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高血圧  監修:谷口浩也先生(国立がん研究センター東病院)
対策2,3)

 高血圧の副作用を有する主な抗癌剤の添付文書や適正使用ガイドに記載されている対策を表4に示す。

表4:各抗癌剤における高血圧時の対応について
[各薬剤の添付文書または適正使用ガイドより引用(一部改変)]
表4

 降圧薬治療を開始する目安は多くの薬剤でgrade 2(収縮期血圧140〜159mmHgまたは拡張期血圧90〜99mmHg)となっており、『高血圧治療ガイドライン20141)』における降圧目標と矛盾はない。また、降圧薬服用を開始してもgrade 3の高血圧を認めた場合は降圧薬の追加や薬剤変更を考慮するとともに、原因薬剤の休薬が推奨される。
 使用する降圧薬については、VEGF阻害薬における高血圧に対して各種降圧薬の比較試験が実施されたことはなく、降圧薬の中での推奨の程度に明確な違いはないのが現状である。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はVEGF阻害作用によって生じる蛋白尿を予防できる可能性もあり、重篤な高血圧でない場合については良い適応である。また、カルシウム(Ca)チャネル拮抗薬は降圧効果が比較的強いことや、VEGF阻害薬により誘導されるNOシグナル伝達の障害によって生じる血管平滑筋細胞収縮を減少させる作用機序からも有効と考えられる。しかしながら、Diltiazemなどの非ジヒドロピリジン系Caチャネル拮抗薬は、シトクロムP450(CYP)3A4を阻害することにより、CYP3A4で代謝されるマルチキナーゼ阻害薬の血中濃度上昇につながる可能性もあるため、比較的CYP3A4の阻害作用の少ないAmlodipineやNifedipineなどのジヒドロピリジン系Caチャネル拮抗薬を使用すべきである。
 さらに、VEGF阻害薬における高血圧は可逆的であることから、原因薬剤の中止・減量により高血圧は改善することがほとんどである。

管理のポイント

 VEGF阻害薬での治療前の心血管の包括的評価に加え、治療開始初期の評価、血圧上昇の初期兆候を見逃さず降圧薬を用いた血圧管理を行うことが大切である。VEGF阻害薬による高血圧のリスク因子は十分に解明されていないが、高血圧の既往歴・抗VEGF阻害薬の併用療法・65歳以上・喫煙や高コレステロール血症があると考えられている4)。また、前治療でVEGF阻害薬を使用した場合はその際の血圧状況を考慮しつつ、新規に使用するVEGF阻害薬による血圧の変化に注意する必要がある。
 高血圧の発生頻度を考慮すると、VEGF阻害作用を有する化学療法施行患者に対しては、全員に血圧のモニタリングを実施することが望ましい。血圧の測定については、診療室の血圧測定のみでは十分でなく、家庭での血圧測定の実施と測定値の記録を指導することが重要となる。
 測定方法は、朝(起床1時間以内・排尿後・朝の服薬前・座位1〜2分安静後)と就寝前(座位1〜2分安静後)を基本とするが、そのほか適宜、自覚症状のあるときなどに測定を行ってもらうことも重要である1)

References

  • 1) 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編:高血圧治療ガイドライン2014.ライフサイエンス出版,2014
  • 2) Izzedine H, et al.: Ann Oncol. 20(5): 807-815, 2009[PubMed
  • 3) Abi Aad S, et al.: Crit Rev Oncol Hematol. 93(1): 28-35, 2015[PubMed
  • 4) Small HY, et al.: Can J Cardiol. 30(5): 534-543, 2014[PubMed
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