消化器癌治療の広場 GIcancer-net
レジメン管理に関しては、臨床腫瘍科の開設時に、レジメン管理審査部会を臨床腫瘍科運営委員会の下部組織として設置し(図)、国立がんセンター中央病院のレジメンを参考に院内すべてのレジメンを集約し管理するようにしました。現在では、すでに登録済みのレジメンについては副作用や問題点について検討し適宜修正しています。また、新たに申請されるレジメンは、薬剤や投与量などエビデンスに則っているかを、臨床腫瘍科の医師および薬剤師によるダブルチェックによって審査し院内で採用するようにしています。
国立がんセンター中央病院での研修時でも経験したのですが、がん治療はチームでのアプローチが重要ですので、当院においてもさまざまな部門との連携により業務にあたっています。なかでも実際の治療方針の策定については現在、消化器癌、呼吸器癌、婦人科癌領域においてCancer Boardを組織しています。このCancer Boardはそれぞれ関係する診療科のスタッフにより構成されており、消化器癌のCancer Boardであれば、外科、消化器内科、臨床腫瘍科、放射線科、緩和ケア科のメンバーが加わり、呼吸器癌であれば、呼吸器内科、胸部外科、臨床腫瘍科、臨床研究科(病理)、放射線科、緩和ケア科のスタッフがメンバーに加わっています。また、婦人科がんについては、主に婦人科と臨床腫瘍科を中心に緩和ケア科と連携しています。各Cancer Boardでは週1回チームカンファレンスを実施し、検討すべき症例について集学的にさまざまな科の意見を聞きながら個々の患者さんの治療方針を決定するように努めています。
また、一般病院では臨床腫瘍科のような部門が緩和ケアまで担当するケースが多いと思われますが、県立広島病院では一般病院でありながら、臨床腫瘍科と緩和ケア科を併設していることが特徴的です。臨床腫瘍科と緩和ケア科の担当領域についてはオーバーラップする部分も多いですが、現在は臨床腫瘍科が地域の在宅ホスピス医と連携しながら、在宅での緩和ケアを支援し、緊急時には臨床腫瘍科の病棟を提供するなどの対応をしています。また、緩和ケア科は緩和ケア病棟に入院している患者さんへのケアを行うのみならず、一般病棟入院中の患者さんへのケアを緩和ケアチームとして提供しています。緩和ケア科も医師、薬剤師、看護師をはじめ、理学療法士、作業療法士など多職種によるチーム編成を積極的に行っていこうとしていますので、臨床腫瘍科の医師もこのチームに加わり緩和ケア病棟の回診に同行しています。また、緩和ケア病棟は恒常的に混み合いますので、緩和ケア科での受け入れが難しい患者さんに対しては、一時的に臨床腫瘍科の病棟をお使い頂くなどの連携をしています。
広島市は半径2km圏内に県立広島病院、広島大学病院、広島市立広島市民病院、広島赤十字・原爆病院といったがん診療拠点病院が集中して4施設存在しています。そしてそれぞれの病院を通院する患者さんの居住区が交通の利便性などできれいに分かれていることが地域的な特徴ではないかと考えています。つまり各病院ともに比較的近隣の患者さんが来院することになります。したがって、地域がん診療拠点病院ではなく、自宅近くの中小病院で外来化学療法を受けたいと希望される患者さんはほとんどいらっしいません。こういった特徴から、クリニカルパスによる連携を通じて地域の中小病院にて外来化学療法を実施してもらうといった地域連携はあまり行われておりません。それよりもこの地域で重要な地域連携とは、外来化学療法は地域がん診療拠点病院にきちんと集約し、地域の在宅医と連携して患者さんの自宅での生活をフォローアップして頂くことだと考えています。当院でも実際に地域の在宅医のネットワークと連携を図り、普段は在宅医に状態を診て頂いている患者さんもいますし、在宅看取り率も10%前後になってきています。なお、緊急時に搬送された場合でもベッドを回せない場合もありますので、臨床腫瘍科の病床を活用し、症状が安定するまでの一時的な入院、あるいはそのまま緩和ケア病棟へ移行するまでの入院に対応しています。
このような地域連携の窓口として当院は、がん相談窓口を開設しています(写真:がん相談窓口)。ここでは、入院、外来または他の病院を受診されている患者さんに限らず、がんに関する不安や悩み、疑問を受け付けています。当院において外来化学療法を受けながら在宅での支援を行う場合、がん相談窓口を通じて介護保険や訪問看護ステーション、在宅医など在宅医療の際に活用できる資源を紹介しています。そして在宅での受け入れが決まったら、訪問看護ステーションの担当者やケアマネージャーと臨床腫瘍科の看護師や患者さんとそのご家族同席のうえで今後の方向性について話し合うようにしています。もちろん在宅医が同席することもあります。
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