総合病院 国保旭中央病院は、2011年5月に新しい本館が稼働を開始し、これまで7つの病棟に分散していた診療機能の多くを本館に移転することで、スムーズな診療科間の連携に向けて動き出した。同時に救命救急センターや外来化学療法を担う化学療法センターが新設され、地域の患者さんに対する高度医療の拠点としてさらなる発展が期待される。とくに化学療法センターでは、これまで各科で独自に行われていた化学療法を同一フロアで実施および管理することが可能となり、がん診療におけるチーム医療や患者さんに対するサポートの充実などの取り組みが進められている。そこで今回、総合病院ならではの外来化学療法やがん診療の特徴について総合病院 国保旭中央病院 化学療法科 中村 朗先生にお話を伺った。

　総合病院 国保旭中央病院は、千葉県の東部から茨城県の一部を含む診療圏人口100万人を担う地域の基幹病院です。1日の外来受診者数は約3,000名、年間の救急外来受診者数は6万人を超え、常勤医師250名のほとんどが病院敷地内に居住し地域医療を担っています。

　当院は2008年2月に同地域のがん診療連携拠点病院に指定され、診断から治療、緩和ケアに至るまで総合病院の特色を活かした包括的ながん診療を展開しています。

　外来化学療法についてはこれまで各科ごとに実施する形をとっていましたが、2011年5月新本館設立を機に全科を集約した化学療法センターが設立されました。設立に当たっては利用する診療全科の責任者と薬剤師、看護師、医療情報室担当者により化学療法室運営会議が開かれ、1年かけて運用方法を検討してきました。現在、外来化学療法を行う外科、産婦人科、泌尿器科、皮膚科、消化器内科、呼吸器内科、アレルギー膠原病科、歯科口腔外科が化学療法センターを利用しています。アレルギー膠原病科と消化器内科ではインフリキシマブ等の生物学的製剤で治療する関節リウマチやクローン病などがん以外の患者さんにもご利用いただいています。

　化学療法センターの病床数は40床 (リクライニング8、ベッド32) あり、壁面はガラス張りで広々としたスペース活用により、明るく開放感があります (写真1)。スタッフはがん化学療法看護認定看護師1名を含む看護師7名と医師1名が常駐しています。専任医師は置かず、各科の医師が時間交代で担当する形をとっています。なお、化学療法室に隣接した調剤室で抗がん薬の調製を行っており、処方内容を確認する薬剤師2名、調製する薬剤師2名の4名が担当しています。まだ、開設して３ヵ月しか経ちませんが化学療法の件数は当初予想した月250件をはるかに上回り、5月は539件、6月は621件、7月は 576件でした。主要疾患ごとの化学療法件数は乳がん156件、大腸がん95件、肺がん93件、慢性関節リウマチの生物学的製剤50件、胃がん42件、悪性リンパ腫38件、膵胆道がん29件、卵巣・子宮がん21件、前立腺がん14件となっています (5月集計分、ゾレドロン酸除く)。5月初旬は開設当初の不慣れさと連休明けの影響が重なり、患者さんの到着から化学療法開始までの待ち時間が平均1時間となってしまうこともありましたが、現在では15分を切るようになってきました。

　当院の化学療法はすべて化学療法レジメン・プロトコール登録委員会の承認を得たうえで電子カルテに登録されています。電子カルテでは、抗がん薬の投薬量、投薬期間が自動的に計算され、投薬ミス、休薬期間のミスなどがないように設計されています。

　委員会では治療内容の妥当性を検討する以外にも制吐薬適正使用ガイドラインに合わせて支持療法を統一し、複数の診療科で使用されているパクリタキセルやゲムシタビン塩酸塩などのレジメンについては、輸液内容、投与速度を統一するなど、治療の標準化に努めています。