大村:GEMとTS-1の併用という方法もありますが、基本は単剤のsequential治療だと思います。その場合、どちらをfirst lineにするかも重要ですが、どこでsecond lineに切り替えるかも大きなポイントとなりますので、ぜひ先生方のご意見を伺いたいと思います。すなわち、『例えばTS-1をfirst lineとした結果、腫瘍マーカー値の著明な低下と腫瘍径の縮小、リンパ節腫大の縮小が認められ、鎮痛剤は不要になり、体重の増加も認められた。PSは0を保っている』と仮定した場合、second lineへの切り替えは何をポイントにしますか。
久保田:C先ほどの佐藤先生のお話では、TS-1の場合は切り替えの判断のポイントが明確だということでしたが、いかがですか。
佐藤:抗腫瘍効果だけで判断できるという意味では、明確です。しかし、実際の臨床では、例えば腫瘍マーカーが上昇しても画像上には変化がないような場合があり、判断は難しくなります。増悪という判断のポイントが難しいのです。肝転移巣があればわかりやすいのですが、原発巣やリンパ節腫大は増悪の判定には使いづらいことが多いと思います。大村先生のお話に対してですが、私は治療の効果により腫瘍径が小さくなり、その後、増悪してきた場合には、例えばRECIST基準のように20%の増大でPDとは判定せず、baselineの近くに戻るところまで治療継続しています。
坂本:それは、baseline PDという考え方ですね。
大村:瀧内先生、いかがですか。
瀧内:癌種によっても違いますので、難しいところだと思います。この症例の場合、画像で明らかに増悪があれば、膵癌の進行の早さと、GEMという選択肢があることを考えて早めに切り替えます。もう1つのポイントは腫瘍マーカーですが、値が有意に上昇したのであれば、画像上変化がなくても注意が必要です。通常、腫瘍マーカーは、保険診療の範囲内では月1回しか測定できませんが、有意な上昇があれば同月であってももう一度測定し、さらに有意な上昇がみられたらsecond lineに切り替えます。進行が緩やかな大腸癌であればともかく、膵癌では翌月まで経過をみることはできないと思います。使いたい薬剤をすべて使い切ることが大切ですから、悪化しすぎてから使うよりは、早いうちに次の一手を打つべきだというのが私の意見です。
大村:Second lineに切り替えるタイミングも、癌種によって違うということですね。
佐藤:癌種によって、進行の早いものと遅いものがありますから、早いものでは観察するポイントを増やす必要があると思います。大腸癌などと同じ間隔で観察していたら、気づいたときには進行しすぎてしまうことにもなります。保険診療上は難しいですが、胃癌や膵癌では腫瘍マーカー検査は外来でも月2回は行うことが望ましいと思います。場合によっては、さらに頻繁に行う必要があります。そうすれば、切り替えの時期を逃すことはないはずです。