一度休薬したからといってあきらめずに、再導入の機会を窺うのが適切でしょう。

坂本:L-OHPによる神経障害に対しては、私もやはりstop and go methodが最もプライオリティが高いと考えます。いずれにしても、再導入のタイミングが問題になりますが、OPTIMOX 2では、RECIST基準に基づいてPDを判定するのではなく、base line recurrence、つまり一番最初にL-OHPを使い始めたときのベースラインにまで戻ってから再導入していますね。

大村:それでは、RECISTでPDと判定されるよりも明らかに再導入が遅くなりますね。そのために、OSが短縮されているのではないでしょうか。

坂本:しかし、患者さんのQOLはOPTIMOX 2のほうがよいと、Dr. de Gramontはおっしゃっています。ある一定期間であっても、治療から完全に離れられることが寄与するようです。

大村:CFIはQOLを確実に向上させるでしょう。私は今後、生存期間にQOLを乗じたものを化学療法の優劣判定のパラメータに用いるべきであると常々思っています。難しいでしょうけれど。しかし、もしそれを用いれば、OPTIMOX 2はOPTIMOX 1に勝つかもしれません。

坂本:私も以前、同様の研究をしたことがあります。医療費と、OS、hospital freeでいることができる日数で算出したQOL(≒TiViST)を比較検討したのですが、hospital freeでいることができる日数が長いほどQOLが高く評価されることから、患者さんにとっては単にOSが延長するよりもベネフィットが大きいと感じられるようです。

久保田:Bevacizumabが本邦でも導入されます。本剤は単独では効果を示すことはなく、E3200試験ではbevacizumab単独群は途中中止になっています。本邦におけるbevacizumabの用法用量では「本剤は、フッ化ピリミジン系薬剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との併用により投与すること。本剤と併用する他の悪性腫瘍剤は【臨床成績】の項の内容を熟知した上で、選択すること」とされています。Sequentialなbevacizumab併用が上記用法用量に適応するか否か微妙なところですが、OPTIMOX 3の成績が確定するまでは、休薬期間中のbevacizumab単独投与は避けたほうが適当と思います。

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