瀧内:この患者さんに対しては先生方がお示しくださったどの治療法も許される範囲だと思います。この症例は腎機能も水腎症にあわせてこのような数値に設定しています。白血球が多いのもCRPが高いのも、MTX/5-FUを意識して設定したわけです。ですから、いいご意見をいただけたと思います。もう一つポイントになるのはsecond line以降の治療法です。先ほど佐藤先生もおっしゃられましたように、この症例は骨転移があるため急激に悪化する可能性も十分予想されるわけです。そういった意味ではfrontlineで持ち弾を全部使い切るのか、それとも有効な薬剤をsequentialに使っていくのかという選択も最初に必要です。大村先生は最初から惜しみなくいきたいということですね。
大村:おっしゃるとおりです。まず、若いということ、それから本人が腰痛から解放されたいと望んでいらっしゃるからです。腰痛から解放されるためには、tumorを縮小しなければなりません。SDでは価値がないと思います。したがってresponse rateが非常に重要で、それを重視してfrontlineを決めるべきだと思います。TS-1単剤のresponse rate 46.5%では物足りなく、プラスアルファで70%、80%をねらいます。
瀧内:これは坂本先生も同じご意見でしょうか。
坂本:そうです。大腸癌ではなるべく多くの薬剤を併用したほうが患者さんのMSTが延びるということがGrotheyの論文で報告されていますが、これはおそらく胃癌についても同じことが言えるのではないかと思っています。
佐藤:腹水というとMTX/5-FUかtaxane(TXL)ということになりますが、確かにUFT/CDDP、TS-1/CDDPでも癌性腹水に有効です。
坂本:TS-1を使うと結構腹水が減りますね。
佐藤:私は以前は進行胃癌に対しUFT/CDDPを多用していましたが、癌性腹水の有効症例を多く経験しました。ですから、先生方が本症例にTS-1/CDDPを選択するのは全く問題ないと思います。
瀧内:以前小泉先生がスキルス胃癌の症例をまとめておられて、TS-1/CDDPが非常によかったということでした。しかしそれは単独施設でのデータであり、エビデンスレベルからいけばMTX/5-FUほどはないのですが、やはり実際の治療ではTS-1/CDDPが使われていると思いますし、TS-1、にTXLかTXTを併用するのもいいのではないかなと思います。佐藤先生、MTX/5-FUはどの程度の治療効果がありますか。
佐藤:個人的な感触ではありますがこのような症例の場合、臨床的有効性を含めるとMTX/5-FUは50%ぐらいの効果があると思います。食欲不振が強くて食事があまりとれないような人たちに対して、症状改善効果が随分強いと思います。経験的には、効果の判定が早い時点でわかるので、次の後治療に移るべきかどうかを早くに確認できるのでいいと思います。
大村:佐藤先生、奏効率50%ぐらいを想定してMTX/5-FUをfirst lineに用いた場合、second lineはどうされますか。
佐藤:MTX/5-FUでだめだった場合はTXLを使います。MTX/5-FUで効かなかった人にTXLが効くというのは恐らく先生方、経験されていることだと思いますが。
坂本:私達のグループは5-FUの持続静注プラスTXLでPhase II 試験をやっているのですが、MSTが450日以上となかなかいいデータが出ています。