大村:それとご本人のもう 1つのご希望は、副作用をできるだけ少なくしてほしいということです。ですから副作用が出たらその時点でご本人が化学療法を拒否されるかもしれません。こういった場合、dose設定が非常に難しいと思います。
坂本:副作用が出にくいような doseにします。特に不快な非血液毒性が出てくると非常に嫌がられる傾向があるように思います。
大村:特に消化器症状でしょうね、嫌がられるのは。
佐藤:嫌がられるかどうかということに関しては、一概にはいえませんが高齢者のほうが我慢強いように感じます。本人は自覚症状に関しては我慢してしまい、逆に家族が敏感にそれを感じとってくれます。これも注意しなければならないことですよね。もう 1つ伺いたかったのは薬剤の使いやすさについてですが、FU系薬剤というのは高齢者でもPSが悪い人でも意外に使いやすいという点には異論がないと思います。CDDPは先ほど久保田先生がおっしゃったように、状態が悪い人には我々も分割してしまうのですが、それでも非常に有効な結果が得られるのでまだ使いやすい段階にあります。ですが、その他の薬剤はなかなか使いづらい、個人的には一番使いにくいのは taxaneで、次にCPT-11という順番になると思いますがいかがですか。
瀧内:CDDP、5-FU、taxane、CPT-11のうち、僕が一番使いにくいのはCPT-11です。使う前にいろいろな面で一番気を遣います。P factor の有無(狭窄の状態)や、肺の問題もありますし、使いどころをよく考えたほうがよいですね。
佐藤:先生方は、CPT-11と taxaneについて、何か苦労されたことはありますか。どちらも使い方によっていろいろな副作用が起こりえますが。
坂本:私達は taxol を weeklyで使っていますが、ほとんど問題は起きてこないのです。ただ triweeklyで使いますと、重大な問題が起こる場合がありますね。肺癌の患者さんに triweeklyで taxaneを使ったら神経障害や myalgiaなどの副作用がかなり強く出たことがあります。
佐藤:我々はPS 3 症例の、third lineぐらいの状況で taxaneを使った経験がありますが、あまりよい思い出がなくて。
瀧内:我々の施設ではweekly taxolは PS 3症例にも使っていますが、ほとんどトラブルはないです。
大村:私が気をつけるのはCPT-11のほうです。癌性腹膜炎になっていると、機械的な閉塞がなくても腸管運動が徐々に低下していきます。また、肝十二指腸靭帯のリンパ節転移のために閉塞性黄疸が突然出ることもありますので、使いにくいというよりも注意して使っています。
久保田:Taxaneでは脱毛は目立ちますが、それ以外の自覚症状はそれほどないのです。好中球減少や、TS-1のような消化器症状がないということで使いやすいし、CPT-11は下痢がないので使いやすい。
瀧内:PSが悪いときに、例えば taxolだとステロイドが前処置で使えるのがよいですね。
坂本:ステロイドそのものがよいというデータは、FOCUS試験など、イギリスあたりから出ていますね。
佐藤:施設により患者背景の傾向も若干異なるのかもしれませんね。いろいろと示唆に富むお話をありがとうございました。今回の症例検討では各先生方のご意見がばらばらであり、大変興味深かったです。回答の傾向がないということは、実臨床でみなさんが困っている問題点だったのでしょう。