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CASE4 胃癌  2004年11月開催

CASE4 写真

ディスカッション 2

水腎症や腹水を考慮して選択

瀧内:佐藤先生はいかがですか。

佐藤:TS-1/CDDPはとてもいい選択だと思います。ただ私は、みなさんがfirst line therapyはてっきりMTX/5-FUをchoiceするものだと思っていました。

瀧内:面白いですね、理由をお聞かせください。

佐藤:この症例は低分化腺癌であるし、腹水もあるし、1番重要なことは腰椎に転移があるので癌性骨髄腫を起こしやすい状況にあるということです。こういう状況にある段階で、現在一番エビデンスがあるのはMTX/5-FUです。胃癌の場合は骨転移があると臨床的に進行悪化が非常に早いです。しかも癌性骨髄腫をすぐ起こしてくるので、早急に何か手を打たなければいけないということで、first line therapyとしてMTX/5-FUを考えます。

瀧内:しかしMTX/5-FUだと、この患者さんは微熱傾向があり、しかも白血球やCRPも若干高い点が問題になりませんか。

佐藤:この程度だと多分大丈夫だろうと思います。ただ、MTX/5-FUは原疾患に対し有効ですが、そのかわり骨髄抑制が急激に来て感染症を悪化させることがあるので、その点を十分注意しなければいけませんね。MTX/5-FUは通常はweeklyで6投2休として投与しますが、実際に臨床現場ではちょっと危ないという時は適宜スキップしてやっています。私の場合は、DICもしくは感染症のチェックを常に入れながらMTX/5-FUをやっていくというのを、first choiceにすると思います。

瀧内:腰痛はどう対処されますか。

佐藤:痛みが非常に強くNSAIDsで抑えられないようであれば、除痛を早く行えるradiationをそのスポットに当てます。ただし、骨盤腔内とか胸腰椎とか広い範囲に照射すると骨髄抑制が起こりやすくなるということを、血液内科の先生方が経験的におっしゃられています。そうなると骨髄抑制が来るような治療が後からできなくなってきてしまう恐れがあるので注意が必要です。この方は第4腰椎だけなので、1週間ぐらい照射して除痛できると思います。疼痛管理はまず行わなければならない治療ですので、これで治まらないときは、ステロイド、モルヒネ製剤等組み合わせて治療に臨みます。

瀧内:水腎症所見についてはどう考えますか。

佐藤:水腎症があってもクレアチン値に問題がなければ、私としてはMTX/5-FUを使います。もちろん注意しながらですが・・。

坂本:この方の場合は腎臓そのものがやられているわけではないですからね。

佐藤:逆にMTX/5-FUを使うことによって水腎症が改善してくるということも経験することです。癌性骨髄症のリスクが少なく、癌性腹水が主な場合はTS-1/CDDPを選択しますが、癌性骨髄症のリスクが高かったり、経口摂取に問題のある場合は、まずMTX/5-FUを選択します。TS-1/CDDP、taxaneはsecond lineで考えます。

瀧内:JCOGの9603というstudyでは、MTX/5-FUは腹水症例に対して37%前後の奏効率になっています。しかし治療関連死も、白血球数の多い人あるいはCRPの高い人に特徴的にみられているということで、感染がベースにある人には十分な注意を払わなければいけない治療法だと思います。

佐藤:感染症は原病巣がわからないままに、経過をみているうちに、あっという間に出てくることがありますから、気をつけるということが非常に大切ですね。

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