WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 20 進行の早い切除不能大腸癌に対する2nd-line以降の治療戦略 2010年7月開催

CASE18 写真

ディスカッション 2

2nd-line治療への切り替えは何をみて判断するか

●総ビリルビン値の上昇をみて、CPT-11が使えなくなる直前で切り替える

大村: 1st-lineを継続する先生方は、どの時点で2nd-lineに移行されますか。

佐藤(武)先生

佐藤(武): 原発巣に効いておりSDが得られているので、FOLFOX+Bevacizumabをできるだけ継続したいというのが正直なところです。「これ以上続けるとCPT-11が使えなくなる」という何らかのサインが出る直前で、FOLFIRI+抗EGFR抗体に切り替えます。

大村: CPT-11が使えなくなると判断されるのは、総ビリルビンが上昇したときですか。

佐藤(武): この症例の場合、総ビリルビンもしくはALPが突然跳ね上がるようなときが、CPT-11を使えるラストチャンスだと思います。

大村: 総ビリルビンの上昇には、肝内胆管の閉塞も関与します。部分的な閉塞ならまだよいのですが、肝門部だとほかの化学療法剤も投与できなくなりかねませんね。具体的には、総ビリルビンがどのぐらい上昇したらCPT-11は投与できないと思われますか。

佐藤(武): 私は患者さんの通常の値の倍を目安にし、倍になる前に切り替えます。例えば、これまで総ビリルビンが0.2 mg/dLであった方が0.4 mg/dLになり、同時にALPも上昇しているようであれば、これはおかしいなと思います。もちろん誤差のこともありますし、通常の値が0.9~1 mg/dLの場合は別です。また、本症例は4週に1回とコンスタントにCTを撮って状態を確認していますので、総ビリルビンの上昇まで待っても大丈夫ではないかと思います。

吉野: 確かに総ビリルビンとCPT-11の毒性はある程度関連すると思いますが、総ビリルビンは時間帯によって変動するため、どの程度再現性があるのかは疑問です。ただ、正常上限の1.5 mg/dLを超えたら2nd-lineに切り替えます。急に3 mg/dLを超えてしまった場合は、CPT-11の投与は難しいので抗EGFR抗体単独にならざるを得ません。

佐藤(温): 私も総ビリルビンが1.0〜1.5 mg/dLに上昇するまでは1st-lineを継続します。そのためには、悪化の傾向がみられたら頻回に受診していただき、採血して状況をこまめに判断することが必要だと思います。

●現在までの検査値の推移をみて、2nd-lineに切り替える

大村: 瀧内先生は総ビリルビンよりも、現時点での肝機能をみて判断されますか。

瀧内: そうですね。1st-lineを開始してから3ヵ月弱が経過しており、このレジメンに対するレスポンスはある程度みえていると思います。腫瘍マーカーも含め、検査値が少なくともよい方向には動いていないので、総ビリルビンの上昇やPDを待っていると、あとで後悔することになる可能性もあると思います。

佐藤(武): 4サイクル目でCTを撮り、次は6サイクル目に撮るわけですが、その場合、5サイクルで切り替えるのか、あるいは6サイクルでCTを撮ってから切り替えるのか、どちらでしょうか。

瀧内: 一番欲しいのは客観的な画像評価ですが、やはり1st-lineの選択が私とは違うので、難しいところです。吉野先生がおっしゃったことも非常に理に適っていて、Bevacizumabの奏効率に対する上乗せ効果はmarginalですから、1st-lineを続けるのであれば5サイクル目はFOLFOX単独を投与し、6サイクル目でCT画像を見てPDを認めればFOLFIRI+Panitumumabに切り替えるということで問題ないと思います。

大村: ただ、FOLFOX単独にするとパワーが落ちるので、進行は早くなりますね。

瀧内: ええ。これだけの腫瘍量があって、このような検査値の上がり方をしているケースはあっという間に悪くなることがあるので、十分に注意しておかなければいけません。

●画像もしくは臨床症状でPDを確認できるまで待ち、2nd-lineに切り替える

佐藤(温)先生

佐藤(温): 例えば、本症例の場合、2nd-lineとしてFOLFIRI+抗EGFR抗体に切り替えた途端に急激に悪化した場合はどのように考えますか。

瀧内: 2nd-lineに切り替えても1st-lineのままFOLFOX単独にしても、急激に悪化するケースはあり得ます。多分、結果は同じぐらいの確率です。

佐藤(温): ご家族には「治療を変更してから悪くなってしまった、前の治療を続けていればよかった」と思われてしまわないか、少し心配ですね。画像でも臨床症状でもよいと思いますが、増悪しているという何らかの裏付けを取ってからでないと、実際はなかなか切り替えられません。

坂本: 私もやはりPDが確認できるまでは1st-lineを継続し、それから2nd-lineに移行します。

瀧内: 先生方のおっしゃることはよくわかりますが、best regimenを選ぶのであれば、私はここで2nd-lineに切り替えます。

大村: 先生方のご意見をまとめますと、吉野先生と瀧内先生は現時点でのレスポンスと検査値の推移をみて2nd-lineに移行する。それ以外の3名の先生は、総ビリルビンの上昇あるいは画像や臨床症状でPDが確認されるまでは1st-lineを継続するということですね。この時点では移行しないという先生方も、2nd-lineにはFOLFIRI+抗EGFR抗体を考えられますか。

坂本: そうですね。患者さんの状態とKRASのタイプによってはCPT-11+抗EGFR抗体か、抗EGFR抗体単独という選択肢もあると思います。



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