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カテーテル関連血流感染  監修:室圭先生(愛知県がんセンター中央病院)
予防

 CRBSIの治療に必要な費用は、非常に大きいことが報告されている。例えば、本邦における医療経済学的研究により、ICU入室患者がCRBSIを生じると追加医療費は、571万円とする報告もある14)。従って、CRBSIは、予防に勝る治療はない。

1)挿入時のバリアプリコーション

 CRBSIを防ぐためには、カテーテル造設時の感染対策から始まる。カテーテル挿入は、マキシマル・バリアプリコーション(キャップ、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、全身用の滅菌ドレープの使用)を装備して行うことは、これらを使用しない場合に比べ感染頻度が低いことが報告されている[4件/176挿入(マキシマル・バリアプリコーション)vs. 12件/167挿入(標準的バリアプリコーション);p=0.03]15)。マキシマル・バリアプリコーションの効果は、挿入場所の影響より強く、マキシマル・バリアプリコーションを用いて病棟で挿入されたカテーテルは、これを用いないが衛生的な手術室で挿入されたカテーテルより感染頻度が低いことも報告されている16)

2)皮膚消毒

 カテーテル造設時および穿刺時の感染を皮膚消毒により排除することが重要である。カテーテル刺入部の皮膚消毒に使用される消毒剤としては、クロルヘキシジンアルコール、70%イソプロパノール、消毒用エタノール、10%ポビドンヨード、ヨードチンキなどがある。中心静脈カテーテルを挿入した患者の皮膚消毒を2%クロルヘキシジンと10%ポビドンヨード、消毒用エタノールに無作為化した比較研究では、2%クロルヘキシジンを使用した場合のCRBSIの頻度(2.3%)は10%ポビドンヨード(9.3%)、消毒用エタノール(7.1%)に比べ有意に低いことが報告されている17)。従って、米国疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインでは、クロルヘキシジン濃度が0.5%を超えるアルコール製剤の使用が推奨されている18)。クロルヘキシジンは、皮膚への残留性が良好であり、アルコールと組み合わせることにより良好な皮膚消毒効果を示すことが挙げられる19)。クロルヘキシジンは、健常皮膚には、低刺激で安全な抗菌剤と思われるが、混在するアルコールを含めて過敏症を示す患者も存在する。その場合、代替的にポビドンヨードを使用する。ポビドンヨードは、塗布部位が見え、術野消毒などに使い慣れた消毒剤であるが、効果発現に時間が必要であり(乾燥させるまで)、皮脂や垢などの有機物で効果が減弱するため、これらが多い皮膚にはポビドンヨード適用前にアルコールにてこれらを除去する必要がある。また、皮膚のカミソリによる剃毛は、皮膚を傷つけ皮下の血流感染を増加させるため、除毛は、サージカルクリッパー(電気カミソリ)が望ましい20)

3)ドレッシング

 ドレッシングとは、カテーテル挿入部の皮膚を密封し、清潔状態を保つことを目的に行われる。ドレッシング材としては、フィルム型とガーゼ型がある。前者は、入浴時の保護に優れ、ガーゼ型より交換頻度が長い。ドレッシングの交換サイクルは、フィルム型では1週間、ガーゼ型では48時間程度が感染頻度で同等とされ目安となる21)。一方でフィルム型ドレッシングは汗や体液を外に漏らさないため、多汗症や滲出液のある例では避けるべきである。メタアナリシスでは、ガーゼ型に比べフィルム型のCRBSIの頻度が高い傾向が示されている(RR=1.69;95% Cl: 0.97-2.95)22)。一方、両者を比較したRCTでは、挿入部の感染率は、フィルム型5.7%とガーゼ型4.6%で有意差を認めないという結果23)もあり、現在両者の優越は明確ではない。最近、クロルヘキシジン含有ドレッシング材が開発されており、感染リスクを4割程度減らす可能性がある24)

