WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE2 大腸癌 2004年7月開催

ディスカッション 3

もしも承認外の薬剤が使えるとしたら

坂本:もし、この症例がstage IIIであったとして、日本で未承認の薬剤を使えるとしたら、どういう薬剤を使われますか?瀧内先生いかがですか?

瀧内:ひとつはMOSAIC trialに基づき、FOLFOX4で治療します。また、capecitabineも候補です。

大村:oxaliplatinの場合は末消神経障害が問題となります。MOSAIC trialのデータをもって、そのまま日本に大腸癌の術後補助化学療法としてFOLFOX4+oxaliplatinを導入して良いかには検討が必要でしょう。ですから、oxaliplatinが使えるとしても、LV/5-FUか経口LV/UFTのどちらかにします。

坂本:大村先生、bevacizumabはどうですか。

大村:bevacizumabは、費用を考えなければ追加したいですね。cetuximabかbevacizumabのどちらにするかは、EGFRの発現を見て決めると思います。今はまだevidenceがありませんけれど。cetuximabを1年間投与すると1500万円、3年間で5000万円かかります。bevacizumabはその半分くらいで、1年間700万円程度で、3年間で2000万円ですか。ちょっと桁外れに高いですね。日本の医療保険は財政的にパンクしますね。

坂本:久保田先生、佐藤先生はいかがですか。

久保田:stage IIIであるとすればLV/UFTの経口です。あるいはcapecitabineを半年行って、再発したときのために、oxaliplatinや、bevacizumab、cetuximabは取っておくというかたちですね。ただ、CPT-11よりはoxaliplatinを先にやりたいですね。

佐藤:stage IIIで実際にはケースバイケースとなり難しいところですが、やはり、再発をしてきたときの薬剤をとっておきたいというのがひとつと、補助化学療法なのであまり毒性を出したくないというのがどうしても先に立ちます。そうするとやはり、僕だったら、LV/5-FUかLV/UFTの経口で、というところを崩さないでいくかと思います。しかし、場合によってCPT-11やoxaliplatinの併用を考えます。

瀧内:日本でevidenceがあるのは、基本的にはUFT単独しかないのではないですか。

坂本:何を持ってevidenceというのかわからないのですが、S-1を除く経口フッ化ピリミジンの臨床試験のメタアナリシスを行いJCO(JCO 22(3) 484-492, 2004)に掲載されましたからevidenceが無いわけではないと思います。N・SAS-CC(ASCO2004 #3524)のUFTのevidenceは、260例ぐらいのrectal cancerで、まだ3年しかフォローしていません。これをもって最終的かつ決定的なevidenceと言いきれるかどうかまだ微妙だと思いますが、むしろこれらのRCTを全部含めてもう一回メタアナリシスをやって、有意差が出るかどうか見ていったほうが良いと思います。

大村:NSABP C-03とC-06の結果をあわせると、LV/UFTで良いということになりますね。C-03でMOFが手術単独に勝ち、LV/5-FUがMOFに勝って、そしてC-06でLV/UFTがLV/5-FUと同等であったということになりますから。

坂本:そうですね(笑)。ただ、そうした三段論法はいろいろな交絡やバイアスが入り込む場合もありますので、その辺は慎重に考えていく必要があると思います。

久保田:大腸癌はNSABPの方が長い歴史がありますから、そのデータに対抗するのは、もう難しいですよね。症例数だけでもすごいですよね。

佐藤:坂本先生は何をお使いになられるんですか。oxaliplatinですか?

坂本:私だったら、何をやってもいいというのであれば、LV/5-FUにoxaliplatinを併用、それから各種のモノクローナル抗体をどんどん投与したいです。

大村:モノクローナル抗体でしたら、bevacizumabかcetuximabのどちらかを使っても、もう片方が残るわけですからね。それで、oxaliplatinを使っても確かにCPT-11が残る。ただoxaliplatinの末梢神経障害というものがいったいどんなものかと一回経験してみないと・・・。顔を洗うたびにビリビリ痺れてしまうといいますから。

佐藤:冷たいものに触れるとピリッと痺れると言いますね。冷たい風でもなりますから、いやな副作用ですね。でも、事前に出ることが分かっていると、手袋をはめるなど、いろいろな処置で対応できます。

大村:これは不可逆的なのですか?

佐藤:いいえ、可逆的です。投与を中止すると回復します。ただMOSAIC trialで終了1年間は神経症状の発現も僅かながら報告されており、長期化するケースもあるようです。

坂本:taxaneの方は、確かニューロパシーを抑える薬の臨床試験が進められています。oxaliplatinの方はそのような試みはされているのでしょうか?

佐藤:taxaneの神経障害とはまた違います。ASCO等でcarbamazepineやCa/Mgが有効との報告もありますが、対象症例も少なく、比較試験でもないので、現時点で推奨できる予防法はないようです。

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