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CASE5 大腸癌リンパ節転移 2005年3月開催

CASE5 写真

ディスカッション 4

新たなエビデンスの確立を

久保田:まとめますと、実地臨床としてはFOLFIRI、FOLFOX 4の順番で治療することが考えられます。一方、臨床試験としてはまずFOLFOX 4をベースにした比較試験がいろいろ考えられますね。

瀧内:大阪のグループで TEGAFIRI のphase I が終了しましたが、6割近くの症例で効いていますし、Phase II の症例成績も順調です。

大村:それは first lineでですね。

瀧内:はい。月2回外来に来ていただくだけなので非常に忍容性もあってよいと思います。

久保田:私もTEGAFIRI を実施してみましたが忍容性はTS-1に比べてTEGAFIRIのほうが良いようですね。

佐藤:TS-1は、単剤より併用のほうが少し副作用が減るという話も聞きますが。

坂本:併用療法施行時の安全性に関するエビデンスはあるのですか。

佐藤:ないですね。

久保田:TS-1は患者さんによって忍容性が大きく異なります。合わない患者さんは最初からだめですし、adjuvantで1年間投与しても平気という患者さんもいます。恐らく腸管におけるオキソン酸の働きが忍容性に関係するのではないかと思います。

大村:オキソン酸が大腸まで届かないのが消化器症状の原因ではないでしょうか。TS-1投与症例には結構下痢がみられますが、そのような患者さんの大腸を内視鏡で見ますと、かなりの炎症所見がみられます。小腸でオキソン酸が全部吸収されてしまって、大腸まで届いていない可能性があります。

坂本:瀧内先生、TS-1の手ごたえはいかがですか。

瀧内:Phase II のデータしかありませんのでいちがいにはいえませんが、second line、third lineに使う機会が多くて、実際使ってみた感触では、first line治療例を対象としたphase II の結果ほどの手ごたえがないというのが事実です。

佐藤:経験的には、IFLで効いていて、効かなくなった人がTS-1でまた効くということがあります。ですから、あくまでも5-FUのbolus系とcontinuous系は別途で考えて、bolusでだめだった場合はcontinuousを実施するようにしています。

坂本:First lineにTS-1を使うというケースはありませんか。

佐藤:いま臨床試験をやっていますので、臨床試験としてfirst lineでTS-1を投与する症例は増えています。

瀧内:そうですね。臨床試験でしか使えないような気がします。

久保田:大腸癌のfirst line therapyは、NCCNのガイドラインではFOLFIRI、FOLFOX、またはIFL+bevacizumabとなっていますが、これだけで進行を抑えるのは難しいように思います。

坂本:TS-1とL-OHPの併用療法後にFOLFOXやFOLFIRI による治療を実施するのもおもしろいと思うのですが、参照できるデータがありませんね。

瀧内:TS-1とL-OHPの併用療法についてはphase I が動き始めたところです。

佐藤:TS-1とCPT-11の併用については瀧内先生たちがやっていらっしゃるようなCPT-11隔週投与ですと、案外問題はなかったのですよね。私達はCPT-11をweeklyで投与する臨床試験を行っておりますが、副作用が強いような感じがします。大村先生がおっしゃったような下痢症状が出て、非常に難渋してしまう症例を複数経験しています。CPT-11の下痢の場合は腸管粘膜が脱落するそうですが、併用すると回復せずに副作用が強く出てしまうのでしょうか。

久保田:CPT-11とTS-1の併用療法(2週間投与、1週間休薬)について、胃癌でphase I 、II を実施したのですが、recommend dose が各80mg/m2のところ、CPT-11を100mg/m2に増量したら下痢が出てきて止まらなくなったことがあります。CPT-11とTS-1のregimenは「80・80」と覚えやすいし feasibility も非常に良く、なおかつCDDP、TS-1耐性症例にも効くことがあるので実施しやすい治療法ではないかと思います。

瀧内:Two week restになるのですか。

久保田:One week restです。

佐藤:最近、国立がんセンターが発表したFOLFIRI の phase I studyは、CPT-11の推奨投与量を180mg/m2まで持っていきましたね。IS・5-FU持続療法との併用では非常に高用量のところまで持っていけるのですが、TS-1と併用した場合に高用量にしたという話はあまり聞きませんね。

坂本:180mg/m2は日本では承認されていませんよね。

佐藤:承認用量は隔週で150mg/m2までです。

久保田:新しいregimenの開発については用量の設定などいろいろと解決すべき点も多いようですが、今後の研究に期待ができると思います。ではCASE 5については以上です。

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