治療方針の大半は対症療法である。一般的な処置は、安静、腹部保温、食事内容の変更である。乳製品、カフェイン含有飲料、アルコール、高脂肪食を避け、高浸透圧のサプリメントを中止する。食事は少量ずつ摂取し食事回数を増やし、1日コップ8〜10杯を目安に、経口補水液やスポーツドリンク等による積極的な水分摂取を実施する。また、grade 2以上の下痢の場合は、症状が改善するまでは薬剤を中止し、減量を考慮する。
薬物療法としては、収斂薬 (タンニン酸アルブミン、次硝酸ビスマス)、吸着薬 (天然ケイ酸アルミニウム)、腸管運動抑制薬 (ロペラミド、コデインリン酸塩、ブチルスコポラミン臭化物)、オクトレオチド*が用いられる。また、grade 3以上の下痢の場合には抗菌薬の併用を考慮する。
*ASCO®のガイドラインではgrade 3以上の下痢の対処法の1つとして推奨されているが、本邦における保険適用はない(2013年11月現在)。
癌治療に伴う下痢治療のガイドラインに関しては海外の報告があり3, 4)、grade 1/2で、危険因子 (腹痛、悪心・嘔吐、PSの低下、発熱、敗血症、好中球減少、出血傾向、脱水) がない場合はロペラミドの投与を推奨している (図2)。また、ロペラミドを投与しても48時間以内に下痢が改善しない場合、危険因子がある場合、grade 3以上の下痢の場合はオクトレオチドの投与を推奨している。
一方、CPT-11による下痢に対しては、腸管内のアルカリ化5) や半夏瀉心湯の投与6) に関する報告がある (図3)。
CPT-11の活性代謝物SN-38は中性〜酸性条件下で細胞移行性があるラクトン体を形成しているが、アルカリ条件下ではラクトンが開環し、カルボキシル体となって極性が高まり、細胞移行性が低下する。また、半夏瀉心湯に含まれるオウゴンにはフラボン誘導体のバイカリンが含まれ、これは腸内細菌のβ-グルクロニダーゼを阻害するため、腸管内でのSN-38グルクロン酸抱合体からSN-38への変換を抑制すると考えられている。
化学療法前の便の性状と量を把握した上で、下痢の回数、排便量、性状 (水様、血便など) を評価する。また、腹痛、悪心・嘔吐、PSの低下、発熱、敗血症、好中球減少、出血傾向、脱水・電解質異常の有無を把握する。さらに食事の内容や水分のin-outバランスを評価し是正する。
下痢には食事性因子、食物アレルギー、物理的刺激、心因性、薬剤性等の様々な要因があり、化学療法を含めた多方面から症状の原因を考察することが必要である。
Reference
- 1) トポテシン点滴静注®インタビューフォームより
- 2) 5-FU注協和®のインタビューフォームより
- 3) Benson AB 3rd, et al.: J Clin Oncol. 22(14): 2918-2926, 2004[PubMed]
- 4) Maroun JA, et al.: Curr Oncol. 14(1): 13-20, 2007[PubMed]
- 5) Takeda Y, et al.: Int J Cancer. 92(2): 269-275, 2001[PubMed]
- 6) Mori K, et al.: Cancer Chemother Pharmacol. 51(5): 403-406, 2003[PubMed]
GI cancer-net
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