WEBカンファレンス | 掲載した治療法は、カンファレンス開催時点での最新知見に基づいて検討されたものです。

CASE7 進行膵癌 2005年7月開催

CASE7 写真

症例プロファイル

患者 82歳、男性
主訴 心窩部不快感、背部痛
既往歴 79歳時に肺癌に対して肺部分切除術を受けた
家族歴 特記すべきことなし
患者の希望
  • 1) 治る可能性が低いのであれば、手術は受けたくない。
  • 2) 手術しないのならば一日も早く退院したい。
  • 3) 痛みをとってほしい。今は薬で背中の痛みが薄らいでいるので食欲も出てきた。
  • 4) 週に1回くらいの外来通院は 無理なくできる。
  • 5) 手術以外で痛くない治療であったら何でも受けるが、食欲がなくなるのは少々困る。

現病歴

 平成16年夏ごろより心窩部不快感が出現し、食欲も低下した。秋になって徐々に増悪する背部痛を認め10月に近医を受診した。同医で施行された胃内視鏡検査にて胃前庭部小彎に2型の腫瘍を認め、生検組織の病理組織学的診断は高分化腺癌であった。手術目的で当院を紹介され入院となった。

 入院後に施行した胃内視鏡検査では、前庭部小彎の病変以外に体中部後壁の発赤を伴う隆起が指摘されたが、同部から癌細胞は検出されなかった。腹部CT検査で膵体部〜尾部にかけて最大径8cmの腫瘤を認め、胃への直接浸潤が疑われた。また、腹腔動脈、総肝動脈、脾動脈周囲から大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた。続いて施行された腹部MRI 検査にて膵の腫瘤は膵管癌と診断された。また、MRI 検査とCT検査双方の所見をあわせ、腫瘍は胃体部へ直接浸潤しているものと考えられた。さらに、 胃前庭部の腫瘍細胞はSmad陽性であり、膵癌の転移と判明した。なお、入院後まもなく背部痛に対しNSAIDsが無効となり、経口モルヒネ製剤の投与が開始された。

身体的所見

  • 身長160cm、体重49kg
  • 最近6ヵ月間に10kgの体重減少を認めた
  • 右側胸部に手術痕あり
  • 腹部は平坦、軟
  • 心窩部やや左側に小児手拳大の腫瘤を触知
  • 肝、脾は触知せず、腹水なし
  • 眼瞼結膜、貧血なし・黄疸なし
  • PSは0

検査所見1

血液学的検査
WBC 5,100 Neutro 3,400
RBC 429 Hb 14.0
Plt 22.6    
生化学的検査
Na 138 K 5.4
Cl 102 Ca 9.7
P 3.4 BUN 23
Cr 0.97 TP 6.7
Alb 4.4 T-Bil 0.8
AST 23 ALT 21
ALP 208 γ-GTP 14
腫瘍マーカー
CEA 39.9 CA19-9 2,289

検査所見2

胸部〜骨盤CT検査所見

1) 進行した膵癌である。
2) 胃の腫瘍も膵癌からの転移である。
3) 多数のリンパ節に転移があり、手術を施行しても根治率は(極めて)低い。
4) 手術の侵襲は大きく、合併症発生率も低くない。
5) 胃は全部とらねばならず、手術から回復しても食事の摂取は制限される。

出題:大村先生

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