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皮膚障害-2 手足症候群  監修:遠藤 一司先生 (明治薬科大学)
対策

予防

 手足症候群に対する確立された治療はなく、現時点では予防が最も重要である。
 手足症候群において認められる角質層および表皮の細胞肥厚・錯角化は、表皮の乾燥によって増悪するとされる。また、皮膚に対する圧迫・熱・摩擦などの物理的刺激も危険因子になる。特に足底は歩行などで常に負荷がかかる部位であるため、手掌に比べて症状が発現しやすい傾向にある。
 そのため、患者に対しては物理的刺激を避けるよう指導を行い、治療前から手掌や足底に角質軟化作用をもつ尿素やサリチル酸を含む軟膏であらかじめ保湿を行い、角質処理をすることが推奨される。1日に2〜3回 (朝、就寝前など) 手足に塗布すること、そして特に乾燥している部位や肥厚がみられる部位は念入りに塗布するように指導するとよいだろう。その際、前治療で抗EGFR抗体薬 (Cetuximab、Panitumumab) を施行し亀裂が残存している場合では、尿素配合剤を使用すると痛みが出現することがあるため、ヘパリン類似物質やワセリンなどを使用することも推奨される。なお、ビタミンB6の内服は、手足症候群に対する補助的療法として検討された結果、Capecitabineによる手足症候群には無効であったことが報告されており、Regorafenibによる手足症候群での有効性についても明らかではない。

実際の投与方法

 基本的には各薬剤の休薬・再開・減量基準に準じて行う。当院で実際行われているRegorafenib投与のアルゴリズムを以下に示す (図3) 8)。目標はgrade 3の手足症候群の出現を防止し、投与を継続することであり、治療前・中は前項で述べた予防をあらかじめ実施する。
 Regorafenib開始後にgrade 1の手足症候群が出現した場合、Regorafenibの投与はそのまま継続し、ベリーストロングのステロイド軟膏 (例:マイザー®軟膏) の使用を開始する。
 Grade 2に増悪した場合は、1回目の発現時にはRegorafenibを1段階減量して投与継続することを考慮する。また、同時にストロンゲストのステロイド軟膏 (例:デルモベート®軟膏、ジフラール®軟膏) を使用する。
 これらを行っても7日以内に症状が改善しない、または悪化するようであれば、grade 1以下に改善するまでRegorafenibを休薬し、改善後は1段階減量し再開する。
 痛みがあり、生活に支障があるgrade 3の状態では、Regorafenibは休薬し、尿素配合剤やステロイド軟膏といった支持療法薬にて症状の改善を促す。そして、grade 1以下に改善したことを確認し、Regorafenibを1段階減量し再開する。なお、症状が回復すればステロイドのランクを下げて使用する必要があり、強いクラスのステロイドを漫然と使用し続けることは避けなければならない。
 手掌や足底は薬剤吸収が悪いので、ストロンゲストのステロイド軟膏を初期段階から使用していくことは問題ないと考えられる。また、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の内服やクーリングなども疼痛の緩和に有効である。
 フッ化ピリミジン系製剤における手足症候群に対するマネジメントも同様である。発現したgradeに応じて休薬・減量を行うことで治療継続を図っていく。

図3
図3
管理のポイント

具体的な生活指導のポイント

 手足の過度な保温、荷重、摩擦は症状を悪化させる可能性があるため、日常生活において手足の安静を保つよう指導する (図4)。

図4
図4

減量と治療効果の関連性

 毒性が出た場合などの適切な休薬や減量は、治療効果に影響がないことがCapecitabineにおける臨床試験にて報告されている9)。そのため、患者に対しては強い疼痛がみられた場合、電話連絡する指示を徹底する。

Reference

  • 1) 厚生労働省: 重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群, 2010
  • 2) 手足症候群アトラス 第3 版, 中外製薬株式会社, 2009
  • 3) Twelves C, et al.: N Engl J Med. 352(26): 2696-2704, 2005[PubMed
  • 4) Cassidy J, et al.: J Clin Oncol. 26(12): 2006-2012, 2008[PubMed
  • 5) Grothey A., et al.: Lancet. 381(9863): 303-312, 2013[PubMed
  • 6) Yoshino T, et al.: JSMO 2012: abst #PLS-4
  • 7) Grothey A, et al.: 2013 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3637
  • 8) 設楽紘平・山崎直也: 大腸癌に対するレゴラフェニブ, メディカルレビュー社, 2013
  • 9) Haller DG, et al.: J Clin Oncol. 29(11): 1465-1471, 2011[PubMed
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