瀧内:TS-1は短期間で効果がなくなり、LV/UFTも約4ヶ月経口投与されていますので、大腸癌に効果のある薬剤を使い切るということになると、残されている選択肢はCPT-11しかないのですが、ベースに肝硬変があり、しかも白血球、血小板ともに肝硬変による低値を示していますので、僕はbest supportive care(BSC)がbest choiceだと思います。患者様のご希望がありましたらある程度の調整はできますけれども、基本的に推奨できるのはBSCではないかと思います。
佐藤:肝硬変が数値以上に進んでいるという感じを受けることがどうしてもひっかかりますので、最初はBSCを患者さんにお話しすると思います。その上で何か方法がないかということであれば、臨床研究としての治療法を提案すると思います。治療薬としては、FU系はずっと使われているため、耐性、感受性の点から非常に使いにくいので、やはりCPT-11だと思います。TS-1やUFTは肝硬変上あまりよくないのですが、そういった薬剤が使われていてもこれまで安全に来ているということは、少し光明があるかなと思います。CPT-11とMMCを併用するということも考えられますが、MMCでも肝毒性が出ることもあり、血小板をこれ以上下げたくないということもありますので、恐らく最初はCPT-11を単剤として使います。もう一つ残されている方法は、これまではFU系を全て経口投与されており、持続静注と同様の持続的な高い血中濃度維持による治療が行われてきていますので、l-LV/5-FUのbolus静注を試みてもいいかと思います。いわゆるRPMI regimenですね。私としてはその2つの方法を提示するかと思います。
坂本:私が言いたいことはほとんどお二人がおっしゃってしまったのですが、まず患者さん本人のご希望がどうかということが一番知りたいことです。患者さんご自身が経済的にどの位余裕があるのか、それから治療方針についてどれくらい理解していただけるかという問題が大きいと思います。それによっていろいろ状況が異なってくるのですが、しっかりご理解いただいて経済的にも余裕があるということであれば、最初は入院していただいて、お二人と同じようにCPT-11の単剤を使用します。ただし私の場合は少し低めのdose、70mg/m2くらいからスタートして、responseとtoxicityの出方を見ながら少しずつdoseを上げていく、もしくは下げていくという方法をとります。或いはこれはまだ日本では使えないのですが、cetuximabをCPT-11と併用するといった選択肢をとることも考えられます。ただこの症例では、瀧内先生、佐藤先生がおっしゃったように、かなり肝硬変が進んでいると思いますので、ご本人とご家族のお考えをきっちり伺ってから治療したいと思います。
佐藤:危険性を十分説明してということですね。
坂本:そうです。それとcetuximabを選択した場合は非常に高価であることと、個人輸入しなければならないということがあります。