
Q. キャンサーボードの体制や運営状況についてお教えください。
5大がん(肺・胃・大腸・乳・肝)については、毎週がん種ごとにキャンサーボードを開き、新規の患者さんと、治療が変更になった患者さん全員の治療方針を決定しています。胃がん・大腸がんはまとめて1日に行いますが、肝がん、肺がん、乳がんはそれぞれ1日ずつ割り当てていますので、週のうち4日はキャンサーボードを開催していることになります。所要時間は30分〜1時間程度で、薬剤師や看護師も参加します。
Q. 薬剤師や看護師はキャンサーボードでどのような役割を果たすのですか。
薬剤師として、きちんとしたエビデンスのある治療が行われているかどうかをチェックすることや、患者さんがその治療法に耐えうるかどうかの意見を述べることが、私の役割であると考えています。以前はすでに決定された治療方針に従って業務を行っていましたが、キャンサーボードに参加することで、どのような考えでその治療法が選択され、実施されているのかを理解した上で業務を行えるようになりました。キャンサーボードに薬剤師が参加している施設はまだまだ少ないようですが、薬剤師にとっては大きな意義があると思います。
再発時の治療決定の場面では、患者さんがどのような思いで治療を受けているのか、あるいはどのような副作用に苦しんでいるのかなど、外来治療室で関わっている看護師のほうが細やかにわかることがあります。そうした"看護師だからこそわかる情報"を医師に伝え、治療方針に反映させていくことも、キャンサーボードにおける看護師の役割であると考えています。
Q. レジメン登録はどのようにされていますか。
レジメン登録では、最低限phase II試験が実施され、論文化されているレジメンを審査対象にすることを基準においていますが、最近では各科で積極的な臨床試験を実施していることもあり、それらについても適正な判断ができるように審議しています。
手順としては、新規に施行したいレジメンがある場合には、適切な文献を添付して、センター内の「がん薬剤情報室」に申請します(図2)。担当の薬剤師が申請を受け付け、「レジメン審査会」のセッティングや計画書の作成を行います。レジメン審査会は、専門医や薬剤師による計5名程度のメンバーで構成され、申請されたレジメンについて審議します。さらに、その結果を「総合的がん診療委員会」にかけ、そこで承認するという形をとっています。申請から実際に使用できるようになるまでの期間は、おおむね1週間以内です。
Q. 患者さんの教育や服薬指導はどのようにされていますか。
外来化学療法を行う場合、患者さんに治療法や副作用について理解していただく必要がありますので、導入時には、外来治療室で看護師によるオリエンテーションを行っています。導入後は看護師と薬剤師で協力しながら、患者さんの指導にあたっています。
患者さん用の説明資材は、製薬会社のパンフレットを活用することもありますが、主に当院で作成した資材を使っています(図3)。レジメン審査会の際に、副作用管理を統一してできるように、対策の内容をすべて決めていますが、その際、患者さん用の説明資材も作成しているのです。薬剤を投与する順番や投与に要する時間に加え、「なぜこの薬剤を投与するのか」という理由についても解説しています。
図3. 患者用説明資材(大腸がん、cetuximab+CPT-11療法) [拡大表示]

Q. 副作用出現時の対応や支持療法はどのようにされていますか。
施設によっては、医師ごとに輸液や制吐剤の使い方が異なることもあるようですが、当院では同一レジメンであれば診療科に関係なく、支持療法をすべて統一しています。患者さんの身体的な負担をできるだけ軽減し、長期にわたって治療を続けるためにも、副作用対策の標準化は必要だと考えています。また、支持療法の統一は、現場の業務を効率化し、確実性を高めることになるので、リスクマネジメントとしても有用です。
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外来治療室 |
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Q. 緩和ケアチームや緩和ケア外来ではどのような活動をされていますか。
現在、当院には緩和ケアの専門医がおりません。一般には、麻酔科の医師が緩和ケアを担当するケースが多いと思いますが、当院は第三次救急指定病院ということもあり、麻酔科医の多くは救急専門です。そこで、現在は腫瘍内科医の私が緩和ケアチームを兼任しています。緩和ケアチームはセンターの一部門として位置づけており、緩和ケアチームと腫瘍内科をつなぐ形で、「緩和ケア外来」という診療枠を設けています。他科から紹介された患者さんについてはこの緩和ケア外来で、腫瘍内科の患者さんについては腫瘍内科の外来で対応しています。
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