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大村: 最後の論点は、肝転移に対する肝動注を行うかどうかです。
吉野: 本症例のCTを見ると、尾状葉に非常に大きな転移巣が確認できます(写真)。尾状葉は肝動注で最も薬が入りにくい部位ですので、私なら行いません。しかも今後、この尾状葉の転移巣が下大静脈の圧迫や閉塞性黄疸を引き起こすことが予想されるため、下手に肝動注をしないほうがよいと思います。
佐藤(武): 私も肝動注はしません。尾状葉に転移巣がある点もそうですが、本症例は血流改変をしてしまうと全身状態が相当悪化すると思います。
瀧内: 多分、肝動注を選択する人はいないのではないかと思います。
佐藤(温): 今回の症例に対しても肝動注は選択しませんし、また、私は通常、臨床で肝動注は行わないのですが、治療オプションとしてはあるとは思います。1st-lineとして、その後に全身療法を行うという前提で肝動注を行ったデータをCALGBが出していましたね6)。
坂本: ASCO 2010でも、5-FU/LV全身化学療法+L-OHP肝動注併用療法についてのpositiveな報告がありました7)。
大村: 本症例は肝以外の臓器に転移を認めないことから、肝動注を行うか否かが論点に加わったのですが、肝動注は行わないということで全員の意見が一致しました。ところで、本症例に対し手術を行うという先生はいらっしゃいますか。
吉野: 仮定の話ですが、肝臓を全摘して肝移植をするという方法はどうでしょうか。
佐藤(温): 大腸癌のように、肝転移があっても肝臓病変を制御すれば予後が延長するという癌種であれば、うまくいくかもしれませんね。
佐藤(武): 胆管細胞癌や肝細胞癌では行われていると思いますが、肝転移症例に対する肝移植は日本では未承認です。ただ、1つの治療戦略としてはあり得ますね。
大村: Case 20では、現時点で2nd-lineに移行するか1st-lineを継続するかどうかについては意見が分かれましたが、基本的には画像や臨床症状で増悪を確認してから、または総ビリルビンの上昇をみて2nd-lineに移行するということでした。本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。
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