消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第8回 三沢市立三沢病院 腫瘍内科

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三沢市立三沢病院は、青森県東部の三沢市および十和田市ならびに7町村で構成される 上十三 かみとうさん 地域保健医療圏に位置し、地域の中核病院として一次医療から二次医療を担うとともに、一部の高度専門医療を提供している。さらに2010年11月には新病院の建て替え移転が完了し、地域の人々の癒しの館として新たなスタートを切ったばかりである。
一方、がん診療については、2003年4月の化学療法科の開設によって大きな前進を遂げ、2007年1月には地域がん診療連携拠点病院に指定されたことで、地域のがん医療水準の均てん化の実現に向けてその責務を果たしている。そこで今回、チーム医療の実践に基づく外来化学療法の機能強化や、地域連携の推進による地域完結型の医療提供の構築に取り組まれている三沢市立三沢病院医療局長/腫瘍内科 棟方 正樹 先生にお話を伺った。

三沢市立三沢病院 医療局長/腫瘍内科 棟方 正樹 先生

三沢市立三沢病院における外来化学療法の概要

写真1:外来化学療法室

 三沢市立三沢病院における積極的ながん診療への取り組みは、腫瘍内科医としてすでに日本のがん医療、化学療法の第一人者として活躍されていた坂田 優先生が、1999年4月に当院の新院長として就任されたことにより進められてきました。
 院内のがん診療の整備・充実により、まずは2002年4月に専任看護師1名による外来化学療法を開始しました。そして、翌2003年4月には化学療法科を標榜できることとなり、ベッド数4床、専任看護師2名にて外来化学療法室を開設し、同年内に専任薬剤師による抗がん剤のミキシングを始めました。さらに、がん治療におけるアプローチの幅を広げてより多くの患者さんの受け入れを可能にするため、2005年に治療用放射線システムを導入しました。これに伴い、2006年には外来化学療法室を拡大し、リクライニングチェアを3台設置するとともに、専任看護師も3名に増員しました。
 こうした実績が認められ、2007年1月、地域がん診療連携拠点病院に指定されることとなり、同年4月にはベッド数7床およびリクライニングチェア3台へとさらに増床し、院内がん登録も開始しました。そして、2010年11月8日の新病院への移転にあたり、外来化学療法室は十分なスペースを確保することができたため、現在はベッド数10床、リクライニングチェア3台を設置し運営にあたっています (写真1)。

写真1:外来化学療法室

 スタッフは、がん薬物療法専門医2名を含め内科医師5名、乳腺外科医1名、日本臨床腫瘍学会暫定指導医2名と共に、がん化学療法看護認定看護師2名を含む専任看護師3名ならびにがん薬物療法認定薬剤師1名を含む専任薬剤師3名がチームとなって外来化学療法に携わっています (写真2)。

 患者さんに対し、医師は入院から外来まで継続した主治医制をとり、専任看護師は診察から治療、電話相談まで一貫した関わりを持ち、専任薬剤師はミキシングおよびレジメン監査といった役割を担っています。また、新病院への移転を機に、化学療法プロトコールは登録制とするとともに、電子カルテシステムによるレジメン管理を開始し、患者さんの安全性へのより一層の配慮と効率化を目指した工夫を施しました。

 ここ数年における外来化学療法の施行件数はひと月あたり延べ150件程度、年間で延べ2,000件前後に達しています (図1)。基本的にすべてのがん種に対応しており、その内訳は胃がんや大腸がん、膵がんといった消化器がんの患者さんがおよそ半数で、残り半数は肺がんなどの呼吸器がん、乳がん、卵巣がん、子宮がんといった婦人科がんなどです。さらに、がんの診断から治療そして緩和医療に至るまでを当院ですべて行っており、いわば“がん患者さんを放り出さない医療”を目指しています。

図1 外来化学療法件数の推移

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