大村:IFL regimenが無効となった症例です。また、Virchowリンパ節を触知するようになったことは、新病変の出現を意味します。IFLが無効で、DIFであるTS-1も使えないので、私はL-OHPを使用します。LV/5-FUはそのまま継続して、それにL-OHPをオンする方法、すなわちFOLFOX 4 regimenの原法を実施するか、あるいはL-OHPを減量するかですね。
久保田:L-OHPをFOLFOX 4 regimenでということですね。
大村:FOLFOX 4ですけれども、L-OHPの投与量を通常の85mg/m2に設定するかがポイントです。末梢神経障害のリスクについて十分説明して、場合によっては/m2ではなくて/bodyに減量します。減量しても神経障害が出る可能性はあるわけですから、いずれにしても十分説明してということになると思いますが。
坂本:私も大村先生と考えは全く同じです。問題はFOLFOX regimenのうちどれを実施するかですね。患者さんのニーズや、通院したいのかそれとも入院したいのかによって、FOLFOX 4を実施するのか、または 6 や 7 を実施するのかをどう考えるかということです。もしくは、ドイツで実施されているFUFOX、つまりAIO regimenにL-OHPを加えるregimenをやってもいいですし、イギリスで実施されているModified de GramontにL-OHPをオンするという選択肢もあると思います。基本的には大村先生と同じでL-OHPの併用、それとrefractoryになったらbevacizumabやcetuximabをトライしてみるのも1つの考え方かと思います。
久保田:LVと5-FUの持続投与のregimenは、AIOとsLV5FU2とde Gramontの3つが承認されましたが、L-OHPの承認条件はFOLFOX 4だけですよね。
瀧内:添付文書では、一応、有効性および安全性が認められているのはFOLFOX 4であるという書き方になっていますので、暗にこれを使いなさいということですね。本症例の治療方法については、私も大村先生、坂本先生と同じ意見です。臨床経過をみますと明らかに IFLでは増悪してきているということですので、次の一手を打つべき時期に来ているということを十分患者さんに理解していただくことが重要だと思います。患者さんの希望は外来治療ですが、これを実現するには port を挿入しないと少し難しい気がします。実施するregimenは私もFOLFOX 4です。日本での適用承認がそうなっていますので、現状ではFOLFOX 4をぜひやりたい。それも port 挿入で外来治療に移行したいと考えています。
久保田:ただFOLFOX 4だと通院が2回になりますね。
瀧内:そうです。2週で2回通院していただくことになります。将来的にはぜひFOLFOX 6で治療したいと思うのですが、承認直後という時期を考えれば、FOLFOX 4で治療せざるを得ないでしょう。
佐藤:私もこの患者さんですと通常はFOLFOX 4か6の適用になるかと思います。患者さんが「通常の日常生活を送りたい」と希望していますので入院は避けたいと思いますが、port設置により外来治療は可能になると思います。L-OHPが承認されていないという前提ですと、現在までにワンショットのbolus治療しか行われていないので5-FU持続に持っていく方向を考えます。5-FU 持続ですと、通常のde GramontまたはAIO regimen、もしくは経口抗癌剤の選択になるかと思います。TS-1で副作用が出たということですが、減量によって忍容性が得られるかをまず試みると思います。もしくはLV/UFTも検討するかと思いますが、できればFOLFOXのregimenに持っていきたいと考えます。
久保田:先生方のご意見を集約しますと、FOLFOX 4をできれば外来の投与方法、すなわちportを設置して2週間に2回通院していただくのが適切であるというご意見です。ただL-OHPの承認条件を考えますと、どの病院でも実現可能というわけにはいきませんね。
坂本:臨床試験であればいろいろな治療法を試すことはできますが、一般病院での治療は承認条件に沿ったものが一番合理的かもしれませんね。問題は、以前にも話題に出たことがありますが、まだ日本人におけるL-OHPの毒性の状況がわかっていないことではないかと思います。
瀧内:そうですね。データが何もないのです。