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京都大学医学部附属病院(京大病院)外来化学療法部は化学療法を外来にて安全かつ円滑に行うことを目的として、2003年10月に設立された。京大病院外来化学療法部は日本において初めて専任医師、薬剤師、看護師により運営される外来化学療法部である。今回は、その設立の背景となったコンセプトや日常業務などについて同部 部長 福島 雅典 先生、准教授 柳原 一広 先生、助教 松本 繁已 先生にお話を伺った。
がんは放置すれば進行性、致死性の疾患である。がんが再発した場合、抗がん剤の治療が奏効しなければ死は不可避である。また、がんは全身病であり、診断確定、標準治療の施行、危険の予見およびその回避はクリティカルである。がんの治療においてはこれらのすべてについて集学的に監督する体制が必須であり、このような体制なしにはがん患者の経過を全身病として管理する責任ある医師の育成は困難である。私はかつて、日本の医療における民主化の要ともいえるインフォームド・コンセント普及に尽力し、その過程で腫瘍内科の実践による臨床科学の推進といったコンセプトの重要性を訴えてきた。
今日、腫瘍内科医の実践の場は外来化学療法部となった。京大病院外来化学療法部は腫瘍内科の実践の場でありながら、一方で教育の場となり研究の場となるべく、コンセプトを持って設立された。すなわち、外来化学療法部を通じてオンコロジー教育を行い、また患者の情報を完全データベース化することで高品質かつ効率的な臨床研究を可能とする。つまりは、外来化学療法部における腫瘍内科の実践の質が患者の生活はもとより教育・研究の水準を左右することになっていくのである。
京大病院外来化学療法部の設立から5年が経過し、外来化学療法システムが確立され、わが国における腫瘍内科学のあり方がみえてきた。従来の日本では、がん患者でも初診を行った医師が、継続してその診療科で診察する、といういわゆる縦割りシステムが根強く残っている。しかし、京大病院外来化学療法部は医師、薬剤師、看護師など専任スタッフが横断的な診療を行っており、従来の縦割りの診療体制に一石を投じたといえる。
そして現在では、このような外来化学療法システムは決して目新しいものではなくなってきており、患者主体の、医師と患者が協同でがんという病気に立ち向かう新しい枠組みが作られつつあるといってよい。しかし、外来化学療法部がスタンダードとなる中で、その根底にある臨床科学の思想・哲学そして方法を理解し実践していくことは、今なお日本におけるがん治療のみならず医学・医療の根本的な課題であると考える。
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