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CASE6 胃癌リンパ節転移 2005年3月開催

CASE6 写真

ディスカッション 2

経口摂取不能の場合はまず栄養・投与ルートを確保

坂本:私の考えは少し違います。食事摂取ができない、飲めないという前提で5-FUとtaxane系のtaxolかtaxotereを使います。2004年の日本癌治療学会で国立病院機構名古屋医療センターの近藤建先生が発表されたデータでは、5-FU持続静注と weekly taxol という regimenを実施されていて、MSTが四百何十日という成績を出されています。5-FUはcontinuousに600mg/m2を5日間連続投与して、その後 taxolをweeklyで80mg/m2 3回投与1回休薬です。それを1クールとして1ヵ月ごとに行うというregimenで、neoadjuvantに持っていけた症例がかなりあると伺っています。この患者さんは80歳ですから、5-FU は500mg/m2 か400mg/m2 ぐらいに減量します。Weekly taxol については、神経障害やmyalgiaが出ない限りは80mg/m2 weekのfull doseでやります。そうするとご家族の希望されている入院治療が可能です。それで症状が軽減するようであれば、大村先生がおっしゃったような TS-1/CDDP regimenに変更します。大腸癌でもいわれていますが、このような late stageの人には、可能ならばなるべくたくさんの薬を短期間に使ってみるほうがよい結果が出せるような気がしています。

瀧内:この患者さんは80歳とご高齢で、しかも PSが2とconditionが悪いということ、それから噴門部癌ということで経口摂取が十分にできない状況であること、さらにM1 lymph nodeが腫れていること、この3つがポイントだと思います。私自身はTS-1単剤療法を実施したいのですが、将来増悪した場合に狭窄を生じる可能性がありますので、まず内視鏡的に胃瘻を形成しておいて、いわゆる栄養ルートを確保した上でTS-1という選択肢を考えたいと思います。PSと年齢を考慮して、できればcombination chemotherapyは避けたいと思います。TS-1が十分飲めないということでしたら、入院していただいて5-FU 800mg/m2の持続静注を行う可能性もあります。また久保田先生もおっしゃいましたように、将来的にはradiationに期待しています。特に噴門部癌に対するchemo-radiationは、Ajaniらの論文(J Clin Oncol 23(6): 1237, 2005)によると非常に良好なresponseがありますので、狭窄を伴う胃癌に対して将来的に attractiveなオプションになり得るのではと思います。

佐藤:私達の施設では、ここ 2〜3年で縦隔リンパ節転移の症例を数例経験してきました。原発巣が噴門部にあって縦隔リンパ節に転移した症例に対しては、TS-1/CDDP併用療法を実施して、明らかな縮小あるいはほぼ消失に至りました。Pathological CRかどうかといわれると難しいところですけれども、オペは検討可能な状態です。でもオペをしても縦隔リンパ節の転移巣が残る状況では、radiationも視野に入れた包括的な治療法を考えないといけないなと思いました。

久保田:先ほど瀧内先生がおっしゃった Ajaniらの論文は、neoadjuvantでステージ II の症例にchemo-radiationを実施しており、pathological CR率が20%です。Radiationは、Macdonaldらによるadjuvant chemo-radiotherapyの論文(N Engl J Med 345(10): 725, 2001)発表以来、胃癌での実施を再認識される時代になったのではないかと思います。

佐藤:本出題症例のポイントは、瀧内先生のご指摘のとおりご高齢であること、PSが2であること、噴門部癌であることです。噴門部癌ということでこの方は薬を飲める状況だと考えていますが、飲めないけれど液状のものなら通過するという状況のときは、私達の施設ではTS-1を脱カプセルすることがあります。そういうご経験はお持ちでしょうか。

瀧内:Chemo-radiationでTS-1/CDDPを実施する studyが国立がんセンター東病院で行われていますが、その場合、経口摂取不可能になるということで、まず胃瘻をつくって胃瘻からTS-1を投与しています。その時のpharmacokineticsは内服と変わらないというデータが出ていますので、患者さんが胃瘻を承諾するなら、栄養ルートかつ薬剤の投与ルートとして機能すると思います。ファイバーが通過する今のうちに考慮すべきでしょう。

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