大村：MTX/5-FUで始めて効果がみられなかったら、その時には経口投与できなくなっている可能性が高くありませんか。それを考えると、TS-1を使えるのは今だけだと、そういう感じはありませんか。

佐藤：TS-1は有力な選択肢の一つだと思いますが、MTX/5-FUで症状改善した後に、TS-1で長期間管理しえた癌性腹膜炎症例も経験しています。

大村：たとえば大腸癌でしたら、LV/5-FU、oxaliplatin、CPT-11の3剤を使用できた症例に長い生存が期待できるとの見解が認められ始めています。先程坂本先生も触れられましたが、胃癌でも同じことが言えるでしょう。そうすると、経口摂取ができるうちに経口剤を使ってあげたいと考えるのですが。

佐藤：当然だと思います。それでもいいと思いますが、だからといってTS-1が経口摂取できる胃癌患者すべてのfirst choiceであるとは思いません。また、その考えでいけばMTX/5-FUはsecond line以降の成績ではほとんど効いていないので後治療としては使用できなくなります。

坂本：JCOGの9207というstudyでは奏効率が9％でしたね。

佐藤：前治療にもよりますが、現場の印象では9％以下という感じがします。

大村：First lineで50％よりも高い奏効率を望めるものとなると、一番手はTS-1/CDDPになりますか。

瀧内：大村先生がおっしゃられましたような、最初TS-1/taxaneでいって効果が現れて腎機能が担保できたらCDDPに変えるという方法は、手持ちの薬剤をきちっと使うという意味でおもしろいと思います。

佐藤：症例報告では癌性骨髄症症例にTS-1/CDDPが有効であったという報告が少しでてきていますので、今後に向けて検証していかなければなりませんね。ところで、今はTS-1/taxaneのデータも随分いいのがそこそこ報告されてきています。腹水症例へのTXLの単剤投与というのは皆さんやっておられて結果が出ていますが、TS-1/taxaneについてはどうですか。

瀧内：phase II でTS-1/CPT-11、TS-1/TXLなどをやっていますが、どれもほとんど同じです。腹水に対してきちんとしたデータはないですが、登録した症例ではズバッと効いています。

大村：TS-1そのものも腹水を減らしますし、もちろんTXLも腹水に非常に有効ですからね。

坂本：個人的な経験からいいますと、TS-1とtaxaneは組み合わせがあまりよくないようで、どちらもfull doseで使うという訳にはいきません。むしろTS-1/CDDP、あるいはtaxane/CDDPを使って、その次のラインにもう一つ腹水に効く薬剤を残しておきたいという気はしています。ただおもしろいことに、TS-1で腹水が減ってrefractoryになった後でtaxaneを使うとまた効く。逆に、taxaneで減ってrefractoryになった後でTS-1を使ってもそれもまた効くのです。だから、この2剤を同時に使うというのはもったいないという印象を非常に強くもっています。

瀧内：この症例をまとめますと、先生方の一致したご意見だと思うのですが、できるだけ手持ちの薬剤を使えるときに全部使いたいということで、最初からできれば併用療法をやりたい。経口摂取ができる時期も場合によっては限られているので、症例によっては経口剤を含む併用もいいのではないかというお話でした。MTX/5-FUが好きな先生はMTX/5-FUを使われると思います。また、second lineで経口剤は服用できない可能性もありますので、多分全体的な流れはMTX/5-FU あるいはTS-1プラスＸで、XはCDDPあるいはtaxaneかなと思います。この症例は最初に治療が失敗すると次がないと思いますので、併用療法でやりたいというのが私の考えです。