4)CRBSIを生じやすい薬剤

 脂肪乳剤、血液製剤の投与は、CRBSIのリスク因子として知られる。特に脂肪乳剤使用後のCRBSIは、オッズ比9.4倍高いとの報告もあり顕著である25)。CVポートでの脂肪乳剤、血液製剤投与では、セプタム内や投与後のカテーテルに薬液が残存することが血栓形成やCRBSIのリスク原因となる。同様にポートからの採血や血液の逆流も血液製剤投与にポート内に薬剤が残存する可能性がある点で、CRBSIのリスクとなる。従って、薬剤投与後のポートは、10mL以上のシリンジを用いて生理食塩液(グローションタイプの場合;カテーテル先端にスリットが入っており逆流しにくい構造)やヘパリン(オープンエンドタイプ)での十分なフラッシュやロックを行うことが必要である。また、輸液フィルターは、口径から輸液に細菌が混在したとしても、これをトラップすることが可能とされる。しかし、フィルターがCRBSIを低下させるかについては、確定的でなく過信はできない。脂肪乳剤、血液製剤を投与した輸液セットは、24時間毎の交換が望ましい。

5)薬液の細菌汚染

 薬剤としては、脂肪乳剤、血液製剤のほか、末梢でも使用されるブドウ糖加アミノ酸液(Peripheral Parenteral Nutrition)製剤もセラチア菌などが一度汚染すると、室温では半日で著しく細菌数が増える26)。薬液への細菌汚染原因には、ゴム栓を介する場合とカテーテルポートを介する場合があり、いずれもエタノールを含む製剤(クロルヘキシジンアルコール、70%および97%エタノール、70%イソプロパノール)あるいはポビドンヨードでの消毒が有効である27,28)。論文でも、いずれの部位の消毒は、“scrubbing”すると記載されている。つまり、消毒剤を含ませた酒精綿などで、しっかり擦ることが重要である。

6)抗菌薬ロックとエタノールロック

 CRBSIは、カテーテル抜去が原則で、抗菌療法が奏効しにくい理由は、カテーテル内に細菌がバイオフィルムを形成し、そこに埋没するため抗菌剤が到達しにくい点がある。一度形成したバイオフィルムにより高濃度の抗菌剤を接触させる方法が抗菌ロックである。通常は、全身的な抗菌療法と併用されるが、ハイリスクな症例に予防的に使用された報告も多い。使用される抗菌剤としてバンコマイシンが多く、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、セフォタキシム、セファゾリン、シプロフロキサシンなど複数剤併用するレジメンもある。メタアナリシスでは、バンコマイシンや複数抗菌剤併用による抗菌ロックのCRBSI予防効果は、それぞれRR=0.4929)、RR=0.3230)などの有益性が報告されている。同様の目的に、70%エタノールによるロックも試みられている。エタノールは、抗菌剤同様にバイオフィルムを破壊すること、細菌と真菌療法に有効であること、抗菌剤のように耐性化しないことが利点である31)。しかし、抗菌ロックに比べ、エビデンスの蓄積が少なく、ロック時間などのプロトコールが確立していない。

カテーテルの交換・抜去

1)末梢静脈カテーテル

 末梢静脈カテーテルは、感染がなくても72〜96時間毎の交換が必要となる。しかし、ガイドラインによっては、「72〜96時間」という記載がないものもある。これには無作為化比較研究で、3日毎にルーチンにカテーテルを交換する場合と臨床的な判断(タイミング)によって交換する場合で、 いずれも静脈炎の発生率7%と差がなかった結果などが報告されている32)。末梢静脈カテーテルは、カテーテル刺入部の静脈炎や腫れを観察できることが利点である。必要のない末梢カテーテルは抜去する、留置する場合は定期的に皮膚の状態を観察することが重要である。上記の報告では、臨床的な判断による交換でも平均99時間毎に交換されていることは、ひとつの目安になろう。また、留置期間中に流した薬液も重要であり、最長の使用期間は、脂肪乳剤や血液製剤を流さなかった場合に限ることと留意し、感染管理を行う。そして、カテーテル交換時にも輸液ラインは同時交換することが望ましい。
 末梢カテーテルを留置する場合、ヘパリンあるいは生理食塩液によるロックを行う。10単位/mLのヘパリンでも生理食塩液でのロックでも末梢静脈炎や閉塞に差がなく、カテーテルへの細菌付着を促進する可能性も指摘されている33)。一方、100単位/mLのヘパリンロックは、血栓症の予防あるいはカテーテル内のタンパク量を減らすことが報告されている34,35)。ヘパリンでも生理食塩液でも作り置き、使い回しをせず、患者毎にプレフィルドタイプの製品を使用することが安全であろう。

