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CASE 9 大腸癌術後化学療法 2005年11月開催

CASE9 写真

ディスカッション 3

リスクを規定したうえでstage IIに対する術後化学療法の臨床試験を

久保田:高リスクのstage II 大腸癌に対する術後化学療法について、『大腸癌の治療ガイドライン 医師用2005年版』には具体的な記載がありませんので、判断に迷うところだと思います。MOSAIC trialのエビデンスはありますが、先ほどのお話にありましたように、日本ではFOLFOX 4による術後化学療法は保険診療上認められていません。そうしますと、次の選択肢としては、Roswell Park regimen(RPMI)あるいはLV/UFTを6ヵ月間というのも考えうるのではないでしょうか。
* 「再発高リスクstage II結腸癌に術後補助化学療法を行う場合もある」と記載されている

瀧内:外科の先生方の間では、こうした症例に対し、化学療法を行うことにはコンセンサスがあるのですか。

大村:外科医でも、人によって判断が異なると思います。この症例は、ly3 、v3でstage IIですが、特に
n(−)については、何切片みているかで、stageが変わる可能性もありますね。ですから、限りなくstage IIIに近いstage IIだと考えられます。

瀧内:ただ、stage IIIAとIIIBでは成績がだいぶ違いますね。化学療法はstage IIIBしか行わないという外科の先生も多いと伺っています。

坂本:無作為化試験の結果からは、大腸癌のstage IIIでは、 IIIAでもIIIBでも、予後に有意の差はないというデータも出ていますので、あまり細かく分類しなくても良いかもしれません……。

瀧内:しかし、今回のようなstage IIの患者さんにMOSAIC trialのデータを示せば、FOLFOXを希望される方は多数いらっしゃると思います。

坂本:確かに、stage IIで、あれだけの症例数で検討していますから、説得力はあると思います。

久保田:最近では、WolmarkらによるFLOXのtrial、NSABP C-07が報告されましたね。

大村:NSABP C-07試験は、stage II、IIIの大腸癌を対象に行われ、FLOXが、LV/5-FU(RPMI)に対してDFSにおいて4.9%の上乗せ効果のあることを示しました。L-OHPの上乗せ効果は約5%あり、再発の少ないことを加味しますと、上乗せ効果はさらに意義が大きくなると思います。日本のN・SAS-CC試験はいかがですか。

坂本:海外と比べると、症例数がどうしても十分でないと考えております。直腸癌が300症例弱で、結腸癌が約500症例ですが、海外では2,000〜3,000症例を対象にしたtrialが主流です。例えば、CPT-11をLV/5-FUに併用するAccord02 trialが、高リスクのstage III 大腸癌患者400例を対象に行われています。それだけの症例で検討しても、CPT-11併用による上乗せ効果を示す結果が出なかったというのは、ごくわずかな差を見つけるためには、やはり1,000例単位の大規模試験が必要ということではないでしょうか。

瀧内:逆に全くのネガティブスタディになっていますね。

大村:術後化学療法の適応・予後について考えるとき、外科医のスキルも関わってきますし、さらに病理学的な診断も重要ですから、この分野に関しては、海外における進行再発例のデータよりも日本のデータを尊重したいと考えています。

瀧内:そのためには、結腸癌のデータを待つことが重要ですね。

佐藤:もう1つの側面としては、久保田先生がおっしゃるように、日本にはせっかくガイドラインがあるのですから、ガイドラインにおいて高リスクの定義を規定し、ある程度一定の基準を設けて、臨床試験を行っていく必要があると思います。そうしないと、恐らくいつまでもstage IIに対する術後化学療法の効果について、有意差が出る、出ないで議論が続きます。Stage IIを高リスクと低リスクに分けて臨床試験を実施しない限り、明確な結果は出ないと思います。

久保田:MOSAIC trialやNSABP C-07 trialなどの国際的なエビデンスはありますが、日本のように、保険診療の面から術後化学療法としてFOLFOX、FLOXを使えない状況ですと、高リスクで、できるだけ再発を抑えてもらいたいという患者さんの希望を考慮して選択するのは難しいですね。日本の日常診療ではLV/UFT、あるいはRPMIを6ヵ月間というところでしょうか。

大村:そうですね。実臨床ではそういうことになると思います。

坂本:そうした世界の情勢についてもインフォームド・コンセントを行っていくなかで患者さんに説明し、患者さん自身に選んでいただく時代だと思います。個人輸入してもらうこともできますし、それを希望される患者さんもいるでしょう。

久保田:インターネット等で知識を得ている患者さんもいますから、L-OHPのエビデンスをもとに、自由診療も選択肢の1つとしてとらえるべき時代になってきたのかもしれません。

坂本:Stage IIに関しては2〜3%の上乗せだということですが、それでも十分に大きな効果だと思います。

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