久保田:私どもは現在、進行胃癌を対象としてneoadjuvant chemo-radiationのphase II studyを実施していますが、この出題症例はその適格基準を満たしておりません。そこで実地臨床として、phase II の投与量を若干減量し、TS-1/CDDPの chemo-radiationをやってみたいと思います。Phase II のTS-1投与量は80mg/m2×3週ですが、この方は80歳ですので80mg/bodyぐらいから始め、CDDPは6mg/m2 を5投2休で 3週間投与します。Radiationは1日2Gyとして、5日やって2日休みで合計40Gyを目標にしたいと考えます。このregimenは比較的 feasibilityがよくて、TS-1が飲めればいけると思います。ただ、本出題症例は血糖値が200mg/dLと高く糖尿病がコントロールされていない状況なので、血圧あるいは血糖コントロールに十分注意しながら入院でchemo-radiationを行います。
佐藤:Radiationはどこに当てるのですか。
久保田:原発巣です。縦隔転移巣には当てません。骨髄と腎臓には当てたくないのですが、骨髄は若干当たってしまいます。上方を中心にCTで癌の部位を確認して、できればクリッピングして原発巣を中心に当てます。
坂本:その治療でQOLは改善しますか。
久保田:QOLは非常に改善します。Phase I の結果ですが、とりあえず奏効率は89%です。
佐藤:Neoadjuvantということですと、その後手術をするのですか。
久保田:PRが得られればもう1クールやります。状況によってはもう1クールやってCRを目指します。実地臨床と phase studyを含めて、現在までに3例のCRが得られています。
佐藤:縦隔リンパ節の転移所見ということに関してはどうですか。それがCRになるまでやりますか。それともPRの段階でオペに入りますか。
久保田:リンパ節への遠隔転移が残っている場合はオペをしないほうがよいと思います。2クール実施してPRが得られればもう 1クール、合計3クールです。Radiationは40 Gyを上限にして、TS-1とCDDPをなるべく投与します。3クール終わった時点でオペか、外来かをもう一度考えます。
坂本:Radiation をしっかり行いますと、実際には腎臓にかかってしまって機能の廃絶がみられるなど、いろいろなことが想定されますから慎重に当てないといけませんね。
大村:私は、この方が経口摂取できるかどうかがポイントだと思います。もしTS-1が飲めるのでしたら、私はradiationはせずにTS-1/CDDPを選択します。この方は80歳ですし PS 2なので、CDDPは減量しますがTS-1はfull doseでいきます。CDDPは分割せずに通常通りday 8に投与する方法です。もし経口摂取ができなければ、first lineは静注ということになります。最強のregimenはCPT-11/CDDPですが、これを用いるなら両薬剤とも減量します。First lineで効く可能性は高いでしょうが、その後refractoryになった時に経口摂取が可能になっていたら速やかにTS-1/CDDPに移る、そういう strategyでいきます。この方にradiationを施行する場合、縦隔リンパ節にも当てると相当重い骨髄抑制が出ることが危惧されます。しかし、原発巣だけというのも片手落ちのようですね。
久保田:Chemo-radiationの経過で、当たっていないところの縮小というのを結構経験しています。薬が回っているというのもありますけれども。
大村:そうですね。TS-1/CDDPですから、照射野外にも十分な効果を期待できますね。