2)中心静脈カテーテル

 中心静脈カテーテルは、ルーチンな交換が不要であり、感染兆候や閉塞など滴下不良時に交換する。中心静脈カテーテルをルーチンに交換した群と感染症状があったときのみ交換した群を比較した研究では、後者の留置期間が有意に長かった(10件の感染を認めるまで累積留置期間;212日vs. 1,112日、p<0.001)36)。中心静脈カテーテルでは、交換頻度が低いほどCRBSI感染頻度が低いとされる。

3)CVポートやPICC

 CVポートやPICCも、ルーチンな交換は不要である。発熱があっても安易に抜去せず、抗菌剤の治療効果を見ながら臨床的判断を行う。しかし、抗菌剤投与72時間以内に効果を認めない場合、抜去すべきである。また、皮下感染(膿瘍)が明らかな場合、心内膜炎、骨髄炎、抗癌剤治療や移植後の免疫低下状態、血栓性静脈炎、心臓ペースメーカー留置などの合併症がある場合や合併症がなくともカンジダ菌などが検出された場合、抜去が原則となる。

治療

抗菌療法

 CRBSIの確定診断が得られたら、血液培養の結果判定を待たず、速やかに全身抗菌療法が必要である。抗菌剤は、経験的に起炎菌としてMRSAを含む黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、カンジダ菌、腸球菌、グラム陰性桿菌が多いことから、バンコマイシンあるいはダプトマイシンと広域スペクトル抗菌剤の経験的併用が推奨されている37)。抗菌剤の選択の詳細については、表1に示した。広域スペクトルの抗菌剤としては、第四世代セフェム系(セフェピムやセフピロム)、カルバペネム系、タゾバクタム/ピペラシリンを用いる。好中球減少や敗血症、多剤耐性グラム陰性菌の保菌者である場合、緑膿菌や耐性菌をカバーする抗菌剤も考慮する。また、カテーテルが鼠径部から挿入され、CRBSIが疑われる場合は、抗真菌剤を使用する。カンジダをカバーするミカファンギンあるいはカスポファンギン、アムホテリシンBリポソームの使用を行うが、non-albicans Candidaの多い地域ではミカファンギンあるいはカスポファンギンを優先し、抜去が不可能な症例には、アムホテリシンBリポソームあるいはキャンディン系薬を選択する。好中球減少のある患者などでは、真菌培養陽性まで1週間程度の時間を要することがあり、それまで抗真菌剤の投与を続けるとともに、陽性化していた真菌培養が陰性化しても14日間程度抗真菌剤を投与する。全身的な真菌感染の74%のルートがカテーテル感染であり、予後不良とされる38)。さらに、CRBSIとして真菌が検出された場合、飛蚊症や眼痛、視力低下といった眼病変の発症頻度は9〜45%である。真菌としては、カンジダ菌が多く、直ちに抗真菌剤治療を開始した場合の発症頻度は、網脈絡膜炎では2〜9%、眼内炎(硝子体まで真菌が浸潤)1〜2%である39)。従って、CRBSIで真菌を検出した場合、直ちに真菌性眼内炎の予防のため眼科受診が重要である。
 CRBSI治療にて、いずれの抗菌剤も血液培養により原因菌の特定と感受性が判明したら、直ちにより原因菌に対して有効な抗菌剤のみに狭域化(de-escalation)した、原因菌限定治療(definitive therapy)に変更する。

表1:CRBSIのempiric therapyおよび抗菌剤・抗真菌剤の選択
表1

CRBSIに対する抗菌療法をいつまで続けるか

 CRBSIは原因微生物により治療期間が異なり、培養陰性化した日から5〜42日の抗菌剤投与が必要である(黄色ブドウ球菌;14〜42日間、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌;5〜7日、腸球菌;7〜14日間、グラム陰性桿菌;7〜14日間、カンジダ菌;14日間)。抗菌剤の使用開始から72時間経ても解熱や血液培養が陰性化しない場合、心内膜炎や化膿性脊柱炎、関節炎、塞栓性肺炎、眼内炎などの転移性病変を疑う。

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