久保田:日本人でのデータがないことに加えて、L-OHPの適応は「FOLFOX 4の second line regimenまで」 という縛りがあるのです。TS-1による治療を1回と数えると、次が third line regimenになってしまうので、そうすると適応外になってしまうこともあるわけです。仮にTS-1が飲めたけれども効かなかったということで third lineになったときに、現時点の承認条件ではFOLFOX 4が認められない。そうなると次の策は何かございますか、bevacizumab、cetuximabはまだ認可されていないという条件で。
坂本:個人輸入をして使うという方法はありますね。混合医療が実質的に認められつつありますから。
瀧内:Cetuximabが使用可能であれば、CPT-11+cetuximabというのも1つのオプションになると思います。
坂本:もしくはIFL+bevacizumab。
久保田:あるいはFOLFOXが third lineになるなら、FOLFIRIをここでやることも考えられますね。
瀧内:Bevacizumabでもよいですね。確かにFOLFIRIも考えられますし、あとTEGAFIRIでもよいのではないかと思います。
久保田:私もTEGAFIRIはよいと思います。この患者さんはTS-1が使えませんが、LVが大丈夫なようでしたら、CPT-11だけを残して外来治療でTEGAFIRIにしてもよいと思います。FOLFOXもよいのですが、承認条件が厳しいこと、病院の承認に非常に時間がかかるということでしたら、実地臨床としてはTEGAFIRIがよいのではと思います。瀧内先生はTEGAFIRI の外来の間隔をどのぐらいにしていますか。
瀧内:5週1サイクルで、day 1とday 8 にCPT-11を投与して、LV/UFTは3週投与2週休薬です。
久保田:ということは、月に2回通院するということですね。
坂本:そのくらいだと忍容性もありますね。
久保田:月に2回2日間入院するというのは相当な負担になると思います。月に2回外来点滴だとDPCが導入されている病院側も助かりますし、患者さんのQOLも相当よくなりますね。この症例については基本的にみなさん同じようなお答えで、FOLFOXがまずfirst choiceとなるようです。しかし、L-OHPのFOLFOX 4の承認条件からすると、厳密には third lineになってしまいます。病院側の承認がまだということでしたらTEGAFIRI 適応ということになります。TS-1に比べてTEGAFIRIのほうが忍容性はよいようですし。
大村:日本ではL-OHPの最大投与量は85mg/m2ですから、その上限もきっちりと守らないといけないですね。
久保田:本症例は、L-OHPの承認によって治療内容が変更される好例ではないかと考えられますが、現時点ではFOLFIRIを先に実施して、FOLFIRI refractoryに対してFOLFOX 4というのが承認条件の根本にあります。IFL failure、あるいはFOLFIRIで衰弱している患者さんにFOLFOX 4を実施すると failureになる確率が非常に高くなりますので、FOLFOX 4実施の際には承認条件を十分に尊重する必要があると思います。L-OHPは決して夢の薬ではないわけですから、慎重に導入する必要がありますね。