消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第3回 熊本大学医学部附属病院 外来化学療法室

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県内全圏域共通の連携クリティカルパスと“ 私のカルテ” の運用

 熊本大学医学部附属病院は熊本市内にありますが、外来患者さんの約半数は熊本市以外の2次医療圏からの紹介受診となっています。したがって、地域連携はきわめて重要であり、このような背景を踏まえて熊本市内には当院とともに4つの地域がん診療連携拠点病院が整備されています。すなわち、市内をカバーする熊本市民病院、阿蘇地区をカバーする熊本赤十字病院、菊池地区をカバーする国立病院機構熊本医療センター、宇城地区をカバーする済生会熊本病院があり、また、南部の八代市には熊本労災病院、人吉市には人吉総合病院、北部の荒尾市には荒尾市民病院が拠点病院に指定されています。ただ、それでも熊本市内から比較的距離がある天草や阿蘇などについては熊本市内の拠点病院でカバーしている状況で、これらの地域には拠点病院がなく、2次医療圏ごとに拠点病院を1施設という考え方からすれば、地域がん診療連携拠点病院の整備はこれからの課題となっています。
 一方、熊本県のメリットともいうべき特徴としては、5大がんに関する全圏域共通の病診連携クリティカルパスの運用が挙げられます。昨年県内の開業医にアンケートを取ったところ、実に52%の開業医から回答を頂き、約半数の開業医が「術後の比較的元気な患者さん」や「経口の抗がん剤による補助化学療法を受けている患者さん」であれば協力可能という結果が得られたことから、病診連携パスの作成を行いました。全圏域共通で整備できたのも、県内の各拠点病院が大変協力的であり、病病連携がきわめて円滑に行われていることが大きいといえます。また、この連携パスとともに医療情報と患者希望の共有化を図ることを目的として、県内のどの地域でも共通に使える患者さん用の“私のカルテ”(写真:私のカルテ)を考案し作成しており、2010年から本格運用を目指しています。これは治療にあたり患者さんが日常生活で重視している点などのプロフィールを記入頂くもので、これにより患者さんの生活を尊重した治療計画を組むことができます。さらに、薬剤師や訪問看護ステーションの看護師からのコメントも得られるようにしています。患者さんには連携パス参加の同意書にサインをいただいたうえで、“私のカルテ”を持参して開業医を受診するといった形での運用を検討しています。

私のカルテ

品質の高いデータ集積のために

 2006年度からの3年間にわたって熊本県に予算を組んで頂き、看護師を対象としたがん看護に関する実務研修を実施しました。この研修はそれぞれの病院の中心的な役割を担う看護師を対象としたものです。当院が主体となり、また当療法室も全面的に協力して、年間10〜20名の参加実績をあげることができました。なお、2009年度からは、各拠点病院においてがん看護のスペシャリストとしてのスキルを高めるための研修を、それぞれの病院の予算で行っています。そして、当院は今年からがんの専門薬剤師を養成する研修施設に指定され、薬剤師に対しての研修これから本格的に始まることになります。これについても当療法室は全面的なサポートを考えています。
 また、県の「がん診療連携協議会」が主催するセミナーにおいて、外来化学療法や地域連携に関する話題が講演として取り上げられる場合、私は外来化学療法の立場から積極的に協力することにしています。
 一方、新たな問題として挙げられているのは、オンコロジカル・エマージェンシーというものです。これは、がん患者さんの病態に応じた対処法や救急体制をいかに適切に整備するかということであり、スタッフ全員が問題意識を持って考えるためにワーキンググループを立ち上げました。まだ結論は出ていませんが、スタッフ間や病院間の的確な情報共有化や、いち早く紹介できるシステムなどの構築を検討しているところです。

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