WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 19 抗EGFR抗体の皮膚障害 2010年7月開催

CASE19 写真

ディスカッション 1

膚障害に対する予防的治療は行うべきであったか、行うなら何を行うか?

瀧内比呂也先生

瀧内: 本症例は48歳の女性で、stage IIIaの上行結腸癌です。現在は3rd-lineとしてIrinotecan(CPT-11)+Cetuximab療法を施行中です。3rd-line治療開始前の検査所見では、若干の貧血と肝胆道系酵素の上昇、CEAの上昇があり、腹部CT検査では肝両葉に多発肝転移を認めました。PSは0で、肝を3横指触知する以外に著変はありません。
 3rd-lineの治療開始10日目ごろから顔面と背中にGrade 1のざ瘡様皮疹を認め、28日目には頭皮にも広がってしまい、気分の落ち込みも激しいということです。35日目には皮膚の乾燥がみられ、Grade 1の爪囲炎も出現しました。ただし、42日時点で画像上の腫瘍縮小を認め、PRと診断されています。
 まずは「抗EGFR抗体の皮膚障害に対して予防的治療を行うべきであったか」という点について議論したいと思います。吉野先生はどうされますか。

吉野: 私は抗EGFR抗体の治療開始と同時に、ミノサイクリン200mg/日を原則として6週間内服していただきます。それに加えてヒルドイド®ローションを予防的に使用します。また、保湿剤は市販品にもよいものがありますので、「低刺激性または弱酸性、アルコールフリー、無香料、無着色」の商品をお勧めしています。特定の商品をお勧めすることはできませんが、看護師が近隣の薬局を回って調べ、患者さんが利用している薬局にどのような商品があるかをまとめた一覧をつくっています。

瀧内: 吉野先生は「最初からミノサイクリンとヒルドイド®ローション、市販の保湿剤の3剤を使用する」ということですね。佐藤武郎先生はいかがですか。

佐藤(武): ミノサイクリンは使わず、まずは保湿剤を使用します。当院の特徴は、抗EGFR抗体を投与する前に皮膚科医の診察を受け、治療前の皮膚の状態を診てもらっていることです。皮脂腺の状態からざ瘡が出やすいと予想される患者さんには、ミノサイクリンを早くから投与するなど、対応を少し変えているようです。皮膚科の先生方もまだ明確な基準はなく、経験的に行っているそうですが、我々だけで診ていたときに比べると明らかによくなっています。

佐藤(温): 当院の予防的治療は、保湿剤を含めたスキンケアです。スキンケアを十分に行うだけでも、皮膚症状がだいぶ抑えられている気がします。抗生剤を使うのは皮疹が目立つようになってからにしています。STEPP試験1-2)(表1)の解釈にもよると思うのですが、我々は最初から抗生剤を使用する必要はないと考えています。

大村健二先生

大村: 私は症例ごとに対応を変えるべきだと思います。本症例は48歳の女性で、フラワーアレンジメント教室の講師で仕事を続けたいという希望をおもちです。人前に出る機会も多いでしょう。このような場合は、コスメティックな面に最大限の注意を払うべきです。ざ瘡様皮疹の対策に熱心な皮膚科医は、「皮疹が出てから対応するのでは遅い」とよく言われますので、やはり予防的治療が大切だと思います。ミノサイクリンも最初から投与すべきですし、ステロイド外用剤、日焼け止め、保湿剤も加えてフルコースで行ったほうがよいと思います。

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