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CASE3 大腸癌肺転移 2004年11月開催

CASE3 写真

ディスカッション 4

化学療法の効果と副作用を十分説明

大村:佐藤先生はsecond choiceでCPT-11の単剤とおっしゃいましたが、CPT-11はどのくらいの量を使いますか。

佐藤:基本はbiweeklyで100mg/m2です。

大村:そうすると150mg/bodyくらいですか。

佐藤:150mg/body前後ですけれども、実際に投与する時には80〜100mg/m2というように症例の状態に応じて調節します。それとこれは保険診療で認められていませんが、CDDPを併用投与するとCPT-11の活性が上がるのか低用量でも案外効くようになるのです。我々の施設の論文では、CPT-11/CDDPを60mg/30mgのbiweekly投与で、大腸癌で前治療ありの症例で22%に効いていますので、考えてもいいと思います(CCP 47: 380-384, 2001)。

坂本:不思議ですね。

佐藤:肝臓が悪い人にはCDDPを同時併用してCPT-11投与量を下げるという姑息的な手段を時々使っています。CPT-11の量を下げるためにCDDPを入れるのですが、今のところ臨床的なエビデンスは不十分です。ただ、CDDPは保険診療では大腸癌に認められていません。

坂本:どうして大腸癌でCDDPが認められていないのか、よくわからないですね。

佐藤:CDDP単剤では十分な効果がないのは確かなのですが、使い方によっては使えるときがあるのです。ただエビデンスが不十分ですから、なかなか難しいところですね。

大村:CPT-11/CDDPは胃癌のphase II では血液毒性がひどかったですね。

佐藤:あれはJCOG regimenの結果ですが、CDDPを分割投与にすると一気に少なくなってきます。胃癌における多施設共同のPhase I studyでは1nレベルのCPT-11 30mg/m2、CDDP 30mg/m2で3例中2例がPR判定でした。

坂本:2/3の量でですか。

佐藤:ちょっと不思議な気がしますが、だからといって少ない量でいつも効果があるとは限りません。けれども、CDDPとCPT-11の相性というのは何かおもしろいものがあるのではないかと思います。

坂本:かなりきついCombinationだというイメージがありますが。

瀧内:私がこの患者さんで一番印象的だったのは、血小板が62,000ということです。これをみて化学療法はできないなというのが最初の印象でした。

坂本:血小板は10万以上ある人でもあっという間に下がってくるケースもありますから、このような患者さんについては、やはり最初はきっちり入院していただいた方がいいですね。

大村:そのとおりです。肝硬変による汎血球減少症がCPT-11の骨髄毒性でさらに重篤化する可能性があることを十分に説明し、同意を得たうえで治療しなければなりません。

坂本:血小板減少症だけは予防薬がないから、何か起これば血小板輸血しかない訳ですからね。そうなると、やはりclosed follow upができるような状況にしておかなければいけない。

大村:いずれにしても、特にこの症例ではご本人のご希望と化学療法に伴う危険性を考えて、慎重に治療を行なう必要があります。プラセボ的なものを投与していいのかどうかもまた問題ですし、悩むところですね。化学療法を行なうとしたら、厳重な経過観察が必要であることも強調したいです。

坂本:おっしゃるとおりサーベイランスは絶対必要だと思います。

佐藤:PSが0ということは、いけるぞということでもありますけれども、何もしなければ良かったPSを治療で何のメリットもなく下げることは逆に罪になりますね。

大村:ありがとうございました。完全に告知された再発大腸癌で、ご本人は積極的な治療を望んでいらっしゃるけれども肝硬変を合併していると言う難しい症例でした。三種類の経口5-FU製剤の投与を受けた既往があり、積極的な化学療法を行なうのであればCPT-11を用いることで、先生方の意見の一致をみました。一方、PS 0とはいえ脾機能亢進症による血小板減少を認めるため、BSCが最良であるとのご意見もいただきました。CPT-11単剤、RPMI regimen、modified Saltz regimenなども出され、「正解はない」が答えのようです。この症例に限ったことではありませんが、化学療法の効果と危険性を患者さんご本人とご家族に十分説明することが大切です。その結果、医師と患者との間に深い信頼関係が構築されることをしばしば経験します。そうした上で選ばれた治療法が「正解」なのでしょう

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