消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第6回 高知医療センター 腫瘍内科

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パスの改良やノウハウの開示で地域連携でのさらなる医療レベルの向上を目指す

写真5 診療連携パス


写真6 がん化学療法施行時の検査、有害事象の手引き

 当院における地域連携クリニカルパスは、これまで「なっとくパス」と呼ばれるパスを中心に運用してきました。しかし、最近の診療報酬改定に伴う点数加算の設定により、加算の要件を満たすものに変更する必要がありました。そこで、新たな「診療連携手帳パス」(写真5)の作成を進め、近々運用を始めようという状況にきています。もちろんこうしたパスは、われわれおよび連携先の医師でお互いに負担が増えるようなものは成立しないので、双方の業務量を減らすことを念頭に置いて作成しています。つまり、われわれ医師が診療時間内に無理なくパスを埋められ、それ以外の箇所に関しては患者教育という面からも患者さん自身に埋めていただくようにし、それを連携先の医師が確認するだけで対応可能となるようにしています。しかも、すべてきれいに完璧なものである必要はなく、できるだけ手間をかけずにコピーなどを貼ることも許容し、実際に困らなければよいというスタンスで運用できればと考えています。

 また、こうしたパスとともに、記載されている指示に従ってもらえれば、より適切に化学療法が施行できるといった数種類のマニュアルや手引きを作成しています。これらには、どのような血液検査が必要か、いつどのような項目を観察するのか、血液検査でどの程度の異常値がみられた場合に休薬するのか、などの内容や実際に行うレジメンの詳細が記されています。またその1つとして、「がん化学療法施行時の検査、有害事象対策の手引き」(写真6)を作成し、これは連携先へ定期的に配布しています。このようにマニュアル化したノウハウをすべて開示する環境を作ることで、われわれの基本的な立場や基本方針を理解していただき、ラーニングカーブ向上、連携先における急速なスキルアップを図ることが可能となっています。もちろんこのような連携を成立させるには、連携先にはなるべくリスクを負わせず診療報酬などに関するメリットを多く享受できるといった点にまで配慮する必要があると思われます。一方でパスに各種マニュアル・手引きを必要に応じて組み合わせるというきめ細かな対応によって、地域連携はより一層進むのではないかと考えています。

高知医療センターおよび県全体としての展望と課題

 現在、当院の外来ケアルームにおける月間、年間の化学療法施行件数は右肩上がりの増加を示しており、受け入れの体制および能力は大変厳しい状況になっています。そこで、2年後をめどにケアルームの移転および60床程度への増床を計画しています。

 また、へき地における医療の質のさらなる向上や、より難易度の高い患者さんに対応していただくためには、当院から指導医の派遣が必要であると考えており、最近、人材の育成を重点的に取り組んでいます。1年後には週1〜2回程度、専門医を派遣できるような環境を整え、各病院・診療所を順番に訪問し、先生方のスキルアップを図るための外来を組んでゆければと考えております。

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