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尿蛋白  監修:谷口浩也先生(国立がん研究センター東病院)
対策

 血管新生阻害剤による尿蛋白に対する確立された予防・治療法はなく、現時点では定期的な尿蛋白測定を行い、早期に発見することが重要である。治療中に尿蛋白を認めた場合は、尿蛋白のgradeと血管新生阻害剤による治療継続のリスク・ベネフィットを加味したうえで減量・休薬を考慮する。

減量・中止基準

 基本的には各薬剤の減量・休薬・中止基準に準じて行う。実臨床では、尿蛋白がgrade 1であれば投与を継続し、grade 2以上の尿蛋白が発現した場合に一時休薬や減量を考慮することが多い。

 Ramucirumabのアルゴリズムを以下に示す (図1)6)。  

  • Grade 1(尿蛋白1+)の場合は、投与継続可能。
  • Grade 2(尿蛋白2+)またはgrade 3(尿蛋白3+)の場合は、24時間蓄尿による定量検査で蛋白量を測定し、以下の対処を行う。
  • 2g/日未満の場合は投与継続可能。
  • 2g/日以上3g/日未満の場合は2g/日未満に低下するまで休薬し、減量して再開。
  • 3g/日以上またはネフローゼ症候群を発現した場合は投与中止。

図1:Ramucirumabの尿蛋白発現時の対処方法
図1
管理のポイント

 進行すると、ネフローゼ症候群を発症し血管新生阻害剤の投与中止に至る可能性があるため、治療中は定期的に尿蛋白測定を行い、尿蛋白を早期に発見することが重要である。尿定性検査だけでなく、UPC比も測定すると、尿蛋白評価の精度が高まり有用である。加えて、定期的な血圧測定と高血圧発現時の降圧薬による十分な血圧コントロールも重要である。休薬や減量しても尿蛋白が改善しなかったり、悪化したりするような場合には腎臓専門医へコンサルトすることも考慮する。
 尿蛋白は自覚症状が少なく、患者は尿蛋白の発現に気付くことは難しいが、浮腫や体重増加、尿の泡立ちを認める場合には早めに相談するように指導する。

References

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  • 6) サイラムザ®点滴静注液適正使用ガイド(治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌),日本イーライリリー株式会社
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