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外来で治療を受ける患者さんは、いつものようにまず各診療科で診察を受けて頂き、その後中央採血室で採血をして頂きます。各診療科の担当主治医は採血結果を確認して、外来での治療の可否を判断してもらいます。そして、治療の適応となった患者さんから文書での同意が得られた場合、患者さんにはカルテごと外来化学療法室へと移動して頂きます。
外来化学療法室では私が採血結果を再度確認し、いま一度治療の適応かどうかを判断します。この適応の判断については、ヘモグロビン値や血小板数などの臨床検査値に関する最低の基準を運営マニュアル上に規定しており、これに抵触する場合は主治医がたとえ問題ないと指摘した場合でも化学療法を施行しないというシステムにしています。さらに、このマニュアルには治療中止時における会計など、具体的な事務手続きについても記載しています。
こうしたチェックの後、看護師はバイタルサインをとり、準備ができた時点で穿刺担当の医師に連絡し、医師が血管を確保して点滴治療を開始します。なお、外来治療に限ったことではありませんが、当院では抗がん剤治療の上限投与量や最低投与間隔があらかじめ規定されたレジメンを、コンピュータ上でオーダーする処方システムを構築・運用しています。つまり、過量投与や短い間隔での投与は絶対に起こりえないシステムとなっています。そして、治療後は患者さんに次の外来の予約があることを確認してもらい、お帰り頂きます。
大学のような教育指定病院では人事異動に伴う主治医の交代が頻繁にあるため、レジメンのオーダー方法や外来化学療法室の利用申し込み方法、治療中止時の対応などが新しい主治医に正確に伝わらず、運用に支障を来す可能性があります。そこで、先ほど診療の流れのなかでお話したように、適応の判断やアクシデント時の対応などを含めた「運営マニュアル」を外来化学療法運営委員会(現外来化学療法専門委員会)において作成し、外来化学療法に携わるすべての医療従事者にアナウンスするようにしています。
また、本委員会の役割はこのような運営マニュアルの作成だけではありません。2007年には病院全体での抗がん剤治療の安全性向上を目的に、急性期ばかりでなく、中期、末期の有害事象までをも網羅した“有害事象対応マニュアル”を作成しました(写真:有害事象対応マニュアル)。さらに、その翌年には患者さん向けに“抗がん剤治療のおもな副作用とその対応Q&A”を作成し、冊子やDVDにして院内外に配布するとともに、当療法室のホームページ上でも公開しています(写真:患者さん向けウェブサイト)。
そして、登録されているレジメンについては、「がん化学療法レジメン審査専門委員会」においてその適正を審査しています。現在、ひと通り院内のレジメン審査が終了したので、本委員会は基本的に各診療科から新規レジメンの申請がある時にのみ開催しています。しかし、冒頭で紹介したように、まだ登録レジメン数と実際の使用レジメン数には差があります。診療科が異なるものの対象がん種は同じ、つまり同一のレジメンが延べ2つ存在している場合もあります。そこで現在、本委員会ではレジメンオーダーシステム上のこうした点に関して統一を進めており、適正な登録レジメン数にすべく作業にあたっています。
さらに、全体的な対応としては、「外来化学療法専門委員会」が実際の運営状況を定期的に評価する機会を設け、患者さんに対してわれわれ医療スタッフがいかに効率的な治療を行えるかについて討議しています。
これら各種委員会の設置、定期的な開催、そこでの審議や検討は、外来化学療法室はもとより、病院全体のスムーズな運営を図るうえで不可欠なものです。
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